【みんなで防災:第2回】災害発生時への備え-災害はいつ起こるかわからない

地震や台風等による災害が発生した場合、大切な家族の一員であるペットたちも飼い主同様に被災してしまいます。第1回でもお伝えしたように、東日本大震災では、津波や原発事故で住民は緊急避難を余儀なくされました。その結果、大切なペットと離れ離れになった事例が多く発生しました。また、熊本地震では、ペットと同行避難したものの、鳴き声やニオイ、動物アレルギーなどの問題からペット不可の避難所が多く、車中泊を余儀なくされる事例も発生しています。

ペットの安全を守ることができるのは飼い主しかいません。ペットとともに災害時の困難な状況を乗り切るためには、飼い主自身が日ごろから災害への備えをしておくことが大切です。今回は、心構えを含めた備えについてのお話です。

飼い主に必要な心構えとは?

災害はいつ起こるか誰にもわかりません。災害が発生しても落ち着いた行動がとれるように、災害時に必要な心構えを日頃ごろから持っておくことが大切です。災害発生時に求められる基本的な対応として示されているのは、自分の命は自分で守るという「自助」、地域の人と人とが助け合う「共助」、国や自治体などによる公的支援活動である「公助」があります。

しかし、災害発生当初は自治体も混乱していて、「公助」はすぐには期待できません。また、公的支援活動は人が最優先であるため、動物救護活動は後回しになります。求められることはまず飼い主による「自助」です。大切なペットを守るためには、まず飼い主が無事であることが条件になります。飼い主の安全とペットの安全の両方を確保できるように、十分な対策を講じておく必要があるのです。そして、災害発生時から最低でも3日間は、自力で対応するしかないと覚悟をしておいたほうがよいでしょう。

過去の災害では、「ペット可の避難先が見つからない」「交通の混乱で移動手段がない」「フード(特に療養食)が確保できない」「ライフライン(水、電源等)が確保できない」など、ペットを連れての避難にさまざまな問題が生じています。飼い主は、これらの問題を想定したうえでの対策が必要となります。日ごろから「自分のペットは自分が守る」という強い意志を持つことが大切です。

災害発生時への備え

災害にはさまざまなことを想定した対策が必要となります。ペットの種類、数、災害の種類(地震・台風・火山噴火・豪雨・大規模火災など)や規模、過去の被災状況等に応じた準備をすることが大切です。

【ソフト面】
◇安全確保(避難方法・避難経路の確保・避難先の確保)
◇家族や親類への連絡方法
◇物品の備蓄(水・フード・トイレ用品・ケージ・首輪・リード・医薬品など)
 ※持ち出し品には優先順位を付ける

【ハード面】
◇室内の家具やケージ類の配置点検(家具や飼育ケージの固定・転倒防止・落下防止)
◇家自体の安全点検(窓ガラス・扉などの破損の危険性を確認)
◇家の周辺の安全点検(ブロック塀や屋根瓦などの破損や倒壊の危険性を確認)


また、被害をできるだけ少なくするための準備も欠かせません。家族間で防災会議を開き、非常持出品を運ぶ人、ガス栓やブレーカー等の措置をどうするかなど、家族の役割を確認しておくことも重要です。また、地域とのコミュニケーション、ご近所さんとの連携、協力体制を構築するために、日ごろから避難訓練等に参加しておくことも大切です。

冷静になることも大切

災害発生時にペットの命を守るためには、まずは飼い主が冷静になることが大切です。災害発生時には極度の緊張から頭のなかが真っ白になり、その結果として、自らを窮地に追い込んでしまうこともあります。そのようなパニック状態に陥り、間違った判断をしないためにも、平常時から冷静になる訓練をしておくことも必要となります。

■極度の緊張から脱却するために「ボックス呼吸」をする
 アメリカ海軍の特殊部隊ネイビーシールズは、強烈なプレッシャーやストレスにさらされた状況下でも警戒 心・集中力・冷静さを保つために、「ボックス呼吸」と呼ばれる呼吸法を訓練に取り入れているそうです。やり方は以下のとおりです。

①4秒かけて息を吸い込む
②肺のなかに空気が入った状態で息を止めて4秒間キープ
③4秒かけて息を吐きだす
④肺を空にした状態で息を止め4秒間キープ


■心を落ち着かせるために胸をゆっくり叩きポジティブな言葉を唱える
 極度の緊張など自律神経を落ち着かせるのに役立つ方法として、「一定のリズムで胸を叩く」というテクニックがあります。人の身体は複数のリズムを同時に認識できないため、ゆっくりとしたリズムで胸を叩いているとそのリズムにつられて心が落ち着いてくるそうです。
 また、緊張をほぐすには、ポジティブな言葉を自分にかけるのが有効なのです。人には自分の言動と行動の矛盾を解消しようとする「一貫性の原理」という心理傾向があり、前向きな言葉を唱えると矛盾が生じないように心も前向きになれるそうです。ですから、災害発生時には「絶対に助かる」「絶対に大丈夫」と口にしながら、胸を一定のリズムで叩くとよいでしょう。

上記の一例のように、さまざまな冷静になる方法がありますので、災害に備えて自分に合った方法を普段から身に付けておくと、いざというときに役立つでしょう。

まとめ

災害発生時には、まずは飼い主自身と家族の身の安全確保が最優先となります。人の安全確保ができなければ、ペットの安全確保はできません。いざというときに優先順位を冷静に判断し、落ち着いた行動がとれるように、日ごろから災害時に必要な心構えを持っておくことが大切です。

そして、求められることは、まず飼い主による「自助」です。「自分のペットは自分が守る」という強い意志のもとに、さまざまな災害対策を講じておきましょう。

第3回は「住まいや飼育場所の防災対策」をテーマに話を進めます。