オーナー必見!「ブルーアカデミー」で学んだペットの水分摂取と健康の関係
ブルーバッファローが動物病院関係者向けのセミナー「ブルーアカデミー」を開催しました。ペトハピも参加したので、その様子を報告します。
ブルーバッファローは、アメリカのペット専門店シェアNo.1のプレミアムフードメーカーです。日本でも知名度が高まってきて、フードにこだわるブリーダーたちも使い始めている信頼性の高いフードです。
そんな、ブルーバッファローが開催したセミナーは、療法食の新製品発売に合わせて、ペットの水分摂取と健康、糖尿病治療の観点から見る食事管理、最新のインスリン使用方法などの講演で構成されていました。対象は獣医など動物病院関係者でしたが、私たち飼い主が知っておくべきことも多かったので、さっそく報告したいと思います。
ウエットフードのメリットとは?
まずは、米国獣医学博士で、ブルーバッファロー本社の学術担当部長Leighann Daristotle(リーアン・ダリストートゥル)氏による講演がありました。「水分パーセントが違うだけじゃない ウエットフード徹底解明」と題し、ウエットフードの真実、健康な犬・猫への一般的な利点、病期の犬・猫への利点についての説明がありました。
ウエットフードの歴史は古く1922年には米国で犬用が発売されました。典型的な原材料は、チルド・冷凍肉、水分(スープ、肉汁など)、とろみ成分(ゲル化)、穀物や野菜、ビタミン・ミネラル類です。栄養素は、水分含量が約60~90%と高く、肉成分も約30~50%と高タンパク、脂肪含量も約20%と高めになっています。その反面、炭水化物の含有率は低めという構成比率です。
では、ウエットフードの一般的な利点はどういったものでしょうか。ダリストートゥル氏によると、嗜好性・消化率が高いこと、賞味期限が長いこと、手ごろなサイズ感だと言います。猫は真正肉食動物なので、動物性タンパク質のなかにのみ含まれる栄養素を必要とします。また、タンパク質と脂肪をエネルギー源とし、低炭水化物での代謝に適応しています。ですので、ウエットフードも自然界に近い高タンパク、高水分、低炭水化物のバランスになっています。ここで注意したいのは、高水分であるということです。これは米国でも猫はつねに脱水状態にあるとされているからだと言います。
病気の犬や猫にウエットフードは有効?
次に、病期の犬・猫に対する利点です。尿路疾患、体重管理、消化器疾患、真正糖尿病、慢性腎臓病、重症医療など、多様な疾患の療法食に適していると言えます。たとえば、猫下部尿路疾患(FLUTD)の原因と考えられる猫特発性膀胱炎(FIC)、尿石、尿道栓子。これらは尿に含まれるストルバイト尿石、シュウ酸カルシウムの飽和度に関係します。それぞれの物質の比率が上がれば、不飽和から、過飽和、超過飽和状態となり発症の原因となります。ウエットフードによって不飽和状態を維持し、過飽和を回避できるとしています。それは、水分摂取を即すこと、尿phの管理がしやすいということに起因しているからです。
慢性腎臓病(CKD)に対してはどうでしょうか。これも症状を緩やかにするためには、高水分で水和を維持し、高窒素血症と尿毒症を回避するための制限した高品質のタンパク質を含むこと、リンの制限、オメガ3脂肪酸・抗酸化成分の強化、筋肉の減少を抑制するL-カルニチンの強化、そして高消化・高嗜好性が求められます。これらもウエットフードのほうが管理しやすいというメリットがあります。
肥満に対してもウエットフードは有効?
過体重=肥満においてはどうでしょう。原因はエネルギーの過剰摂取、エネルギーの消費量減少にあります。その因子として、ペットにおいては年齢、避妊去勢、健康上の問題、種/遺伝などがあげられます。そして、飼い主においては、給与管理、運動量があげられます。こういった要因に対してもウエットフードは有効です。缶詰・パウチであれば物理的な給与量を管理しやすいということもありますし、必要なエネルギーバランス・量も管理しやすいといえます。
消化器疾患においても同様です。ウエットフードであれば、高消化率・高水分量であり、脂質、プレバイオティクスなどの含有量を調整できるからです。
肥満には注意が必要です。日本獣医生命科学大学の森 昭博先生によると、犬の場合は肥満がすぐ糖尿病にはつながりませんが、猫の場合は肥満が糖尿病につながります。糖尿病の治療はインスリンと食事療法があげられます。インスリンの種類と効果の説明は省きますが、森先生によると療法食にも配慮が必要だと言います。
糖尿病の食事にはやはりウエットフードが効果的ということです。それは人間と一緒で、血糖値の変動を最小化することが重要で、そのためには穀物や米といった炭水化物の含有量を減らすことが大切なのです。ウエットフードであれば、タンパク質や食物繊維の含有量を増やし、炭水化物の含有量を減らす設計がしやすく、高い水分含有は水和を支援し、カサが大きいのでエネルギーじたいの摂取量を抑制することで、肥満対策にもなるとしています。
ただし、ここで注意が必要なのは、インスリンの投与にはちゃんと食事をしてもらうことが重要だということです。なので、毎日同じ量を食べ続けられるようなフードを選ぶ必要があります。そういった意味でも、嗜好性の高いウエットタイプの療法食は今後も活用が増えるだろうと予測していました。
どれくらいの水を与えたらよいのか
最後に、まとめとして獣医師でもあるブルーバッファロー・ジャパンの坂根 弘氏から「健康と水の関係」についての説明がありました。まず皆さんもご存じの6大栄養素は、タンパク質、脂肪、炭水化物(糖質、繊維質)、ビタミン、ミネラル、そしてもっとも重要な栄養素でもある水です。動物の身体の水分構成比は40~80%となっています。成犬では体重の56%が水分で、数%の水分喪失で健康障害をひきおこし、15~20%が失われると致死的と言われています。
水分の必要摂取量は、1日に必要なエネルギー量(DER)の絶対値とほぼ等しいということです。犬の場合は、安静時のエネルギー要求量(RER)×1.6、猫の場合はPER×1.2で求められます。ちなみに、安静時のエネルギー要求量(RER)は、理想体重(BW)の0.75乗×70で求められます。例として体重3kgの犬の場合、必要なDER(kcal)は、1.6×70×3kg0.75=約255.4kcalとなります。よって水分量は約225.4mlとなるわけです。なお、水分の中には直接飲む水とフードに含まれる水分以外に、代謝水というものが存在します。代謝水とは、タンパク質、脂肪、炭水化物を摂取して燃焼させてできる水のことです。これは、一般的なフードでは100kcalあたり13mlとされ、全水分要求量の5~10%になります。体重3kgの犬の場合、必要なエネルギー量は255kcalですので、約33.15mlが代謝水となります。そう考えると、直接口から入れる必要水分量は、255ml-33mlで約222mlとなります。
では、フードの中にはどれくらいの水分が含まれているのでしょうか。ドライフードは約8%、ウエットフードの場合は75~80%が含まれています。ブルーバッファローの療法食GIを例にして、255kcalを満たすには、ドライフードでは72g、ウエットフードでは229gが必要となります。そして得られる水分量は、ドライフードで6ml、ウエットフードで172mlが摂取できることになります。以上のことから、ドライフードを与える場合には水が約216ml必要となり、ウエットフードでは約50mlが必要ということになります。
このように、食事を確認することで必要な水分量も変わるということを知ってほしいと思います。もちろん、飲水量は、フードの種類以外にも、フードの乾物重量や塩分含有量、ライフステージ、体表面積、ストレス、健康状態、薬の摂取、生活環境(温度や湿度)によって変わります。たとえば、授乳期の母犬・猫は母乳の分泌に水分確保は必須となるので水分摂取量は増えます。逆に高齢期の犬・猫は渇感が鈍感になるので水分摂取量は減ります。また、今年のような高温多湿の環境下では、体温調節のためのパンティングで多くの水分を喪失するので、その分の水分確保は重要となります。
猫のオーナーは水分摂取に注意しよう
皆さんもご存じのとおり、猫は元々乾燥地帯に生息していたリビアヤマネコが祖先なので、現在のイエネコでも少ない水分摂取でも尿を濃縮して水分保持する能力を持っています。体重の4%程度の脱水でも水分を摂取しないというデータもあります。その結果、尿がどんどん濃くなって、下部尿路疾患(FLUTD)のリスクを高めてしまうという宿命を負っています。猫は、野生時には獲物を捕獲して、その獲物に含まれている水分を摂取することにより、かなりの部分の水分を賄っていました。ウエットフードは獲物と同じような水分の構成割合となっているので、それだけで利尿効果があるという利点があります。高齢になれば渇感が鈍感になり摂取量が減ります。そして腎機能も低下するので水分を喪失する割合も増えてきます。それが慢性的になってくると代謝機能を阻害し、病気を悪化させてしまう危険もあるので、猫の水分摂取には注意が必要となります。
このように、ウエットフードの利点を説明してきましたが、ウエットフードであれば、何でもよいかというとそうでもありません。必ず「総合栄養食」を選びましょう。「一般食」では栄養のバランスが適切ではなく、リン・塩分濃度が高いものもありますので、よく確認するようにしましょう。
今回のセミナーは、水分摂取の重要性、ウエットフードの有効性をいろいろな角度から理解できた内容でした。新商品となるウエットタイプの療法食は、獣医師や動物栄養学者によって開発された特定の疾患に対する栄養学的アプローチをサポートする特別療法食です。通常のフード同様に、自然由来の原材料を使い、高品質のタンパク質を含む生肉を主原料に、副産物ミール・コーン・小麦・大豆、合成の酸化防止剤・着色料・香料も不使用です。一般販売ではなく動物病院での診察と獣医の処方で購入できるものなので、気になった方は、行きつけの動物病院で先生に聞いてみるとよいでしょう。
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