無理しない愛犬・愛猫介護のススメ 第5回「犬・猫の食事の介護」

シニア期の愛犬・愛猫にとっては、食べることが生きる力の源になります。口から食べることが健康維持には大切です。しかし、老化による筋力の低下などで噛む力や飲み込む力が衰え、その影響で食欲が落ちることがあります。思うように食べてくれないと、飼い主はとても心配になります。じつは「食べない」という悩みは、飼い主があきらめずに根気よく工夫を続けることで食欲回復に繋がることが多いのです。愛犬・愛猫が進んで食べたくなるように、食事や環境を見直してみましょう。

食べたくなる工夫とコツは?

愛犬・愛猫の食欲が落ちたときには、好みそうなフードをいくつか用意します。まず、鼻先にフードを持っていき、愛犬・愛猫がニオイを嗅ぐ仕草から興味のあるフードを見つけるようにします。臭覚が衰えている場合には、口のなかにフードを入れてみます。そうすることで、フードを認識して食べ始めることもあります。仕草を観察するとともに、食べるときの姿勢にも工夫を凝らしてみるとよいでしょう。

■香り・形状

犬や猫は臭覚で食欲が刺激されます。フードを温めたり、つぶしたりして香りが引き立つようにするだけでも食欲が回復する可能性があります。ドライフードはお湯でふやかすとよいでしょう。また、トッピングなどで嗜好性を上げて食べるきっかけを作ることもおすすめです。

■温度

水やフードは、愛犬・愛猫が好む温度で与えるようにします。喉を刺激しないように冷たい水は避け、常温またはぬるま湯がよいでしょう。

■食器の高さ

首の筋力が衰えると飲み込む力が弱くなり、下を向いて食べることが辛くなります。食器を床に置いたままでは食べにくいだけでなく、足腰にも負担がかかります。楽な高さに食器を置いて、食べる意欲を高めましょう。

■食器の角度

食べやすくするためには、少し食器を斜めにして角度をつけます。楽に食べられると食欲が増します。斜めにすると食器が滑りやすくなるので、滑らないような工夫も必要です。市販されている角度のある食器もあります。

自力で食べられない場合は?

愛犬・愛猫が自力で頭を上げられない場合は、飼い主の太ももの上に頭を乗せて、上体を起こして食べさせてあげましょう。寝たまま与えるとフードが気管に入り、窒息や肺炎になる可能性があります。必ず頭を高くして与えます。もしフセができる場合は、食べやすい位置に食器を置いてあげましょう。

フードを目の前に出しても食べようとしない場合には、直接に手で口のなかに入れて与えます。また、固形物が食べられない場合は、流動食にしたものをシリンジ(注射器型注入器)で与える方法もあります。流動食の水分量は愛犬・愛猫の状態に合わせて調節するとよいでしょう。

【食事介護のポイント】
・食道が胃よりも低くならないように、頭を起こした姿勢で食べさせる
・飲み込んだかどうか喉の動きを確認しながら食事を見守る
・誤嚥や食道炎、胃捻転などを避けるために、食後10~20分は上体を起こしたまま見守る

口から食事がとれない場合は?

もし、愛犬・愛猫が口から食事をとることが出来ない場合は、衰弱を避けるために胃や鼻にチューブを通して、食事を与える方法があります。このチューブは胃ろうチューブ、あるいは経鼻チューブと呼ばれるもので、動物病院でしっかりと取り付けてもらいます。

基本的にチューブは付けたままですが、週1回程度のチューブの交換が必要です。その都度、チューブを通した部位に異常がないか、チューブの位置がずれていないかなど状態を確認してもらいましょう。食事内容は愛犬・愛猫の状態に合わせて、動物病院で指示してもらいます。基本的にはまずは水から与え、咳込んだりしなければ流動食を少しずつ与えていきます。

食後の口周りを清潔に保ちましょう!

上手に食べられないことも多く、食後は口周りが汚れていることが多々あります。愛犬・愛猫が自分で舐めたりしますが、そのままでは不衛生で被毛や皮膚にも良くありません。安全なノンアルコール&無香料タイプのウエットティッシュなどで拭いて、清潔を保つようにしましょう。

まとめ

愛犬・愛猫の食が細くなってもあきらめないことが大切です。ちょっとした工夫で食欲が戻る場合も多々あるからです。食べない日があっても、その日の量で考えるのではなく、3日程度の合計の量で考え、あきらめずに根気よく対応するようにしましょう。

第6回は「歩行の介護」についてお伝えする予定です。