無理しない愛犬・愛猫介護のススメ 第3回「シニア期からの食事」【猫編】

猫も高齢になると食欲の減退、消化機能や新陳代謝の低下などがおこります。外見が若く見える個体もいますが、内臓機能が衰えている場合もあります。また、新陳代謝の衰えにより、これまでのキャットフードではカロリーが多すぎて肥満におちいることもあります。愛猫の便が柔らかくなった、おならが多くなったなどの体調の変化が出てきたら、老化に配慮したシニア用フードへの切り替えを検討する必要があります。

第3回は「シニア期からの食事」についてお話します。

シニア用フードへの切り替えはいつごろ?

猫の衰えは犬に比べて緩やかですが、7~10歳を目安に考えるとよいでしょう。猫の場合は変化を好まない性格の子もいるので、新しいフードの切り替えは少量ずつ混ぜて移行します。切り替えの時期を飼い主が判断できない場合には、かかりつけの動物病院での相談をオススメします。

シニア期に必要な栄養素は?

シニア期の食事は低カロリーで、栄養価の高いものが理想です。猫は犬とは違う、生存に必要な栄養素もあるので、愛猫の健康のために、必要な栄養素を飼い主が知っておくことが大切です。

①タンパク質

タンパク質は、体に必要なアミノ酸の供給や免疫機能を保つために必須な栄養素です。特に動物性タンパク質が豊富に含まれた肉は、老猫が効率よく消化吸収するのに優れていて、筋肉をつくるために必要なアミノ酸も豊富に含まれています。年齢を重ねるにつれて少なくなる筋肉を新たにつくるためにも、良質なタンパク質を摂取することは大切といえます。本来、猫は肉食で、犬よりも良質なタンパク質の摂取が必要です。また、生存に欠かせない栄養素であるアラキドン酸とタウリンは動物性食材に含まれています。猫の場合は、手づくり食ではなく、それらが含まれたシニア用フードを利用したほうが安心です。

②カルシウム

加齢とともに運動量が低下すると、骨もだんだんと弱くなります。骨の正常な機能を保たせるためにもカルシウムは大切です。

③ビタミン

シニア期に入ると食事量が減少することが多いため、健康維持のために必要なビタミンB群やビタミンEなどを多く含む食事を心がけましょう。フードのほか、最近ではサプリメントで摂取する方法もあります。

④食物繊維

運動量が減ると、便秘体質になる子もいます。少量のヨーグルトなど食物繊維が豊富な食事を心がけましょう。ただし、食物繊維を多く含む食材は固いものが多いため、噛む力が弱っている老猫には飼い主が食べやすいようにひと手間かけてあげる必要があります。ペーストやスープ状にして食べやすくしてあげましょう。

【水分について】

老猫になると健康状態により、脱水症状におちいりやすくなります。こまめな水分摂取を心がけましょう。

トッピングやサプリメントで不足気味の栄養素を補う

最近のシニア用キャットフードは、老猫にありがちなトラブルに配慮したものや、衰えやすい部位のサポート機能を備えたものなどかなり充実しています。栄養バランスがよく、カロリーの調節がしやすいので、運動量や新陳代謝の低下が見られる老猫の肥満予防にもなります。「総合栄養食」と表記されたシニア用キャットフードの利用をオススメします。手づくり食は栄養バランスやカロリー調整が難しく、飼い主がしっかり知識を持たないと難しいといえます。特に猫は生存に必要な栄養素もあるので、シニア用キャットフードを利用するほうが安心です。また、サプリメントを利用したり、必要な栄養素が含まれる食材をトッピングするなどして、効率よく栄養摂取できるように工夫しましょう。

猫の食事のココに注意

①肥満

老猫に栄養価の高い食事を与えることは必要ですが、食べ過ぎると肥満になってしまいます。肥満は万病のもとですし、身体の重みを感じると老猫は動かなくなりますので、食事量に注意しましょう。ときには老化により満腹感がなく際限なく食べてしまう子もいるので観察することが大切です。

②塩分と糖分を控える

老猫は腎不全の発症の確率が高くなります。発症まで至らなくても腎臓に問題を抱える可能性は高く、食事には注意が必要です。塩分や糖分は心臓や腎臓に負担をかけるので、人間が食べるものは絶対にあげないようにしましょう。

歯が弱っている場合には?

シニア期は歯が弱くなり、固いものが噛めなくなります。また、口内炎などで固いものが食べられない場合もあります。ドライのシニア用フードを与えるときには、フードプロセッサーで粒を細かく砕いたり、お湯でふやかして柔らかくして与えるとよいでしょう。ただし、熱湯はフードの栄養素を破壊してしまうので使用を避けましょう。そのほか、ドライフードにウェットフードを混ぜたり、ペースト状にする方法もあります。

療養食はどんなときに必要?

バランスのよい食事を与えているのに痩せる場合には、消化機能の低下や病気が疑われます。嘔吐や下痢にも注意が必要です。食に関する異変を感じたときには、早めに動物病院を受診しましょう。万が一、消化機能の低下や口内炎、関節炎、腎臓病、心臓病などを患っていた場合には、特別に調整された食事療養食を与えてみるのもひとつの方法です。嗜好性が高くつくられているので、それを与えることにより症状が軽くなることもあります。それらは臨床的に証明されているので、試してみる価値があるでしょう。

まとめ

老猫の健康を維持するために、しっかりと食事をとることはとても重要です。シニア期に入った愛猫の食事を考えることは、飼い主としての大きな役目です。愛猫の年齢や体調にあった栄養が十分に摂取できるよう、適切な食事を心がけてあげましょう。元気なシニア期を過ごせるように。

第4回は「犬・猫の介護の心得」についてお伝えする予定です。