無理しない愛犬・愛猫介護のススメ 第2回「シニア期からの運動と飼育環境」【犬編】

若い頃はいろいろなものに好奇心旺盛であった愛犬も、老化と共に興味を示さなくなっていきます。体力の衰えから、散歩に行きたがらなくなったり、動作が鈍くなったりします。犬の場合は認知症になるリスクが高いので、脳を活性化させる遊びを取り入れることが大切です。

また、犬も人間同様い老いとともに筋肉が衰えてきます。いままでと同じ住環境では生活に支障がでてくる場合があります。その状況に合わせて、ストレスのない長生きができるような環境を整えてあげる必要があります。

前回は「無理しない介護」についてご紹介しましたが、 第2回は「シニア期からの運動と飼育環境」についてお話します。

脳を活性化させる遊びとは

①散歩のコース・時間を変える

散歩に限らず、毎日の決まりきった日常生活は刺激が少なく、認知症のリスクを高める要因になります。新しい環境に接することはそれが刺激となり、脳を活性化させる効果があります。ときどき、散歩のコースや時間を変えることが大切です。また、足腰が弱っている、歩けないような場合は、カートなどに乗せて散歩を行うとよいでしょう。ただし、大きな変化は心身の負担になることがありますので、飼い主が臨機応変に愛犬の様子を見ながら取り入れていきましょう。

②知育玩具を活用する

頭の体操ができる犬用の知育玩具がたくさん発売されています。フードやおやつを内部に隠して見つけるものや転がして取り出すもの、難易度が高いものなど、さまざまです。老犬は新しいことを覚えるのに時間がかかるので、難易度が低いものから遊び方を覚えてもらうとよいでしょう。寝たきりの場合にはフードを手に持って目や顔を動かしてもらいます。また、目が見えないときにはニオイの強いもので反応してもらうようにします。動きがゆっくりになっても刺激は必要です。大好きな飼い主との遊びは、愛犬にとってとても刺激的で楽しいものです。積極的に取り入れていきましょう。

③マッサージを有効的に使う

飼い主とのコミュニケーションは、大きな脳の活性化に繋がります。マッサージは運動前のウォーミングアップとしても有効です。ゆっくりと優しくマッサージをしてあげましょう。首→肩→背中→前足→後足→顔の順番で行います。慣れるまでは飼い主が声をかけ、安心してできるようにします。また、足腰の筋力の衰えを防ぐためには、飼い主が足先を持って行う屈伸運動が有効です。無理のない回数で四肢をバランスよく行います。

室内での遊びの注意点

外で運動させることが難しい場合は、室内用のアジリティーを活用するとよいでしょう。アジリティーは筋肉の衰えを防いだり、脳を刺激するのに適した遊びです。初めてのときには「これは何?」という状態になることが多いので、おやつで誘導しながら少しずつ練習します。ハードルをジャンプしたり、トンネルをくぐったりして遊ばせます。しかし、老犬は運動量が減り、新しいことを避ける傾向があります。その場合は無理をせず、いままでの運動に留めておきましょう。

散歩時の注意点

①気温や天候に配慮する

老化が進むにつれて、体温調節の機能も低下していきます。雨、雪、風などが酷い日、寒暖の差が激しい日などは、散歩を避けるようにします。真夏の暑い日は日中を避けて、涼しい早朝や夜に連れて行きます。また、真冬の寒い日は朝夕を避けて、気温が上がる日中に連れて行き、防寒対策に洋服を着せたりするとよいでしょう。このように、散歩に連れていくには、若いころ以上に季節や天候に気を使う必要があります。散歩は体力維持やリフレッシュのためには、とても重要な要素です。飼い主はさまざまな配慮をしながら、愛犬に刺激を与えてあげましょう。

②持ち物に配慮する

若いころに比べて腎臓の機能や新陳代謝が低下しているので、喉が渇きやすくなります。多めの飲み水を持って散歩に出かけるようにしましょう。万が一、途中で具合が悪くなった場合に自宅や動物病院などに連絡ができるように、携帯電話を忘れずに持つことも大切です。病気などを抱えている場合は、病気に合わせた薬などを常備しておくと安心できるでしょう。

③コースや時間帯に配慮する

筋力の低下など運動機能が徐々に衰えてきたら、散歩コースの見直しが必要です。階段や急な坂道などは避け、ゆっくりと歩けるコースを選ぶようにします。以前に比べて散歩に行きたがらなくなったり、途中で疲れた様子を見せるようなら、歩く時間を短く設定します。飼い主は愛犬の体調やペースに合わせて、それらを配慮した散歩コースを設定します。また、子どもが通学する時間帯は賑やかです。通勤時間も人が多く歩きにくいこともあります。吠えるような犬と出会う時間帯は愛犬にとって大きなストレスになっているかもしれません。その場合は、時間帯を少しずらしてあげることも大切です。万が一の場合を考えて、かかりつけの動物病院の前を通るコースを選んでも安心できるでしょう。

散歩時の補助の仕方

①自力で立てない場合

自力で立てない場合でも、補助をしたら立っていられるなら、犬の体をゆっくり抱き上げて立たせます。抱き上げるときには、必ず声をかけながら行います。立たせることができたら、歩かせる前にウォーミングアップをして筋肉をほぐしてあげましょう。まずは、後ろ足を持ち、右→左→右→左と交互に足踏みをさせます。足先が外側に向かないように、まっすぐに足踏みをさせましょう。

このようにすれば歩ける場合には、短時間でもよいので外の世界の刺激、太陽の光や新鮮な空気、風の感触などを感じさせてあげましょう。どうしても歩けない場合は、ペット用のカートを利用します。歩けなくても外に出て気分転換をすることは、とても大切なことです。ストレス発散にもなりますので、積極的に出かけるようにしましょう。
※支えれば歩ける場合には、ウォーキングベルトを使用して補助するとよいでしょう。腰の部分に装着して、飼い主が持ち上げて補助するので、愛犬はラクに後ろ足を動かすことができます。

②立たせてあげれば自力で歩ける場合

上記の①のように立たせてあげれば、自力で歩ける場合は犬のペースで散歩をします。小さな段差でもつまずいたり、転んだりすることがありますので、平坦な散歩コースを選び、飼い主は愛犬の動きをしっかりと見守りましょう。また、排泄の際にしゃがんでから立ち上がれなくなる場合があります。その際は腰を支えながら持ち上げてあげましょう。
※足を引きずって歩いている場合には、擦り傷ができてしまいます。それを防ぐためには靴や靴下をはかせてあげる必要があります。最近では、簡単に履かせることができる用具も付いた、風船のような靴下が市販されています。カラーやサイズも豊富です。それを利用するとよいでしょう。

飼育環境を快適に整える

①リビングを生活スペースにする

老犬は体力や感覚器が衰えてきて、不安を感じやすくなる傾向があります。安心感を与えるために、人の出入りが多いリビングにケージを置き、生活スペースにしましょう。また、老犬は感覚器の衰えでものにぶつかりやすくなります。角はクッション材で覆ったりしてカバーするとよいでしょう。また、家具などの隅に入り込んでしまうと出られなくなることもあります。隙間ができないように家具の配置を変更しましょう。このように生活スペースを変える場合、配置を覚えておけるように、愛犬の視力が衰えないうちにすることが大切です。

②階段・段差をなくす

筋力が低下した老犬は、少しの段差でもつまずきやすくなります。できるだけ段差をなくすようにスロープを設置したり、階段を登れないようにフェンスを設けたりして、ケガ防止の対策をしましょう。

③滑りにくく、掃除がしやすい床にする

筋力が低下した老犬の四肢はとても弱くなります。滑りやすい床ではケガのリスクが高まります。フローリングであればカーペットを敷いたり、滑り止めワックスを塗るなどして、滑らないようにしましょう。また、老犬は粗相をしてしまうこともありますので、防水性が高く、ふき取り可能なタイルカーペットなどを敷くのもオススメです。

④トイレは大きいサイズにする

老犬は排泄機能の低下により、頻尿になり、粗相が多くなることがあります。それを解消するためにトイレを大きくすることをオススメします。外でトイレをする習慣の愛犬は、1日に数回、外で排泄させるようにします。

⑤温度・湿度で快適な環境を整える

部屋の温度は25度前後、湿度は50%前後が快適といわれています。高温多湿は犬にとっても心身の負担になります。新陳代謝も低下している老犬には体力的にも負担になります。若いころ以上に気を付ける必要があります。

まとめ

犬の場合は番犬として外で生活をしていることがあります。しかし、年を取って体力が衰えてくると、外での生活は過酷となり、健康上の問題が生じるリスクが高まります。愛犬がシニア期に入ったら、家のなかで生活することも考える必要があるでしょう。長生きをしてもらうためにどうすればよいかを考えてみましょう。

第3回は「シニア期からの食事」についてお伝えする予定です。

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