猫との暮らしで知っておきたいこと Vol.75

【猫飼いTIPS】猫の肥大型心筋症(HCM)ってどんな病気なの?

[2022/03/21 6:01 am | 編集部]

猫の心臓の病気で多く発生しているのは心筋症で、心機能障害を伴う心筋疾患です。心筋症には複数のタイプがありますが、猫では心臓の筋肉が分厚くなる「肥大型心筋症(HCM)」がほとんどです。有病率約15%と非常に高く、症状がなく健康診断で偶然見つかることもあれば、呼吸困難で病院に運ばれて見つかることもあります。今回は猫の「肥大型心筋症(HCM)」についてのお話です。

肥大型心筋症とは?

心臓は心筋によって拡張と収縮を繰り返し、全身の血液を取り込み送り出すポンプのような働きをしています。しかし、肥大型心筋症になってしまうと、心筋が異常に肥大してしまい心室が狭くなり、柔軟性が低下するため心臓が今までのようにうまく膨らまなくなります。その結果、十分な血液を全身に送れなくなってしまいます。

主に左心室の心筋に病変が現れます。しかし、肥大型心筋症のなかには、心室中隔壁(右心室と左心室を区切る壁)が分厚くなったり、僧帽弁の動きの異常から左心室出口の閉塞が起こる閉塞性肥大型心筋症というものも見られます。

肥大型心筋症は、突然死を招くこともある怖い病気です。発症年齢も生後3カ月から17歳ととても幅が広いのが特徴です。初期症状がほとんどないので、重度になって気づくことがほとんどです。しかし、早期発見には専門的な診療機器と獣医師の高いスキルが必要で、日常的な早期発見が難しい病気といえます。また、1次医療でのレントゲンや心エコーでの確定診断は難しく、2次医療の専門的な病院に委ねられることが多いのが現状です。

肥大型心筋症の原因は?

猫の肥大型心筋症の原因には遺伝子の変異(遺伝的なもの)が疑われていますが、それが証明できている症例はごくわずかで、現在のところ原因は不明とされています。ある2次医療の専門医においても、以前は遺伝的疾患を疑い発症した猫の遺伝子検査を行っていたそうですが、その結果からの考察では「遺伝的なものとは断定できない」「ほかに原因があるのではないか」と話しています。まだまだ、未解明な部分が多い疾患です。

発生する頻度が高いとされる純血種は、メインクーンやラグドール、ブリティッシュショートヘア、ノルウェージャンフォレストキャット、アメリカンショートヘア、スコティッシュフォールド、ペルシャなどですが、MIXや雑種においても発症が多く見られています。

いくつかの純血種においては、遺伝子検査で肥大型心筋症の遺伝子の有無を調べることができます。発症する可能性のある遺伝子の有無を知っておくことは、早期発見の手掛かりとしてとても有効です。また、健全なブリーダーの場合は親猫の遺伝子検査を行っていますので、子猫を迎える際にその結果を確認することをオススメします。

肥大型心筋症の症状は?

初期にはほとんど症状は認められません。病気の進行に伴って、動きが鈍くなる、疲れやすくなるなどの症状が見られますが、この時点では飼い主が気づかないことがほとんどです。重度になると胸水や肺水腫などで呼吸が荒くなったり、動脈血栓塞栓症で後ろ足が動かなくなるなどの症状が見られます。そのほか、元気がない、疲れやすいなど特徴的な症状を示さないことも多く、約3~5割は無症状です。

発症したらどんな治療をするの?

猫の肥大型心筋症の進行の度合いはさまざまです。急に悪くなる猫もいれば、ゆっくり進行する猫もいます。根本的に治す治療法はありませんので、その病期や症状に応じた治療を獣医師と相談しながら選択して行うことになります。

まとめ

猫の肥大型心筋症は初期症状がなく、悪化してから気付く場合が多い病気です。遺伝子の変異が疑われていますが、未解明な部分が多い病気で原因は不明とされています。無症状の場合は3~5年の余命。ただし、症状が出ている場合には長期生存は難しく、急に亡くなってしまう場合も多々あります。猫にとって重篤な病気のひとつです。

肥大型心筋症は予防することができないので、1年に1回は定期検診を受けることが望ましいとされる病気です。特に前述した発生する頻度が高いとされる純血種の場合は、若齢でも受けることをオススメします。

[編集部]