賢者の目 Vol.10

マイクロチップの装着は、不幸なペットを生まないための有効手段

[2016/01/28 6:00 am | 越村義雄]

東日本大震災では、約1万3000頭のペットが被災した。当時、ペットフード協会の会長として、犬猫たちの尊い生命をすべて助けるために、会員社に協力を呼びかけ243トンのペットフードを東日本の被災地に送った。提供されたペットフードや獣医師の先生方による獣医療、動物看護士の方々、ボランティアの皆様の献身的なケアによって、ペットたちの生命は助けられた。

しかしながら、マイクロチップがほとんど装着されていなかったため、ペットの所有者が分からず、長期にシェルターで過ごさなければならないペットたちも多かった。また、ほかの人に飼われてしまって、トラブルが発生した不幸なケースもあった。昨年の9月30日現在、マイクロチップの装着の現状は次のようになっている。

欧州ではほとんどの国でマイクロチップ装着の義務化が増えている状況だが、日本ではまだまだ普及率が10%にも到達していない。

マイクロチップを装着することは、不幸なペットを減らすことになり、次のようなメリットがある。


    1.犬や猫などの個体識別を可能とする
    2.震災その他で迷子になったとき、探しやすくなる
    3.飼い主の連絡先が分かる
    4.捨て犬や捨て猫、迷いペットの保護の費用の大幅な削減が期待される
    5.過去の医療データの蓄積から獣医師の先生方による緊急治療が容易になる
    6.渡航時の入国が容易になる
    7.ペットのパスポートの役割をする
    8.EU国内の移動が容易になる
    9.首輪や鑑札が外れても身元が分かる
    10.安心・安全の絆の役割を担う

来るべき南海トラフ大震災に備え、ペットたちの生命を守るため、また不幸なペットや飼い主を出さないために、早急にすべてのペットにマイクロチップの装着が望まれる。普及の方法と具体的な施策としては、以下のことが考えられる。


    1.動物の愛護及び管理に関する法律を改定し、人と動物の絆をより深めるため、マイクロチップ装着を義務化する
    2.犬猫販売時にマイクロチップ装着を義務化する
    3.動物病院初診時にマイクロチップ装着を義務化する
    4.狂犬病予防接種の際にマイクロチップの装着を義務化する
    5.飼い主とペットが来場する各種ペットフェアで、獣医師会よりマイクロチップの装着を行う
    6.ブリ―ダー、小売店、動物病院、業界団体が啓発と普及を積極的に行う
    7.災害時により迅速に必要なフード(子犬用・子猫用、成犬用・成猫用、高齢犬用・高齢猫用など)が必要な量だけ確保でき、不必要なフードの供給を防げる
    8.尊いペットの生命を守り、殺処分の防止に即役立ち、不要な莫大なコスト
     (処分費用、人件費、巨大なシェルターの建設費等)を節約できる
    9.感染症対策として、トレーサビリティの確保が可能となる
    10.マイクロチップのリーダーの配備の推進を行う

不幸なペットを生まないための方法はマイクロチップ装着のほかにも多くあるが、別途述べることにしたい。

[越村義雄]