賢者の目 Vol.5

高齢犬や高齢猫が健やかに過ごせるように

[2015/12/03 6:00 am | 酒井健夫]

犬や猫は何歳から高齢や老齢と呼ぶのでしょうか。一般的に、種類や系統、体型を参考に、犬や猫の年齢を便宜的に人間の年齢に比例して算出した推定年齢に基づき、高齢犬、老犬、シニア犬、あるいは高齢猫、老猫、シニア猫という呼び方をしています。しかし、実際に動物は、予測される寿命の約75%に達した時点から「高齢」と呼ばれる傾向があります(Goldston R Tら, 1995)。

犬の平均寿命を13歳と推定すると、その75%を生きた10歳以上の犬は、全飼育頭数の約3割を占めることになります。この高齢犬の割合が確実に増えている現在、これらの犬の日常の健康管理、傷病の予防や早期受診が大切です。

特に高齢動物にとって、飼い主が「かかりつけ獣医師(病院)」や「ホームドクター」を決めて、日ごろから診療はもちろんのこと、健康や食事の管理、サプリメントの利用、介護についての指導や助言を受けられるように、万全を期することが肝心です。飼い主のみなさんは、このように「かかりつけ獣医師(病院)」や「ホームドクター」の先生方と動物に関する日常の情報を共有し、信頼関係を築き上げておけば、さらなる治療や手術が必要な場合でも、信頼できる二次診療病院や専門病院が紹介されるので安心です。近年、犬や猫の診療分野では、専門分野が細分化され、高度で最新の手術や治療を行う病院が増えており、適切に対応できる診療体制が整ってきています。

2013年の犬と猫の飼育頭数は合計2061万頭で、2015年度の総務省人口推計における15歳未満の子供1617万人に比べて、明らかに多くなっています。このような社会情勢の中で、ペットフード協会が公表している犬と猫の飼育世帯率は各15.8%と10.1%になります。犬や猫がコンパニオンアニマルとして認知され、将来的な高齢化に飼い主が対応できるようにするには、すべての集合住宅でルールを守りつつ動物の飼育を可能にする活動の推進、また地域やグループによる動物の共同飼育や飼育支援システムの構築など、高齢者と高齢動物が安心して過ごせる社会に向けての取り組みが求められます。

高齢の犬や猫は、みなさんが長年一緒に暮らしている大切な家族の一員であり、大事な生活のパートナーです。動物たちがいつまでも健康で過ごせることを強く願うものです。

[酒井健夫]