避難所に「ペットと同伴」の必要性を改めて考える 〜同伴避難に取り組む地域もあるが、課題は多い

避難所に「ペットと同伴」の必要性を改めて考える

同伴避難に取り組む地域もあるが、課題は多い

東洋経済オンライン | 2024/1/10

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このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。

2024年の元日、新年を迎えるはずの喜びと期待が暗い影を投げかけました。能登半島地震が発生し、その余波は広範囲にわたりました。発生から10日、現在でも多くの人が避難生活を余儀なくされています。

ペットを飼っている人も少なくありません。いち早く支援活動を開始した日本レスキュー協会が自治体と連携し、ペット受け入れに関する調整が行われたことによって、受け入れがズムーズに運んだ避難所がありました。これは、モデルケースとなる事例のひとつとして今後に活かされることになるでしょう。

こうした災害が起こると、地域社会の備えと危機管理の必要性を再認識させられますが、わが国にでは、ペットの存在を理由に避難を躊躇しないよう同行避難を推奨し、 「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を策定しています。

そのなかで平時における検討や準備を推奨していますが、対応状況は自治体によってまちまちであることがほとんどです。ガイドラインから一歩踏み込んで、自治体による対応状況を見える化させることも必要ではないでしょうか。

また、基本的には人命が優先となりますので、どうしてもペットの対応は後手後手になってしまいます。災害時における優先順位は、自助、共助、公助の順です。実際に被災自治体では公助が間に合わず、国の対応にも時間がかかります。ペットがいる家庭では、まず自助を考えるべきです。

自助のなかには、物資の備蓄だけでなく同伴避難ができる場所の確保も重要になります。そのためには、平時から自治体に対して同伴避難ができる施設の確認をすることが大切です。未整備の自治体に対しては、同じ地域の犬友や猫友などとともに、自治体に働きかけることが大切です。

また、この記事で指摘されているように、同伴避難と連動していることが重要です。日本は災害の多い国です。だからこそ、平時から国・自治体・住民が議論し、すべての被災者が少しでも安心して避難生活を送れるような避難所づくりを進めることが大切です。

公共に比べて動きの早い民間では、災害発生時に飼い主とペットを受け入れる施設が増えています。また、歌手の伍代夏子さんによる「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」は芸能人の発信力をつかった素晴らしい啓蒙活動です。

しかし、残念なことに、もっともペットに近い企業や団体には、まだこのような動きは見られません。例えば、全国の自治体にはたくさんのペットショップがあります。生体を扱っているので、ペットへの対応も難しくないと思います。少なくとも店舗で購入した犬や猫は、被災していない近隣のグループの店舗で受け入れるなどを検討してもよいのではないでしょうか。

ペットショップの業界団体である全国ペット協会、ペットフードメーカー業界団体であるペットフード協会などは、加盟各社に働きかけて、同伴避難や一時預かりが可能な施設の設立や倉庫の空きスペースの提供などを実現してほしいと思います。 それこそが、彼らが掲げる”ペットとの共生社会の実現”や”ペットと人の安全・安心を守る”などのスローガンにふさわしい活動ではないでしょうか。