【猫飼いTIPS】猫は飼い主のことを覚えているの? ~猫の認知と記憶力に関する事実
猫は神秘的な存在です。その目に宿る深遠な瞳が、私たちの心を見透かすかしているように思えます。時折、彼らが私たちのことをどれだけ理解しているのか、あるいは記憶しているのかという疑問を抱きます。
猫との生活はときに不思議で奥深いものです。しかし、私たちが彼らを観察するとき、彼らもまた私たちを観察しているのかもしれません。
果たして、猫は本当に飼い主のことを覚えているのでしょうか? 今回は、その謎めいた猫の認知についてのお話です。
猫の脳は私たちとよく似ている
猫の脳は、犬や人間の脳と比較すると相違点よりも類似点のほうが多いことがわかっています。哺乳類である私たちは似たような脳の構造と機能を持っています。
猫も私たちと同じように、時間の経過を感じ、夢を見るのです。また、猫が数を数える能力を持っているという研究もあります。そして、加齢に伴い、認知機能が低下するのも人間と同様です。
猫はどうやって人間を記憶するの?
猫は、私たちと同じように、作業記憶や短期記憶、長期記憶を持っています。そして、猫が人間を記憶する期間は、人間が猫に対して行った特定の行動や、猫と一緒にいるときに起こった特定の出来事に関係している可能性があります。
たとえば、猫の作業記憶は約30秒で、獲物やおもちゃを追いかけるのに十分な長さだといいます。また、訪問者が猫嫌いで猫と交流しなかった場合、猫はその人間を記憶しないかもしれません。
つまり、猫はその訪問者が自分のテリトリー内にいることには気付くものの、自分に影響を与えなかった場合、短期記憶は数時間後にその情報を削除し、その後の出来事に関心が移るのです。
長期記憶に保存されるのは、猫の欲求を満たすものである可能性が高いです。食料、ストレスがなく快適な空間、痛みなどがない健康状態などがそれに該当します。なぜなら、これらは猫の生存に直結しているからです。
猫は、古典的条件付けとオペラント条件付けの両方で学習するといわれています。古典的条件付けとは、自分の意志ではコントロールできない無意識的な反応による学習です。もっとも有名な例は、「パブロフの犬の実験」です。音を鳴らしてから犬に餌を与える=条件刺激(CS)を繰り返すと、音を聞くだけで犬がよだれを流す現象=無条件刺激(UCS)が見られるようになりました。
一方、オペラント条件付けは、自分の意志でコントロールできる主観的な反応によって行われる学習です。つまり、ある行動が望ましい結果をもたらす場合にはその行動が増加し、望ましくない結果をもたらす場合にはその行動が減少するという結果をもたらします。例えば、ボタンを押すと餌が与えられる場合、ボタンを押す行動を増やす可能性が高くなります。
いくつかの研究によれば、猫は視覚と嗅覚の両方の信号の作業記憶にも反応することが示されています。母猫と子猫の関係を調査した研究によると、子猫を母猫から分離してある程度時間が経過した後でも、母猫は子猫を体臭で識別しました。このことから、嗅覚、聴覚、視覚が個々の記憶に寄与していると考えられます。
猫は飼い主のことを記憶している
現在、犬の記憶に関する研究は、猫のそれよりも多く存在しています。しかし、猫の認知と飼い主との関係に関する理解も進んでいます。こうした研究は、猫は人間に対して支配的な立場を取る(気ままで私たちを下僕としか見てない)という俗説を払拭するのに役立ちます。
2013年に発表された「Vocal recognition of owners by domestic cats (Felis catus)」では、猫は見知らぬ人間の呼び声と飼い主の呼び声を区別していることが明らかになりました。
この研究によって、猫がさまざまな方法で飼い主を認識し、飼い主になつくという理論への関心を引き起こしました。
最近の研究では、飼い主が猫との会話にベビートーク(赤ちゃん言葉)と通常の会話の両方を使った場合の影響も調査されました。猫たちは理解して反応するだけでなく、人間が自分たちに直接話しかけていることにも気づいているようです。
オレゴン州立大学が2019年に行った猫と飼い主の愛着に関する研究からは、ほとんどの猫が安心と安らぎの源として人間を頼りにしていることがわかります。発達心理学者のメアリー・エインスワース博士による愛着理論から考えると、「安定型スタイル」は猫が飼い主と築いた絆によってもたらされるも考えられます。
まとめ
人間と同じように、猫も年をとると認知機能が低下しやすくなります。しかし、愛情深い関係を築く時間は十分にあります。
猫の学習の大部分は関連づけにより記憶されています。ですから、猫が幸福を感じるような楽しいことを強化することで、適切な社会化や絆を深めることができます。
具体的には、猫の境界を尊重し、サインを見逃さず、コミュニケーションを通じて楽しい時間を共有することが重要です。