【猫飼いTIPS】愛する飼い主や仲間との別れは猫を”ロス”にする?
ペットと暮らしていると、別れとそれに伴うペットロスは誰もが経験することです。多くの場合、心から愛したペットの思い出や写真よって慰められ、時間の経過とともに喪失感を乗り越えます。
ペットも私たちと同じように、最愛の人や一緒に暮らす仲間を亡くしたときに喪失感に苛まれるのでしょうか。今回は、ペットの「ロス」についてのお話です。
ペットにも「ロス」はある?
ペットは、飼い主が亡くなる(永遠の別れ)という概念を完全に理解することは難しいかもしれませんが、実際にはペットも喪失感に苛まれる可能性があります。それは、飼い主がいなくなったことや、一緒に過ごした日常生活の変化に反応したものと考えられます。
ペットだけでなく、介助犬や警察犬などでも、飼い主やパートナーがいなくなると、悲しみや抑うつの徴候を示すことがあります。渋谷駅まで飼い主の帰りを出迎えに行き、飼い主の死去後も約10年にわたって通い続けて飼い主の帰りを待った忠犬ハチ公が有名です。
猫も悲しみの徴候を示すことがあります。飼い主を鳴いて呼んだり、捜して部屋を歩きまわったり、飼い主が座っていた椅子やソファから動かないなど、数多くの事例があります。
「ロス」の徴候
いくつかの調査や研究によって、犬と猫に共通する悲嘆の徴候が明らかになっています。2016年にはニュージーランド動物虐待防止協会(SPCA New Zealand)のジェシカ・ウォーカー氏が率いるチームによる研究が、学術出版社MDPIのオープンアクセスジャーナル「Animals」に掲載されたました。
この研究は、犬159匹、猫152匹のデータを収集しました。ニュージーランドとオーストラリアで複数のペットを同時に飼い、過去5年以内に1匹を亡くした飼い主からの回答から構成されています。残されたペットが仲間の喪失にどう反応したかを思い出すよう求められました。
その結果、犬や猫は仲間を失ったことに対してストレスや悲しみの徴候を示し、その行動は家族の一員を失って悲しんでいる幼い子ども(1歳から4歳)たちと似ていたといいます。
古くは、1996年にアメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)が猫の飼い主を対象に行った調査もあります。この調査では、猫が悲しむかどうか、悲しむとしたらもっとも一般的な徴候は何かについて理解を深めることになりました。
調査の結果、仲間の死後、ほとんどの猫に鳴き声の変化が見られました。この徴候は、ほかのどの身体的、行動的変化よりも多いことが明らかになりました。
そのほかの悲しみの徴候としては、食欲不振や睡眠パターンの顕著な変化(普段より多く眠る猫もいれば、不眠になる猫もいた)、家のなかで好んで過ごしたり休んだりする場所の変化、飼い主に対する身体的な愛情や執着心の増加などが見られました。
ロスはいつまで続くのか
人間と同様に、個体によって喪失に対する反応が異なるため、悲しみが解消する具体的な期間はありません。
多くの専門家は、悲しみが数週間から数カ月で収まる傾向があるとしていますが、ほかの動物の研究では、密接な絆で結ばれた野生動物のコミュニティでは、悲しみが何年も続くことが観察されています。
人間の悲しみはペットにも影響を与える
デューク大学の2019年の研究によると、生活の中で大きなストレスにさらされている人間の毛髪には、ストレスレベルの指標として用いられるコルチゾール量が多く含まれると報告されました。
コルチゾールは副腎皮質ホルモンの一種で、人間や動物では毛に蓄積するため、毛のなかのコルチゾール値を測定することでストレス反応をうかがい知ることができます。
この研究では、ストレスを抱える人間と一緒に生活するペットの毛皮には、高いコルチゾール値が含まれていることも報告されています。つまり、ペットは私たちの感情を感じ取り、同様の身体的ストレス反応を示す可能性が高いということです。
このことは、悲しみや喪失がもたらすストレスにも通じるので、あなたが喪失を悲しんでいるとき、ペットもまた影響を受けているといっても過言ではありません。
ペットのグリーフケア
仲間の死後、悲しみに暮れているペットのためにできることがいくつかあります。以下が代表的な方法です。
・食事や遊びなど毎日の習慣をしっかりと守る
・精神的な満足を得られるように触れ合う時間を増やす
・ペットミュージックや鎮静フェロモン、ケアウエアなどを試してみる
・ストレスと緊張を軽減するトリプトファンやチアミンなどを含むおやつを与える
・インタラクティブなおもちゃを与えたり、新しいキャットタワーを設置する
猫がトイレ以外で排泄してしまったり、家具で爪とぎをしたり、過剰に鳴いたりするような行動を見せ始めても、しかったりしてはいけません。しかってしまうと、あなたへの恐怖心を植え付け、不安を増大させ、これらの行動を悪化させるだけです。
猫が悲しむ時間には個体差がありますが、いずれ回復し日常生活に戻ります。
しかし、猫に身体的または精神的な衰弱が続くようであれば、獣医師に診断してもらいましょう。抗うつ薬が有効な場合もありますが、基礎疾患が原因でないことを確認することも大切です。
特に猫は、食欲不振が長引くと、すぐに肝リピドーシスという生命を脅かす状態に発展する可能性があるため、食べなくなった場合は注意深く観察する必要があります。
すぐに新しい猫を迎えてもよい?
ペットを亡くしたあと、新しい猫を迎える適切な時期を見極めることも大切です。これは飼い主の気持ちにもよりますし、ほかのペットの気質や適応力にもよります。
あまりに早いと、今いる猫が亡くなった仲間の不在を認識する時間が足りず、ストレスや不安が増大する可能性があります。そのため、新しい猫がいる環境に慣れるまでの間、必然的にこれまでの日常生活が乱れることになります。
猫は、飼い主の抱っこや身体的な愛情が増えることで、仲間がいない寂しさを紛らわせることができるかもしれません。
まとめ
私たちだけでなく、犬や猫にも「ロス」はあるようです。それは、どれだけ強い絆で結ばれていたかによるようです。
悲嘆が深いと、問題行動を起こすことが報告されていますので、彼らの悲しみやストレスを解消するために、いろいろな方法を模索してあげましょう。あなたの愛情ある対応は、やがてロスからの回復につながるのですから。
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