幸せな共生社会を築くためにも、愛犬のフィラリア対策は完璧に
前回の記事では、犬の健康を守るために必ず行いたい年間スケジュールについてご説明しました。今回は、その年間スケジュールのひとつ、春先から初冬にかけて毎月行う「フィラリア対策」について見ていきましょう。
フィラリアは、人にも感染します!
フィラリアは、正しくはフィラリア症(犬糸状虫症)といい、犬を中心に感染する寄生虫病です。白くて細いそうめんのような形をしていて、犬の心臓や血管に寄生します。寄生後しばらくは症状が出ませんが、何年か感染が続くと、息が切れる、咳が出るなどの呼吸器症状が始まり、むくみや腹水、喀血、血尿なども発現してきます。そして、そのまま治療を怠っていると、ほぼ100%の犬が死を迎えます。
フィラリアは、犬が蚊に刺されることで感染します。フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を持っている蚊が犬を吸血すると、犬の体内にミクロフィラリアが侵入します。幼虫は最初は皮下にいますが、その後脱皮を繰り返しながら筋肉のなかを潜っていき、2~3カ月で血管に到達。その後は心臓まで進んで心室や動脈に寄生します。そして、半年ほどで完全な成虫になり、ミクロフィラリアを産出するようになります。
もちろん、すべての蚊が危険ということではありません。ミクロフィラリアを体内に持っていない蚊に刺されても感染しませんので、必要以上に恐れる必要はないでしょう。とはいえ、どの蚊がミクロフィラリアを持っているかはわかりませんし、蚊に刺されないまま一生を送ることなど不可能ですから、幼虫を持っている蚊に刺されることを前提に対策を採るべきでしょう。
また、犬の病気だと思われがちなフィラリアですが、じつは猫などほかの動物にも感染し、突然死を引き起こすことがあります。さらに怖いのは「人にも感染する」こと。人は感染しても命に関わるほど重篤な症状にはなりにくいようですが、だからといって軽視していいわけではありません。
フィラリアに感染したことがわかってから治療をすればいい、と考えている飼い主さんもいるようです。たしかに、それなりのリスクはあるとはいえ、感染後でも治療は可能です。しかし、フィラリアに感染したかどうかの早期発見は、一般の飼い主には不可能に近く、たいていは症状が顕著に出てから気づくことになります。そして、治療を行うまではミクロフィラリアが産出され放題ですから、当然ですがほかの犬などにフィラリアを伝染させます。
つまり、フィラリア予防対策を怠るということは、愛犬の生命を危険にさらすばかりでなく、愛犬が感染源として社会に害を与えても構わないと宣言しているも同じこと。公共性や共生社会という視点が欠落した、許されない考え方なのだと胆に命じておきましょう。
フィラリア対策は獣医師の指導で行いましょう
フィラリア対策にはいくつかの方法があります。もっともポピュラーなのは、いわゆる「フィラリア予防薬」を毎月飲ませる方法です。
しかし、この「予防」という言葉が誤解を招くことがあります。投薬中は体の中にバリアのようなものができ、入ってきたミクロフィラリアを次々に駆除していくというイメージを持っている人もいるようですが、これは間違いです。いわゆるフィラリア予防薬は、フィラリアの感染を予防するための薬ではなく、蚊に吸血され体内に侵入したミクロフィラリアを幼虫のうちに駆除するしくみなのです。
飲んだときにだけ効く薬ですから、蚊に刺される前に投与しても意味がありませんし、蚊に吸血される可能性がある最後の日以降に、止めの投与を必ず行なわないと感染の可能性が高まります。また、投与は30日間隔など、一定の間隔で行うことが何よりも大切です。投薬忘れや投薬間隔のズレは、幼虫を駆除するタイミングを逃す危険に直結します。
もっとも確実なのは、投薬スケジュールを獣医師にアドバイスしてもらう方法です。3~4月ころに愛犬を動物病院へ連れて行き、その子の体格に適した分量の飲み薬を処方してもらうのです。蚊の発生時期は地域によって異なりますし、投薬量は犬の体重によって大きく変わりますので、素人判断は避けるべきでしょう。また、フィラリア予防薬の処方前には、フィラリアに感染しているかの血液検査を行わなくてはなりません。すでにフィラリアに感染している犬にフィラリア予防薬を飲ませると、思わぬトラブルを招きかねないからです。
飲み薬は1年分をまとめて処方してもらえますので、毎月通う必要はありません。代金は犬の体重によって、また獣医師によっても変わりますが、小型犬の場合は検査を含め年間1万円~1万5000円と考えておけばいいでしょう。
ほかにも、年に1回接種すれば効果が持続する注射や、首の後ろなどに滴下して皮膚から薬剤を投与する方法もあります。年1回の注射なら投薬し忘れがありませんし、滴下タイプは飲み薬を吐き出してしまう子でも確実に予防効果が得られます。ただ、それぞれ一長一短があるので、やはり獣医師と相談して決めるべきでしょう。
コメントを送信