「2015年全国犬猫飼育実態調査」データとその意味するものは?
飼育頭数に関して
近年5年間の飼育頭数の推計は、以下のようになった。
2015年の犬の飼育頭数は991万7000頭となった。2011年の1193万6000頭から、4年間で201万9000頭、16.9%も減少したことになる。
その一方で、2015年の猫の飼育頭数は987万4000頭であった。2011年は960万6000頭だったので、4年間で268万頭、2.8%増えたことになる。
飼育頭数増減の理由に関して
昨年も犬の飼育頭数は減少となったが、その理由として考えられることは以下のとおりである。
- 【犬の場合】
1.高齢者の割合は65歳以上が26.7%、70歳以上は19.0%。犬の散歩をしなくてもいいと、とても実感できる60代は57.1%、70代は100.0%となった。
2.犬のブリーダーが減少した。
3.犬の価格が上がったこと。
4.消費の低迷が依然として続いている。
5.60歳以上の高齢者は動物愛護団体から犬を譲り受けるのが困難になった。
昨年、猫の飼育頭数はフラットで推移したが、4年間で増加した主な理由としては、次のことが考えられる。
- 【猫の場合】
1.高齢者が猫のほうが飼いやすいと感じていること。
2.近年の猫ブームで、猫がテレビや雑誌などのメディアでも取り上げられる回数が増えた。
3.猫に関する経済効果を指摘する声が強く、猫だけで1兆2000億円の経済効果があると試算する専門家もいる。
4.ペットフード協会の調査では、「生活に最も喜びを与えるもの」は何かという質問で、猫飼育者は、1位ペット、2位家族、3位趣味である(犬飼育者は、1位家族、2位ペット、3位趣味と答えている)。
5.人と猫の絶妙な距離感にたまらない魅力を感じる飼育者が多いと推測される。
6.サンプル数は少ないが、猫の被毛のもふもふ感(ふわふわ感)により、犬よりも幸せホルモンのオキシトシンが上昇したデータもあるようだ。
7.消費低迷の中で、犬の入手先がペット専門店(42.7%)であるのに対して、猫の場合の入手先は、野良猫を拾った(39.5%)、友人・知人からもらった(30.0%)とほとんど費用がかからない。
飼育意向の状況に関して
ここで問題としたいのは、ほとんどのペットにおいて、今後飼育してみたいと考える人の飼育意向率が年々下がっていることである。隔年の数字で見てみたい。
飼育意向率が下がってきた理由としては、高齢化、少子化、景気の低迷等が考えられる。
飼育意向率を上げていく施策に関して
この施策については、さまざまなことが考えられるが、ここでは、その一部を紹介することにしたい。
- 【飼育意向率を上げる施策】
1.ペットとの共生による人のさまざまな肉体上の効用の発信
2.ペットとの共生による人のさまざまな精神面の効用の発信
3.ペットと暮らす喜びと責任の啓発
4.ペットと暮らせるインフラ整備
5.ペットを介在した高齢者の健康寿命延伸運動
6.政府の健康寿命延伸計画に関連して、一般財団法人日本ヘルスケア協会および日本ヘルスケア学会との連携
7.他業界とのあらゆる連携
8.飼育促進のためのサービスの開発
9.責任を持って飼育可能な複数飼育の推進
10.人とペットの共生社会の実現(都道府県、町、地域単位)
4の「ペットと暮らせるインフラ整備」に関しては、下記のようなことを進めていくことが重要となる。
- ・ペットと住める集合住宅の整備
・高齢者がペットと住める特養ホームの整備(例:タイガープレイス)
・ペットのケアワーカーの養成
・幼児教育(人とペットの共生に関する授業)
・動物介在療法の充実
・動物介在教育の充実
・動物介在活動の充実
・人とペットの公的マナー資格の導入
・公共施設・交通機関の受け入れ
・補助犬の飼育支援活動の充実
8の「飼育促進のためのサービスの開発」に関しては、下記のようなサービスの開発が重要となる。
- ・旅行や外出中の世話代行サービス
・健康保険料や生命保険料などが減額になるサービス
・24時間の電話ペット相談サービス
・飼育が継続不可能な場合の引き取り手斡旋サービス
・飼育部屋に特化したクリーニングやニオイ対策サービス
・高齢で飼育不可能な場合の受入施設提供サービス
・しつけ代行サービス
・老化したペットの世話対応サービス
・散歩代行サービス
・ペットのデイケアサービス
今回紹介できなかったペットフード協会調査データからもいろいろな可能性が見えてくるが、次回はそのことに触れることにする。
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