【猫飼いTIPS】猫が耳の感染症にかかっているかどうかを見分ける方法とその対処法

愛猫がしきりに耳を掻いていませんか? それは耳の感染症である可能性があります。早くよくなるためにはどうしたらいいのでしょう。今回は、耳の感染症の原因と対処法についてのお話です。

猫耳感染症とは

外耳炎は一般的に耳の感染症と呼ばれ、外耳道の炎症(腫れ)です。急性と慢性があります。外耳炎は猫ではよく見られる疾患ですが、犬ではあまり見られません。感染の原因はいろいろ考えられます。

猫の耳は、大きく3つの部分(外耳・中耳・内耳)で構成されています。外耳には皮膚で覆われた耳の三角形の軟骨部分である耳介と、外耳道があります。耳介は漏斗のような形をしており多くの音を拾います。

耳介から入った音は、外耳道を通り外耳と中耳を隔てている薄い膜=鼓膜にあたり、中耳で増幅されて内耳に伝えられます。中耳の奥にある内耳は、聴覚に関わる蝸牛と平衡覚をつかさどる前庭や三半規管からなる非常に繊細な器官があります。

猫の聴覚が非常に敏感なのは、人間と比べて外耳道が大きい(太い)ためでもあります。外耳道が大きく深ければ、音をよりよく処理することができるのです。しかし、外耳道が深いと汚れや耳垢がたまりやすく、感染や炎症の原因にもなります。

外耳道は皮膚で覆われており、細かい毛がはえていて皮脂腺もあります。外耳道の深部は暗く、湿った環境であることが多いので、カビや細菌の温床になりやすいのです。慢性的で重度の外耳炎は、最終的に中耳や内耳の感染症として重篤化する可能性があります。

猫耳感染症の原因

外耳炎にはさまざまな要因があります。スコティッシュフォールドのような骨形成異常は、耳感染症のリスクを高めます。耳垢の分泌が多い、耳毛が多い、外耳道が異常に狭い猫も、かかりやすい傾向にあります。

耳ダニ(ミミヒゼンダニ)は、猫の耳感染症の一般的な原因です。耳ダニは微細な寄生虫で外耳道に生息します。人間には感染しませんが、動物の間では非常に感染力が強くやっかいです。そのため、屋外に出る猫や、生まれたばかりの子猫に耳ダニが見られることはよくあります。

アレルギーも、感染症の原因として知られています。猫は、食物や環境アレルギー(イエダニや季節性アレルゲンなど)に反応して耳感染症を引き起こすことがあります。

食物アレルギーの場合、通常はタンパク質が原因です。アレルギーを起こしやすいタンパク質は鶏肉、牛肉、七面鳥です。猫には通常、アレルギーに伴う皮膚病の徴候があり、皮膚で覆われている外耳道も影響を受けることがあります。

細菌とカビは通常、二次的な日和見感染です。つまり、細菌とカビが主原因ではなく、免疫機能が低下したことによりこれらの病原体が外耳道で繁殖し、さらなる疾患を引き起こすということです。

健康な外耳道は、細菌やカビの異常増殖を撃退し、防御することができますが、免疫機能が低下するとその能力は失われてしまいます。二次感染は耳の感染症でももっとも一般的です。

耳の炎症のその他の原因、および二次感染を引き起こす可能性のあるものは次のとおりです。

 ・草の芒や髪の毛
 ・ポリープ
 ・悪性腫瘍
 ・皮膚疾患
 ・内分泌疾患
 ・免疫介在性疾患
 ・脂腺障害
※内分泌疾患には、甲状腺疾患(甲状腺機能低下症)や副腎疾患(クッシング症候群)が含まれます


また、過度な耳掃除も二次感染の原因となることがあります。過酸化水素水やエタノールなど不適切な薬剤を使うのは論外ですが、市販の耳洗浄液でも炎症を引き起こす可能性があります。自己判断でなく、獣医師の処方に従ったほうがよいでしょう。

猫耳感染症の症状

耳の感染症を患っている猫では、重症度や感染期間によって症状は異なります。ただし最初に気づくのは、しきりに耳を気にしたり、掻く行為でしょう。多くの場合、以下のような症状が見られます。

 ・しきりに首を振る
 ・しきりに耳を掻く
 ・頭の傾き
 ・耳だれと変なニオイ
 ・耳介の炎症や潰瘍
 ・耳の痛み


耳の感染症は、原因に応じて片耳または両耳が冒されます。感染や炎症が中耳や内耳にまで進行すると、猫には協調運動障害や前庭障害の徴候がみらます。

前庭は平衡感覚、運動、方向感覚に関与しています。前庭が異常をきたすと、人間のめまいと似た症状を引き起こします。また、耳介に耳血腫ができることもあります。

猫耳感染症の治療

耳の感染症は自然に治ることはありません。ですので、必ず獣医師による治療が必要です。放っておくと内耳にまで広がる可能性があります。

耳の感染症を放っておくと、傷跡がミミズ腫れのように盛り上がって肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)になったり、外耳道狭窄になり、ときには難聴を引き起こすこともあります。

獣医師は、拡大鏡などで耳のなかを確認します。続いて綿棒を耳に入れて粘液を採取し、顕微鏡で観察してダニ、真菌(カビ)、細菌など感染原因を特定します。

耳ダニの場合、徹底的な耳掃除に加えて駆除薬を使用するのが一般的です。1回もしくは数回にわたり薬を投与します。

アレルギーの治療には多くの方法がありますが、まず食物アレルギーか環境アレルギーかを見極める必要があります。潜在的なアレルゲンを特定する検査だけでなく、食物経口負荷試験が行われることもあります。

細菌およびカビが原因の場合は、抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬が配合された薬を使用します。いろいろなタイプがあるので、獣医師の処方に従いましょう。

重症の場合は、炎症を抑えて痛みを和らげるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)といった経口薬が必要になることがあります。また、中耳炎の場合には、抗生物質や抗真菌薬が投与される場合があります。

外耳道だけけでなく、中耳や内耳にポリープや腫瘍がある場合は外科的手術が必要になることもあります。

通常は、治療後数日程度で、症状は落ち着くでしょう。ただし、再発しないように、2週間程度は経過観察も含めて治療を継続するのが一般的です。

猫耳感染症を予防するために

耳の感染症を治す自然療法はありませんが、予防する方法はあります。それは、自宅で定期的に耳掃除をすることです。

汚れの付着には個体差がありますが、少なくとも月に一度は愛猫の耳掃除をしてあげましょう。また、猫種によってもケアの頻度は変わってきます。特に折れ耳のスコティッシュフォールドや反ったアメリカンカールなどはより頻繁に掃除をしてあげましょう。

耳掃除は、猫にとってポジティブな経験にすることが大切です。まずは耳をマッサージして、猫が触られることに慣れさせることから始めましょう。ポジティブ強化のためにおやつを与えるのもいいでしょう。

▸STEP 1
猫の背後から片方の手で猫の顔を押さえ、片方の耳の付け根を指で揉みます。揉むことで猫が警戒心を解くので、ケアがしやすくなります。

▸STEP 2
耳洗浄液をカット面に染み込ませて、指に巻いて内側を優しく拭きます。指が入るところまで拭き取れればOKです。洗浄液は、天然由来で

猫の耳は内部でL字に曲がっているので、奥のほうはケアができません。汚れが奥まである場合には無理に取ろうとせず、獣医師に相談しましょう。無理なケアは、猫の繊細な耳を傷つけてしまうことになりかねません。また、綿棒でも同じようにケアできますが、慣れないうちは猫が動いたりするので避けたほうがよいでしょう。


まとめ

耳の感染症を防ぐ最善の方法は、定期的な耳掃除と猫の室内飼いです。梅雨時など湿気が多い時期は普段以上にべたつきやすくなりますので、いつも以上に耳掃除をしてあげましょう。

ただし、慢性的な感染症の場合は、アレルギー検査をする必要があります。感染症の根本原因を特定すれば、耳感染症を完全に治すことができます。