サービス停止「ねこホーダイ」が見落とした大問題 ~SNSなどで批判の声、背景に「保護猫活動」の限界

サービス停止「ねこホーダイ」が見落とした大問題

SNSなどで批判の声、背景に「保護猫活動」の限界

東洋経済オンライン | 2023/1/11

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このコーナーでは、注目ニュースに対する編集部や識者のコメントを紹介します。

昨年12月に、会員制サービス「ねこホーダイ」が開始されました。しかし、リリースと同時にSNSなどで批判が起こり、芸能人なども巻き込み問題がクローズアップされ、ほどなくしてサービス停止に追い込まれました。

このサービスに関しては、これまでもいろいろな記事が掲載されています。そのほとんどは問題点を挙げていますが、その内容は「猫には感情がある」「環境の変化が苦手」など猫の特性に関するものや、虐待の危険性を危惧するなど表面的なものばかりでした。

しかし、問題点はそれだけではないと思うのです。なぜこのサービスが考えられたのか、その背景には何があるのかを考えなければ、現実が見えてこないのです。

まずあげられるのが、動物愛護法の改正です。「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う管理の方法等の基準を定める省令(基準省令)」により、飼養施設のケージなどの数値基準、飼養・保管できる頭数の上限が定められたのです。

すでに多くの保護施設は、増え続ける保護猫でキャパオーバー状態です。数値規制を上回る頭数を飼育していれば、そのぶんは早急に里親を探す必要がでてきます。

しかし、譲渡の現状も飽和状態=供給過多にあるといえます。つまり、里親となる人が限界に達しているとも考えられます。多くの保護団体は高齢者や単身者に譲渡しないという条件を提示しています。ですので、おのずと里親が限定されてしまいます。

第210臨時国会では「出産・子育て応援交付金事業」が創設されることが決定されました。これは少子化対策が目的ですが、少子化は出生率の低下が原因で、出生率の低下は未婚化の進展が原因とされています。

内閣府によると、未婚化の進展のもっとも大きな要因となっているのが「経済的な不安」で、特に若年男性の経済力低下が挙げられています。雇用情勢や賃金低迷、物価上昇などで、保護であろうとペットを飼えるような状況ではないということです。

このような状況から、「ねこホーダイ」は生まれたと考えられます。対象を広げないと保護猫は増え続けてしまうと。その意味では、このサービスは保護活動に一石を投じたともいえると思います。

そして、この記事でも指摘しているように、「いまいる保護猫・保護犬を減らす」のと同時に「保護猫・保護犬を増やさない」ことが重要ということです。この2つは両輪であるといえます。

「保護猫・保護犬を増やさない」ためには、終生飼育(安易に手放さない)を徹底することです。そのためには、安易に飼える現実を変える必要があります。例えば、すべての飼養希望者に正しい知識を身に付けるための研修を行い、終了した人だけが犬や猫を飼えるようにすれば、それはひとつのハードルになります。研修費用を有料にすれば、保護猫・保護犬のために有効利用することもできるでしょう。

また、動物愛護団体等では、譲渡の門戸を広げることができるか譲渡条件を再検討してみることや、活動継続のため寄付だけに頼ることなく、活動資金を得られる方法を模索してみることも必要でしょう。

ブリーダーやペットショップなど販売業者のホームページ等には「動物たちの問題を解決し、社会的責任を果たす」という旨の言葉が多く並んでいます。しかし、行動が伴わなければ解決には至りません。動物愛護の精神が広がるなかで、犬や猫の行く末を考えない現在の販売方法は時代錯誤であり、改善するべき案件です。

記事に出てくるブリーダーのように、飼い主を選択し、サポートを続け、そして「最後の砦」として存在することができれば、安易に飼うことも手放すこともなくなります。改善の動きを見せる販売業者も少しずつ増えてきましたが、言葉どおりに問題を解決するための行動が望まれます。

今回の「ねこホーダイ」は、保護猫・保護犬の問題をどう解決していくか。それぞれの立場ごとに真剣に考え、行動するターニングポイントになったともいえるのではないでしょうか。