地域コミュニティによる動物飼育の推進を
一般社団法人ペットフード協会が2015年1月に取りまとめた全国犬猫飼育実態調査の結果報告書を見ると、これまでに指摘されてきたように、犬の飼育率の減少は止まらず、猫の飼育率は横ばいの傾向にある。この犬や猫の飼育率に影響を与える阻害要因としては、飼育が難しい集合住宅、飼育に要する費用、十分世話ができない等が挙がっている。これらの要因は、人々の日常生活の実態、すなわち現在の住宅事情や家族構成、少子高齢化で人口減少の社会を反映している。
しかし、集合住宅での飼育が問題であれば、入居条件の緩和やペット共生住宅の推進により、また飼い主が高齢で飼育が十分に飼育ができないのであれば、地域コミュニティによる飼育支援で対応できるのではないであろうか。人の高齢化問題と同様に、家庭飼育動物の高齢化も生じていることを含め、地域全体で考えることによって解決法があると思われる。
一方、同報告書によれば、動物の飼育を始めたきっかけは、生活に安らぎが得られること、以前飼育していた動物を亡くして新しい動物を迎えたこと、家族のコミュニケーションに役立つことを挙げている。動物飼育は、人々の生活に喜びや潤いを与えるものであることがうかがえる。これらの動物飼育の効果、とくに高齢者の健康管理や生きがい、健康寿命を延ばす上での効果を、社会にアピールし、動物飼育の認知向上運動に展開することが一案である。また、阻害要因に動物との別れがつらく、死亡した際の悲しみが挙げられている。人に比べて短命である動物との別れによる悲しみも、地域コミュニティの住民相互の支援協力システムで解決できるのではないか。
これらの解決法のヒントのひとつが同報告書にある。それは、存在したらいいと思う飼育サービスとして、外出時の飼育代行サービスや引き取り斡旋サービス等を挙げている。飼育代行サービスは、今日の少子高齢化の社会や独身者が増える社会において、飼育率向上に結びつける新しいビジネスモデルの可能性がある。また、これらのサービスと合わせ、ホームドクターである地域の動物病院が飼育動物の診療や健康指導とともに、高齢の飼い主の確認も合わせて行うことにある。いずれにしても、動物の飼育率減少の歯止めには、地域コミュニティによる進化的アプローチが必要である。
以上が同報告書を読んでの所感であるが、ペットビジネスは地域コミュニティと深くかかわっているので、地域社会の人々の生活実態と連携した動物飼育環境の整備・充実は、地域コミュニティの活性化にも期待できる。
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