【猫飼いTIPS】シニア期の糖尿病に注意しよう!
糖尿病は人では成人病としてよく聞く疾患ですが、じつは犬や猫にも起こりえる厄介な疾患です。血糖値が高くなったり、インスリンの注射を打ったり、人の糖尿病の症状や治療と似ているところがあります。発症する年齢も猫では5~6歳(人の40代ごろ)で、年齢が上がるにつれて増える傾向にあります。近年、糖尿病になる猫が増加傾向なので注意が必要です。今回は猫の糖尿病のお話です。
糖尿病ってどんな病気なの?
糖尿病は内分泌異常により発症します。血液中のブドウ糖がエネルギーとして利用されないまま持続して高くなる高血糖の状態が糖尿病です。通常は膵臓から分泌されるホルモンが血糖値の調節をしています。血液中のブドウ糖を肝臓や筋肉に取り込ませて血糖値を下げているのが、インスリンというホルモンです。しかし、このインスリンが膵臓でつくられなくなったり、インスリンの働きが鈍くなったりすると、血液中の血糖は増える一方となり高血糖になります。この状態が長く続くと、全身の細胞に必要なエネルギーを供給できなくなり、さまざまな臓器に障害が起こります。腎臓や目などの障害をはじめ、重度になると脱水や意識障害を引き起こし、命を落とすこともある恐ろしい疾患です。
猫が糖尿病になる原因は?
人では遺伝性糖尿病がありますが、猫の場合はまだ特定されていません。猫が糖尿病になる原因は下記のようなものがあります。
■肥満
肥満の猫は糖尿病にかかりやすい傾向にあります。肥満の場合はインスリンの効きが悪くなったり、インスリンをつくる膵臓が疲れて分泌量が不足してしまいます。そうなれば高血糖の状態が続き、糖尿病になるケースがあります。猫に多いのはこの「2型糖尿病」で、特に去勢した高年齢のオス猫が発症しやすいとされています。
■膵炎
近年、膵炎を発症する猫が多く、その炎症により膵炎の機能が低下してしまいます。膵臓の本来の機能が低下してインスリンがつくれなくなり、糖尿病を発症します。
■炎症・ステロイドの使用・ストレスなど
口内炎、皮膚炎、急性膵炎、胆管炎などの持続的な炎症、長期間にわたるステロイドの使用やストレスは、インスリンの効きが悪くなる状態を引き起こします。また、先端巨大症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌疾患、腫瘍なども糖尿病を引き起こす要因になることも知られています。そのほかにもストレス時には代謝が活発になることで血糖値が上昇します。猫の場合、長期間にわたるストレスは糖尿病のリスクを倍増させることになるので、注意が必要です。
■フード
肉食動物で知られる猫の主な栄養源はタンパク質です。人や犬は炭水化物も栄養源にできる雑食動物ですが、
それができない猫は、人や犬とは違った糖の代謝経路をもちます。そのため、炭水化物の過剰摂取は血糖値の上昇に繋がり、一度上昇すると下がりにくい傾向にあるので注意が必要です。また、脂肪を多く含む食事は肥満に繋がり、糖尿病を発症するリスクが高くなります。人の食事などを与えるのは絶対にやめましょう。
猫の糖尿病の症状は?
猫の場合、初期症状として見られるのが多飲多尿です。血中の余分な糖が尿中に出ていくときに、身体の水分を一緒に持って行ってしまうため脱水状態となります。喉が渇くため、水を飲む量が増えていきます。また、エネルギー源の血糖が細胞のなかに取り込めないため、栄養要求が上がり食欲増進が起こります。しかし、食べてもエネルギー不足が続くので、体重は減少していきます。
糖尿病が悪化すると、食欲の低下や元気喪失、下痢に嘔吐、ふらつきなどがでてきます。このような状態はかなり深刻で、重度の脱水や意識障害を引き起こす「ケトアシドーシス」という状態に陥っている場合があります。入院して集中的に治療を受けないと死に至るような状態です。
猫の糖尿病は初期段階では元気なので、飼い主が気付かない場合も多々あるようです。しかし、前述した特徴的な症状が比較的顕著に見られるので、日ごろから愛猫の健康チェックをしていれば早期発見は可能です。1日の飲み水や尿の量をある程度把握しておくことが大切です。
猫の糖尿病の治療法は?
まずは「インスリン注射」です。不足しているインスリンを外部から補充する治療法で、エネルギーの供給を助けることが目的となります。多くは1日に1~2回、注射器を使って皮下に打ちます。犬に多い1型糖尿病では、インスリンを分泌する膵臓が壊れているため、基本的にはこの治療を一生続けていくことになります。また、猫に多いとされている2型糖尿病では、機能低下した膵臓をインスリン注射で補助しながら、肥満など膵臓を疲れさせる要因を取り除けば、インスリン注射を止めることができます。しかし、実際には糖尿病が進行した状態で治療がスタートすることが多いため、一生続けるケースがほとんどです。
次に「食事管理」です。食後には高血糖のピークがくるので、栄養吸収の早い食事はインスリン注射だけでは血糖値のコントロールができない場合があります。血糖値の上昇をできるだけなだらかにするために、高たんぱく、低炭水化物、食物繊維が多い食事を用意します。肥満傾向にある猫の場合には、低脂肪の食事が適切です。糖尿病専用の猫の療養食もあるので、動物病院等で相談してみるとよいでしょう。
また、糖尿病を発病するのは高齢な猫が多いため、治療の妨げにならないように「ほかの病気の発見や治療」も大切な要素となります。もし、膵炎などの内分泌疾患や炎症性疾患を抱えていれば、インスリン注射をしても効果が得られないこともあります。ほかに疾患がある場合には、糖尿病と並行して治療をしていくことが必要です。
恐ろしい合併症
人の場合、「糖尿病の怖さは合併症にある」といわれています。猫も同じように合併症により命を落とすこともあり、充分な注意が必要です。猫の合併症としては下記のようなものが考えられます。
【糖尿病抹消神経障害】
糖尿病治療をしても効果がなく高血糖が続くと、徐々に足腰が弱ってきます。踵を地面につけて歩いたり、高所に登れなくなることもあります。悪化すると前脚も上手に動かせなくなります。猫の場合は糖尿病が進行しても、目や腎臓には問題は起こりにくく、この神経障害が顕著な合併症です。しかし、糖尿病を治療して血糖値を適正なレベルに安定させれば、その症状は治まります。
【低血糖】
糖尿病はインスリン注射をして血糖値を下げる治療をしますが、それが効きすぎて低血糖に陥る場合があります。重度の低血糖は、猫の体に麻痺が起こったり、急に力が抜けたようになりぐったりするため、ハチミツや糖シロップを与える必要があります。もし、改善されなければ動物病院へ行き、診察を受けましょう。
【糖尿病性ケトアシドーシス】
猫が糖尿病になると、糖の代わりに筋肉や脂肪を身体のエネルギーに変えようとします。肝臓からはケトン体と呼ばれる物質が分泌され、身体はアシドーシスと呼ばれる酸性の状態に陥ります。この状態をケトアシドーシスといいます。猫の身体にさまざまな異変を起こす原因となります。ケトアシドーシスになると嘔吐、悪心、食欲不振、重度の脱水、意識障害、血液循環不良などが見られ、最悪の場合はショック状態から命を落とすこともあります。
糖尿病は予防できるの?
猫の糖尿病の一番の予防法は、「肥満にさせない」ことです。食べすぎや運動不足など、肥満は糖尿病の原因のひとつです。適正体重を維持することが大切です。愛猫が太っているかどうか判断できない場合には「BCS(ボディコンディションスコア)」で判断することをオススメします。肥満の場合にはまずは食事やおやつの見直しをしていきましょう。
まとめ
糖尿病になると、愛猫にも飼い主にも大きな負担がかかります。日ごろから肥満にならないように留意し、予防することが大切です。愛猫が肥満傾向にある場合には、糖尿病の可能性も含め健康診断を受けることをオススメします。早期発見はとても重要です。そのうえで食事を見直しながら、糖尿病のリスクを低下させましょう。
コメントを送信