【犬飼いTIPS】犬のPCR(パネル)検査をご存じですか?
新型コロナウイルスが世界的に広がっているなか、PCR検査という言葉を毎日のように耳にしていると思います。PCR検査とは遺伝子検査の技術を使って、原因になりうる細菌やウイルスを高感度で検出することができる手法で、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の頭文字をとってPCRとされています。じつは、このPCR検査は獣医療にも取り入れられていて、より確実な診断をするために有効な検査なのです。今回は感染症に関する主なPCR検査を紹介します。
犬下痢パネルとは?
下痢は犬でもよく見られる疾患です。散歩などで外出することの多い犬は、いろいろな細菌やウイルスを拾いやすく、それが原因で下痢になることが多いのです。動物病院に行くと、まず便検査をして虫卵や寄生虫を見つける方法が多いのですが、それ以上の検査をすることは少なく、広域スペクトルの駆虫薬や抗生物質で治療することが一般的です。
もし、投薬しても改善が見られない場合には、感染性の原因は可能性が低いと考えられて、療養食や対症療法が行われたりします。しかし、便検査での見逃しや病原体の特定に限界があるため、確定診断には至らないことも多く、長引くこともあります。そうなれば、犬の健康にも大きな負担がかかるだけでなく、効果が得られないままに治療費がかさみ、飼い主の負担や不満も増してしまうことでしょう。
犬の下痢に対するPCR検査は、「犬下痢パネル」と呼ばれています。遺伝子検査の技術で、下痢の原因になりうる細菌やウイルスをより確実に調べることができます。下痢をしたのでと病院に行ってすぐに行う検査ではありませんが、長期化している場合、感染症の有無について調べるのに有効です。その結果により、何かが見つかれば確実な治療ができることになります。何も見つからなくても感染症ではないことがわかるので、治療の幅を狭めることができます。もし、獣医師からの提案がないようなら、ある程度の段階で飼い主からお願いしてみるとよいでしょう。愛犬にとっても、飼い主にとってもよい選択になるはずです。ただ、結果はすぐに出るわけではなく、数日かかります。また、費用も1万~1万5000円程度かかる動物病院が多いようです。
犬下痢パネルで検査できる病原体
この検査では、下記の9種類の病原体の有無を調べることができます。ただ、その解釈については犬の種類、性別、年齢、病歴、ワクチン歴、そのほかの臨床検査データなどを考慮する必要があるので、病原体が見つかっても必ずしもそれが下痢の原因であるとは限らないようです。犬下痢パネルは+と-で結果が出ます。結果は飼い主にもわかりやすいのですが、診断やその後の治療については、獣医師の指示に従いましょう。
●犬腸管コロナウイルス(CECoV)
●犬ジステンバーウイルス(CDV)
●犬パルボウイルス2(CPV2)
●クロストリジウム・パーフリンゲンス・エンテロトキシンA(Clostridium perfringens enterotoxinA)
●ジアルジア(Giardia sp.)
●クリプトスポリジウム(Cryptosporidium sp.)
●サルモネラ(Salmonella sp.)
●カンピロバクタ―・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)
●カンピロバクタ―・コリ(Campylobacter coli)
※犬腸管コロナウイルス(CECoV)は流行している新型コロナウイルスとはタイプが違います。
犬呼吸器疾患パネルとは?
犬に鼻水、くしゃみ、咳、目やになどの症状が見られた場合、呼吸器感染症と診断されます。動物病院に行くと、まず熱を測ることが多いのですが、熱の有無や症状の重症度により、抗生物質、消炎剤等で治療することが一般的です。もし、それらの治療で改善が見られず長期化する場合には、適切な治療を決定するために、どの病原体が関与しているかを明らかにすることが必要となります。
そのような犬の呼吸器感染症の原因になる病原体を調べるPCR検査は「犬呼吸器疾患パネル」と呼ばれています。遺伝子の技術で確実に調べることができます。病院に行ってすぐに行う検査ではありませんが、長期化している場合、どの病原体が関与しているかを調べるのに有効です。これは12種類の病原体を一度に検査することができます。犬の呼吸器疾患は、そのいずれかまたは複数の感染により起こるので、その結果により、確実で有効的な治療ができることになります。もし、獣医師からの提案がないようなら、ある程度の段階で飼い主からお願いしてみるとよいでしょう。愛犬にとっても、飼い主にとってもよい選択になるはずです。ただ、結果はすぐに出るわけではなく、数日かかります。また、費用も1万~1万5000円程度かかる動物病院が多いようです。
犬呼吸器疾患パネルでわかる病原体
この検査では、下記の12種類の病原体の有無を調べることができます。ただし、病原体を活発に排出していない場合には、検出できないこともあります。その場合には期間をあけて、再度の検査が必要でしょう。
●気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)
●犬パラインフルエンザウイルス3型(CPIV-3)
●犬アデノウイルス2型(CAV-2)
●犬ジステンバーウイルス(CDV)
●犬呼吸器コロナウイルス(CRCoV)
●犬ヘルペスウイルス(CHV)
●H3N8インフルエンザウイルス(CIV)
●H1N1インフルエンザウイルス
●H3N2犬インフルエンザウイルス
●犬肺炎ウイルス(CnPnV)
●マイコプラズマ・シノス(Mycoplasma cynos)
●ストレプトコッカス・エクイ・スピーシーズ・ズーエピデミクス(Streptococcus equi ssp.zooepidemicus)
※犬呼吸器コロナウイルス(CRCoV)は流行している新型コロナウイルスとはタイプが違います。
まとめ
最近では動物病院のホームページなどを見ると、このPCR検査を「感染症遺伝子検査」と紹介しているところも増えてきました。また、遺伝子検査を専門とする会社でも検査が可能なところがあります。愛犬に長期化している症状がある場合には、獣医師に相談しながら積極的にPCR検査を受けることをオススメします。愛犬の健康のためにも有効的だと思います。
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