「ボーっと食わせてんじゃねーよ!」 チコちゃんに叱られるべきなのは?
大人気のテレビ番組「チコちゃんに叱られる」は、チコちゃんのキャラクターとNHKらしくない番組づくりで絶好調です。私も毎回楽しみにしています。
4月12日放送の回では、「なぜ猫は魚が好き?」という問題が出されました。解答は、「日本人が魚好きだから」という、この番組らしい“風が吹くと桶屋がもうかる”的な、題目と直接結びつかないようなものでした。
まず、ねこの博物館の館長・今泉 忠明さんが登場し、猫は本来肉食であるという前提を示します。ライオンやトラと同じネコ科の動物ですから、異論なく納得できるものです。
番組を紹介するために書いていないので、駆け足になりますが、猫は奈良時代に中国から伝来した → 日本人は仏教の影響で、ほとんどの人に肉食の習慣がなく、動物性タンパク質は主に魚から摂っていた → 動物性タンパク質を必要とする猫に与えるものは、必然的に魚になった、という流れで、解答である「日本人が魚好きだから」に着地します。
日本人が魚好きだからというより、ほとんどの日本人にとっては動物性タンパク質源は魚しかなかったのです。そして、猫にも与えていたわけです。番組中でも流れていましたが、サザエさんの歌の影響では決してなく、この歌も長年にわたった日本人と猫の付き合いを自然に歌詞に採り入れたといえます。
今泉さんは、猫が魚を好むというのは日本特有の現象だといいます。また、猫は乳離れして12週間以内に食べたもので嗜好が決まるそうです。その間に魚を与えていれば、魚を好む猫になるということだと思います。
番組では他国の例として、ゆでたトウモロコシをかじるメキシコの猫、チーズを食べるスイスの猫、パスタをすするイタリアの猫が登場しました。ベタな演出だと、出演者もツッコミを入れていました。
私はこの番組が大好きですが、この他国の例には感心できませんでした。猫に与えていたものが、猫の健康に適した食物だとは思えないからです。トマトソースのパスタをすする猫は、たしかにテレビの画的にはウケます。NHKではなくYouTubeそのものを見ているかのようでした。
しかし、パスタは小麦が原料で、成分の多くは炭水化物です。肉食の猫は、炭水化物をあまり必要としません。また、人間にとってちょうどいい塩加減は、猫にとっては塩分過多で、腎臓を悪くします。健康志向のフードの原料を見ても、炭水化物の含有量は少ないし、塩味はほとんどしません。
その炭水化物のかたまりであるパスタを猫に食べさせている飼い主、喜んで食べている猫を見たら、この猫の健康状態はいいのだろうか、今後長生きするんだろうかと思ってしまいました。
「ねこまんま」と称して、ご飯に味噌汁をかけたものがありますが、読者のみなさんはこんなものを愛猫に与えていないと思います。ほとんど炭水化物だし、猫には塩分過多だし、猫にはタブーのネギが入っていることもあります。
出演者の足立 梨花さんは、変な解答をしてチコちゃんに叱られました。しかし私は、チコちゃんが叱るべきなのは、パスタに嗜好をもつ猫に育ててしまった飼い主だと思いました。「ボーっと猫にパスタ食わせてんじゃねーよ!」
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