熊本地震から人とペットの共生の問題点と解決策を探る

熊本地震が去る4月14日に発生した。尊い生命を失われた人々とペットたちに哀悼の意を捧げたい。また、熊本や大分を含めて被災した人々に心からお見舞い申し上げる。今回のこのコーナーでは、前回に引き続き、「2015年全国犬猫飼育実態調査」の結果の第2弾をご紹介する予定であったが、被災時における人とペットの共生について考えてみたい。

熊本の現状について

毎日のようにテレビや新聞、インターネットなどで報道されるように、被災者は非常に不自由な生活を強いられている。熊本市は、2014年にペットの尊い命が失われる数(殺処分)をゼロにした「動物愛護都市」でもあるが、ペット連れの被災者は、避難所からも敬遠されているような状況で心が痛む。以下、主な項目をピックアップして述べてみたい。

緊急支援物資と支援活動について

現在、各業界団体並びに愛護関係のみなさま、ペット災害対策推進協会などで、さまざまな緊急支援物資の提供が行われている。ペットフード協会では、過去の震災同様、会員各社の協力の下、ペットフードなどの支援が行われているところである。

阪神・淡路大震災から20年、東日本大震災から5年が経った。今までも、日本獣医師会、各獣医師会をはじめ、それぞれの分野で関係者やボランティアの方々のご尽力により、ペットへの支援と同時に多くのペットの命を救ってきた。ペット専門店の場合を例にあげると、東日本大震災では、ペット専門店コジマがいち早く現地入りして、被災ペットの支援を行った。今回の熊本では、熊本にも店舗を有するイオンペットが15日には現地入りして、フードやトイレタリー用品の供給支援を行い、獣医師もひとり駐在させ、健康状態のチェックを行っている。

マイクロチップの装着について

支援を行う際にいつも考えるのは、各市町村でペットの戸籍や登録、マイクロチップの装着がなされていたら、ペットの種類や年齢、健康状態などに応じて必要な支援物資がほぼ特定され、効率のよい支援がなされるように思う。これは、支援を受ける側も支援する側も、両方に取って大きなメリットといえるだろう。

ご存知のように、人間にはマイナンバー制度が導入された。例えば、動物たちにも「命を守るマイナンバー」のような分かりやすいネーミングを用いて、マイクロチップの普及拡大につなげ、不幸な動物たちを減らすとともに、尊い命を守ることにつながればと願っている。

同行避難について

環境省は2013年6月に「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を公表した。震災などが発生した場合は、原則的に、同行避難を奨励しているが、運用については、各自治体に任されている。そうしたことから、今回の熊本地震でもペットの同行避難を拒否しているところが見受けられる。ペットから人への感染症の予防や衛生面、並びに動物アレルギーの人たちへの配慮とみられる。避難所に関しても、「人用」「人とペット用」「ペット用」の3分野で考える必要がある。ニュージーランドでは、震災の教訓から同行避難が法律で定められている。同行避難をしない場合には罰金が課される国もある。

「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」は環境省のサイトからダウンロードできます

熊本市の「龍之介動物病院」では、3階と4階を人とペットの同行避難所として開放し、ペットたちの健康状態を診ると同時にフードや用品などを一週間分備蓄して、支援している。

徳田龍之介院長の想いには、頭が下がると同時に、同行避難の素晴らしいモデルケースとして、業界としても支援をしていかねばならない。人とペットの同行避難を推進することにつながるという意味で、勉強になるケースである。

今やペットは飼い主にとってかけがいのない家族の一員である。

団体の連携について

ペット災害対策推進協会のように数団体並びに関係者から構成されるところもあるが、ほかにもさまざまな団体や組織がそれぞれの想いで支援活動を行っている。

私はこれまでの経験から、緊急時にはオールジャパン体制で支援をする組織、システムづくり、連携が必要だと考えている。近年、震災が連続して起こっていることを考えると、早急に震災対策の組織づくりが不可欠だと思う。環境省が音頭を取り、オールジャパン緊急支援体制づくりを構築していくべきだと思う。

この場合、被災地でない自治体による、人、人とペット、およびペットの受け入れも同時に考えていく必要がある。

支援金について

過去の震災でも数億円という善意のお金が集まったことは、みなさまもご存じだと思う。

これらの貴重な善意のお金を授受した団体および機関は、どのように貴重なお金を使わせていただくか、震災時を想定して普段から考えておく必要がある。また、支援していただいたみなさまに透明性を持って、使用実績の報告していくことも必要であるように思う。

募金が集まる団体もそれぞれ一番よい方法で支援しているものと信じているが、時には公に報告がないために疑いの目で見られる場合があるのは残念である。私の海外のビジネスパートナーから、最近100万円の寄付をしたいとありがたい申し出があった。人種を超えて、熊本地震の被災者とペットを助けたいという想いであり、心から感謝したいとともに貴重なお金を有効に活用させていただくとメールで返信した。持つべきものは国内外を問わず友人である。

人とペットの関係について

ペットの支援を考える場合、ややもするとペットの支援に目が行きがちだが、人とペットとの関係は切り離せない。

避難所や車内で不自由な生活を過ごしている被災者の方々の健康状態は極限に来ているようにも思われる。飼い主が健康でなければ、愛するペットのケアもできなくなる。その意味で、人とペットを同時にケアする制度づくりも大切だとつくづく感じている毎日である。今は、考えているより、いかに手を差し伸べるかが重要だ。