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インプルーブメント(改善)からプリベンション(予防)へシフトする腸内細菌

[2024/09/26 6:00 am | 獣医学博士 川野浩志]

腸内細菌の研究が進み、どうやら多くの病気と腸内細菌の乱れと関係することがわかってきました。例えば、ある病気になるとある腸内細菌が増えるし、ある腸内細菌が減っちゃう。

つまり、病気になる前の段階で腸内細菌の乱れを確認し、早期に改善することができれば、より健康な時間を延ばすことができるということ。まさに「インプルーブメント(改善)」から「プリベンション(予防)」へとつながるのです。

そのためには、腸管内にさまざまなタイプの細菌を抱えていることが、体調を整えるうえで重要で、大きな可能性になります。食べたものは24時間以内に腸内細菌に作用するからこそ、「何を食べて何を避けるか?」が重要な選択になるわけです。脳は簡単に騙されますが、腸は嘘をつきません。

家の観葉植物をアマゾンのジャングルに放り投げても育たないように、口から乳酸菌を取り入れても腸管内に定着しません。だからこそ、腸内に住むことを許された選ばれし細菌たちを育てることが重要なのです。もし、細菌たちに食物繊維を与えないと、“あなた(粘膜)”を食べ始めます。

仮に食事から「何か」を抜くと、そのエサを待ち構えていた腸内細菌は間違いなく激減します。大腸に住んでいる腸内細菌たちを喜ばせるためには、大腸の前半に住んでいる細菌にも、大腸の後半に住んでいる細菌にもエサを届ける必要があるのです。

つまり、水溶性食物繊維は大腸の前半から中盤あたりの細菌のエサになり、不溶性食物繊維やレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)は大腸の後半に住む細菌のエサになります。

“短すぎるプレバイオティクス(砂糖やブドウ糖)”はヒトが小腸で奪い去るので、細菌たちが食べることができません。そこで、大腸の前半に住む細菌たちには“短すぎるプレバイオティクス(オリゴ糖)”をプレゼントし、大腸の後半に住んでいる細菌たちには“長いプレバイオティクス(食物繊維)”をプレゼントすれば、不平不満の声は聞こえてこないでしょう。

最強のプレバイオティクスの組み合わせは、オリゴ糖と食物繊維です。医学界と獣医学界に革命をもたらす頼もしい腸内細菌叢。かっぱえびせんは「やめられない」し遺伝子も変えられませんが、腸内細菌の割合は変えられるのです。

野菜や果物、ナッツ類や豆類にはポテトチップスのように中毒性はないが、腸内細菌はきっと感謝してくれるはず。さあ、腸内細菌を治療の仲間に入れて味方につけましょう!

[獣医学博士 川野浩志]