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なぜ肉食動物のジャイアントパンダが竹を食べることができるのか

[2023/12/18 6:01 am | 獣医学博士 川野浩志]

ジャイアントパンダは、食肉目クマ科に分類されるれっきとした肉食動物。草食動物が植物繊維を分解できる長い腸を持つのに対して、パンダの腸は肉食動物の腸と同じように比較的短いのが特徴。

しかし、パンダの食性は草食で主に竹やササなどの植物を食べています。パンダはセルロース(植物繊維)を分解する酵素(セルラーゼ)を持っていないのに、問題はないのかと不思議になるかもしれません。

じつは、パンダの腸管内に秘密があります。彼らの腸管にはセルロースやリグニン(クマ笹)を分解する腸内細菌がいて、その細菌が竹やササを分解してくれるので食べることができるということ。

ウシやヒツジなどの反芻動物では、消化管(第1胃)に共生している原虫などの微生物が持つ酵素でエサの牧草を分解して栄養分としています。

シロアリは木片を食べるが、シロアリ自身は木片を消化できない。腸管内に住んでいる原虫が、木片のセルロースを酵素的に消化可能な糖にまで分解してくれるから生きていられるわけです。

ミールワーム(ゴミムシダマシという甲虫の幼虫)が発泡スチロール(ポリスチレン)を栄養分としてるが、それは、ミールワームの腸内に住むポリスチレン分解菌(エグジゴバクテリウム)のおかげ。

筆者が自分で分解できない野菜を食べられるのは、腸管内に繊維分解菌やデンプン分解菌がいるおかげということ。

[獣医学博士 川野浩志]