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ペットにだし汁は有効?

[2023/10/16 6:00 am | 獣医学博士 川野浩志]

和食に含まれる主なうま味成分は、以下の3つです。

①昆布に含まれる「グルタミン酸」
②鰹節や煮干しに含まれる「イノシン酸」
③椎茸に含まれる「グアニル酸」


ちなみに五原味(ごげんみ)とは、基本的な味のことで、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5つがあります。人は、甘味はエネルギー源、塩味はミネラル分、うま味はタンパク質と生理的に認識して、好んでこれらの味がするものを食べるというけど、犬や猫はどうか言葉があれば聞いてみたいところです。

最近の研究では、うま味が消化・吸収・代謝などの調節に関与することがわかってきました。グルタミン酸の情報は、LINEでメッセージをサクッと送信するように、胃や腸からのメッセージが迷走神経を介して脳へ指令が飛び、消化・吸収・代謝をコントロールするというのです。

さらに、グルタミン酸は消化機能に作用して胃酸の分泌を増やしたり、十二指腸液の分泌を増やして粘膜層を厚くすることで防御機能を高めるという報告もされています。

発達障害のラットにうま味物質であるグルタミン酸ナトリウムを与えると、攻撃行動がめっちゃ減ったという研究もありますし、離乳後から成熟期までのうま味成分の摂取によって腹部迷走神経を介し脳へ作用し、社会性行動が変化する(攻撃性の減少)ことも示されてました。

ある研究では、ドッグフードにうま味調味料(グルタミン酸とイノシン酸の複合調味料)を添加すると、胃や十二指腸、回腸の運動が増え、胃液の分泌量が高まり、胃でのタンパク質の消化が促進することがわかりました。さらに、グルタミン酸ナトリウムを添加すると、神経を介して胃の外分泌(胃酸/ペプシン/胃液)が増えて、膵液分泌も増えることもわかっています。

食欲のない犬や猫には昆布の出汁をフードにかけてあげると、消化だけでなく嗜好性も上がり喜んでくれるかもしれないですね。

[獣医学博士 川野浩志]