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腸内細菌は放射線によるダメージからも体を守ってくれる

[2021/09/07 6:01 am | 獣医学博士 川野浩志]

2020年10月に、世界で特に権威のある学術雑誌のひとつである「Science」に、ノースカロライナ大学の研究者らによる論文「Multi-omics analyses of radiation survivors identify radioprotective microbes and metabolites が掲載されました。

この研究は、放射線障害と腸内細菌の関係を調べたもので、高線量放射線被ばくさせたあと正常な寿命(30日間)を全うしたマウスの腸内細菌に着目したものです。

簡単に説明すると、マウスに強い放射線(高線量放射線)をあてると、ほとんどのマウスは死んでしまいますが、なぜか10頭に1頭のマウスは生き残るようなのです。もしかして生き残ったマウスの腸内細菌叢がスゴイからじゃないの? という仮説を立て、生き残ったマウスのうんちをほかのマウスに食べさせてみたら、そのマウスは放射線をあてられてもグッと耐えられたことがわかったというものです。

そして、どの菌が作用したのか分析したところ、クロストリジウム目(Clostridiales)に属するラクノスピラ科(Lachnospiraceae)がもっとも多く、さらにエンテロコッカス科(Enterococcaceae)も優位に増加したことがわかりました。クロストリジウム目は、免疫抑制に必須の細胞である「制御性T細胞」の産生を強力に誘導することが明らかになっています。

さらに、どうしてこんな結果になったのか解析したら、放射線をガツンと浴びると活性酸素が血液の赤ちゃん細胞を攻撃するため死んでしまいますが、お腹のなかにラクノスピラやエンテロコッカスという菌がたっぷりいると、赤ちゃん細菌が攻撃から防御されるとか。

これはマウスだけではなくヒトでも同様のことがいえるそうで、腸内細菌が、がんの放射線治療によって引き起こされた損傷(胃腸障害が多い)を軽減させる可能性があるそうです。

やはり大切なことは、
① 腸内細菌はマジで大切だよ
②活性酸素から身を守ることが大切だよ(サビをとる)
ってことです。

[獣医学博士 川野浩志]