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犬や猫のアトピー治療戦略~前半

[2021/08/10 6:01 am | 獣医学博士 川野浩志]

アトピーだとどうして痒くなるのか? を知っておくことは、治療にも直結するので非常に大切です。しかし、医学書を読むと難しい言葉が連発して理解できないし、Google先生に聞いても薄っぺらくて理解が深まらないというジレンマがあります。

そこで、今回はアトピーだとなぜ痒くなるのか? という疑問に対してサッカー少年なったつもりでわかりやすく噛み砕いて説明します。

アトピーの主犯格は「Th2」細胞です! いきなり難しい言葉が登場して興味がなくなりそうですが、とにかく「Th2」という細胞がいて、その細胞が起点となって痒みの物質が出るがゆえにアトピーだと痒くなります。繰り返します。アトピーの主犯格は「Th2」細胞です。

少し医学的に解説すると、主犯格のTh2細胞が犬の痒みの原因である「インターロイキン-31(IL-31)」という物質を出します。そうすると犬はカイカイになります。逆にいえば、犬にIL-31を注射するとカイカイになることがわかっています。犬が鋭い爪で皮膚をガリガリすると皮膚が傷つきます。皮膚が傷つくと、さらにTh2細胞がインターロイキン-31をバンバン出すので、さらにカイカイになります。このサイクルをヘビーローテーションします。 

犬のアトピーをサッカーの試合に例えると、Th2細胞が試合をコントロールする司令塔(ボランチ)で、IL-31がゴールを決めるエースストライカーといったところでしょうか。つまり、アトピーは司令塔からのパスを受けたエースストライカーがゴール(痒み)をバシバシ決めるようなイメージです。

じゃあ、どうやって痒みを止めるの? となりますが、エースストライカーがシュートを打てないようにピンポイントで潰したり、司令塔やエースストライカーも含めた全員を徹底的にマークするタフな選手(クスリ)を使うことになります。

後半では、できるだけ薬物を使わずに犬や猫のアトピーと戦う治療戦略について解説します。

[獣医学博士 川野浩志]