歯周病は歯垢内に住んでる細菌によって始まり、口腔内細菌が増加し、バイオフィルムという防空壕をつくって敵からの攻撃に備えるようになり、最終的には歯が抜け落ちてなくなります。
人間の歯周病に関連した細菌のなかでも「レッドコンプレックス(3菌種)」と呼ばれるプロフィロモナス・ジンジバーリス、タネレラ・フォーサイセンシス、トレポネーマ・デンティコーラは、歯周病に深く関与しており、特にプロフィロモナス・ジンジバーリスは、重篤な歯周病の原因となることで知られています。ちなみに、犬や猫の口腔内からは、プロフィロモナス・グラエ菌がよく検出されます。
これらの人間の歯周病で原因となっている菌が、歯周病になってしまった犬や猫の歯肉からも検出されていることから、犬や猫の歯周病にも関わっていると考えられています。その証拠に、家庭で飼育される犬の51%、猫の23%でジンジバリス菌が検出されたという研究もあります。
さらに、大阪大学のチームが人間の歯周病菌が犬にうつるのではないかという仮説を証明しています。犬(66頭)とその飼い主(81人)の歯周菌DNAをPCR検査で調べると、犬の口のなかから検出されたのは、人間の歯周病菌であるプロフィロモナス・ジンジバリスが71.2%、タネレラ・フォーサイセンシスが77.3%、カンピロバクター・レクタスが66.7%と高い頻度で検出されました。
プロフィロモナス・ジンジバリスとタネレラ・フォーサイセンシスは、歯周病菌の中でもっとも病原性が強いといわれている「レッドコンプレックス」のなかの2菌種です。
そして、犬のプラーク中には、人間における主要な歯周病原性細菌10菌種のうちの9菌種が存在しました。さらに、犬とその飼い主の間の接触が多いと、犬と飼い主の両方からエイケネラ・コローデンスとトレポネーマ・デンティコーラが検出される傾向にあることがわかりました。
つまり、歯周病菌のなかには、人間から犬あるいは犬から人間へ移動している可能性があるのです。だから、どんなにかわいくてもキス以外の愛情表現でよろしくお願い申し上げます。