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犬と猫の腸内フローラの主役はヒトと同じか?

[2021/06/08 6:01 am | 獣医学博士 川野浩志]

人間の赤ちゃんは、母親の胎内で基本的に無菌の状態で過ごします。ですので、生まれて初めてするうんちには細菌がいません。しかし、赤ちゃんは産道を通過するときに母親から菌を受け継ぎ、生まれて数時間のうちには腸内に細菌が定着を始めます。

その後、「ビフィズス菌(Bifidobacterium)」が増殖します。大人になるとビフィズス菌に加え、日和見菌の「バクテロイデテス(Bacteroides)」、「ユウバクテリウム(Eubacterium)」などの菌が増加し安定していきます。やがて加齢とともにビフィズス菌が減少し、悪玉菌の「ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)」や「大腸菌(有毒株)」などが増えていきます。

犬も加齢に伴って、腸内フローラの変化(老化)が認めらています。人間ではビフィズス菌が主役であり、加齢に伴ってその数が減少することが知られています。犬の場合、主役は「乳酸桿菌(Lactobacillaceae)」で、人間と同じように加齢に伴って減少します。主役である乳酸桿菌のなかでも、「ラクトバチルス・ ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)」という菌種は、離乳前の子犬にのみ多くみられます。

一方、猫でも加齢に伴う腸内フローラの変化(老化)はありますが、人間や犬とは違います。具体的には、猫の腸内フローラにはどの年齢ステージにおいても、バクテロイデテスやユウバクテリウムが多い一方で、「腸球菌(Enterococcus)」が主役です。高齢になると、腸球菌は減り、腸炎の原因となる「クロストリジウム(Clostridium)」が増えます。

ざっくりまとめると、犬の腸内フローラでは乳酸桿菌が主役で、猫の腸内フローラでは腸球菌が主役である可能性が高いいうこと。そして、加齢に伴ってその数が減少します。だからこそ、加齢とともに“菌活”が必要なんです。

[獣医学博士 川野浩志]