ロイヤルカナンが、メディアセミナーを開催

[2017/10/16 6:01 am | 編集部]

プレミアムペットフードおよびペット療法食メーカーのロイヤルカナンが、メディア向けセミナーを10月3日に開催しました。「プロが薦める美しい毛艶のためのペットフード選び」と題して、ペットの毛並みは健康のバロメーターということで、ユーザーであるCFA Japan リージョナル・ディレクターの小泉かよ子氏と、ロイヤルカナンの原田洋志氏がそれぞれの立場から講演を行いました。

まず冒頭に、ロイヤルカナン ジャポン社長の山本俊之氏が挨拶にたちました。ロイヤルカナンは、1968年の創業から約50年にわたり“ドッグ&キャットファースト”という価値観のもと、犬種、猫種、ライフステージ・サイクル、さらに病気などによって異なる栄養ニーズを満たす製品をきめ細かく提供する、というミッションのもとビジネスを展開してきました。

ロイヤルカナン ジャポン社長の山本俊之氏

製品ラインアップをきめ細かくすることで、個々の犬や猫の栄養状態をもっともよい状態にするのだそうです。たとえば、うんちの量や質が変わってくる。さらに皮膚の健康がもたらされ、毛ぶきや毛艶が変わってくるとのこと。このように「真の健康状態をもたらすように、こだわってフードづくりをし、それは今後も変わらず継続していく」と強調しました。

続いて、CFAのリージョナル・ディレクターで、ブリーダーでもある小泉かよ子氏が「ペットの毛並みは健康のバロメーター 美しい毛並みを育むプロが勧めるフード選び」と題して、キャットショーにおける猫種のスタンダードやジャッジ(審査)、さらには家庭でのお手入れの方法などを説明しました。

CFA Japan リージョナル・ディレクターの小泉かよ子氏

キャットショーは、国内では様々な団体が開催しています。しかしながら、猫たちが世界共通のスタンダードで評価され、順位付けされているのは、世界的な団体であるCFA(※1)とTICA(※2)に所属するキャットクラブが開催するキャットショーだけになります。ショーでは、ジャッジと呼ばれる審査員がスタンダードに沿って出陳された猫を審査していきます。その基準は猫種ごとに異なりますが、被毛(コート)の状態は重要な要素だといいます。たとえば、ダブルコートの長毛種であるメインクーンは、小泉氏のブリードするエキゾチックショートヘアよりも、被毛の占めるポイントが高いそうです。
※1 CFA(The Cat Fanciers’Association, INC)は、アメリカ、カナダ、南米、ヨーロッパ、アジア(日本含む)、ロシアなどに約600の所属クラブを持つ世界最大の愛猫協会として活動する非営利団体です。
※2 TICA(The International Cat Association)は、純血種および家庭猫(ハウスホールドペットキャット)の世界最大の血統登録機関であり、キャットショーの公認機関としても世界最大の団体の一つです。

そして、被毛の美しさは見た目だけでなく、健康のバロメータにもなるとのことで、飼育するうえでも注意が必要とのことです。猫も人間と一緒で、体調が崩れると被毛が油ぎったり、バサバサになったりします。では、被毛を健康に保つにはどうしたらよいのでしょうか。小泉氏によると「内と外の両面から考えること」だといいます。

内からとはペットフード。カロリーが若干高めのものがよいそうです。そうしたフードを与えることで毛に艶が出てきて、毛の復活も早いとのこと。60~70%はペットフードで決まるとのことです。

言い換えれば、健康でなければ美しい被毛を保つことはできないということです。もちろん、被毛だけでなく、筋肉がつくことで引き締まった体格の維持にも繋がります。ご自宅では、「フューラインブリードニュートリション」のほか、ブリーダー専用のショーキャット用フード「ロイヤルカナン プロフェリノテクニック ヘルスニュートリション ショーパフォーマンス ビューティキャット(※3)」を使っているとのことで、お腹をこわすこともなくったと喜んでいました。
※3 行政に動物取扱業の登録をされている方が購入可能な製品

外からとは「洗う」こと。定期的にシャンプーすることで毛穴に汚れがたまらず、皮膚を清潔にできます。すると新陳代謝がよくなり、ムダな毛が抜けて新しい毛が増えてくるそうです。そして、コミュニケーションの一環として日々ブラッシングしてあげることが大切なのだとか。

「良質なフードを与え、日ごろから肌と被毛のお手入れをする」これがいつまでも健康で美しい被毛を保つコツなんだそうです。

実際に、健康な被毛状態の猫と、状態が悪い(毛が抜けてしまった)猫を比較して説明してくれました。

換毛期で背中の毛の状態が悪いエキゾチックショートヘア

また、44年にわたるブリード経験からのエピソードも興味深いものでした。ブリードを始めたころは粗悪なペットフードしなかったので、鶏肉や牛肉を缶詰めなどに混ぜて与えていたとのこと。これがけっこうな手間だったようです。その後、20年ほど前からロイヤルカナンのペットフードを使い始めました。当初はドライフードに肉を混ぜて与えていたようですが、だんだんと肉を食べなくなり、ドライフードだけを食べるようになったとのこと。それとともに、猫の状態もよくなったこともあり、ドライフードはどんどん進化しているのだと実感したそうです。

続いて、獣医師でもあるロイヤルカナンの原田洋志氏が、ペットの健康を実現するロイヤルカナンのペットフードづくりについて講演しました。

ロイヤルカナン ジャポン サイエンティフィックコミュニケーションマネージャーの原田洋志氏

まず、小泉氏の話を受けて換毛期についての説明がありました。ペットには換毛期があり、春と秋にそれぞれ4~6週間をかけて生え換わります。換毛のきっかけは気温ではなく日照時間なのだそうです。ただし、室内飼育の場合は日照時間の変化がわからないため、1年中毛が抜けたり生えたりすることが多いようです。

換毛のしくみは、毛包の活動が関係しています。毛包には「成長期」「退行期」「休止期」という3つの活動があります。「成長期」には毛が伸び、「退行期」には成長が止まり、「休止期」になると毛が抜けるというサイクルを繰り返します。ただし、ヨーキーやプードルなど、ほとんどが「成長期」にあって毛が伸び続け、「休止期」に入ることがないため、抜け毛がないという犬種もあります。

また、毛は、犬や猫も人間と同様に1日で0.3mmほど伸びます。5~6kgの犬や猫では約100~150万本の毛が生えているといわれているので、長さにすると毎日300~450mの毛が伸びているということになります。

毛包の活動イメージ

続いて皮膚について。皮膚は大きくわけて3層構造になっており、1番上の層が「表皮」、その下の層が「真皮」、さらに下の層が「皮下組織」となっています。

表皮は上から「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4層で構成されています。「角質層」がバリアとなることで、皮膚の健康を維持してくれます。そして、バリア機能は、表皮がターンオーバー(新陳代謝)することで維持されます。ターンオーバーとは、一番下の層が細胞分裂し、新しくできた細胞に押し上げられた古い細胞が、カタチや役割を変え少しずつ表面に近づき、最終的に角質層になってバリアとなり、剥がれていくのです。この一連の代謝が犬や猫で約21日だそうです。体重に占める皮膚の割合は、人間の成人が8%程度に対して、猫や小型犬は20%で、中・大型犬は約10~15%と大きな組織といえます。

表皮のターンオーバーのイメージ

このように、皮膚や被毛を維持するためには、たくさんの栄養が必要だということが分かります。小型犬や猫は、摂取したタンパク質の約30%が使われるそうです。人間でいうと1日3回の食事のうち1回分が、皮膚や被毛の維持に使われることになります。具体的にいうと、今日の1回分の食事が約1カ月後の皮膚をつくるということです。なので、食生活の乱れは1カ月後に表面化するということになります。

皮膚・被毛に必要な栄養素はたくさんあります。皮膚のターンオーバーに関わる栄養素は、タンパク質、ビタミンA、銅、亜鉛。皮脂の分泌の調整にはビタミンA。バリア機能を維持するには、脂肪酸、ビタミンB群、ビタミンA、ビオチン(ビタミンH)。炎症の調節を行っているのがオメガ6脂肪酸、オメガ3脂肪酸です。さらに被毛の成長のためには、メチオン(アミノ酸)、シスチン、タンパク質。被毛の質にはビオチン(ビタミンH)、オメガ6脂肪酸が必要になります。

本来、毛の色は透明なのですが、毛根にある色素細胞がメラニン色素をつくり、その色に染まりながら生えてくるので色がつくのです。年齢を重ねると、色素をつくる細胞がフリーラジカルや活性酸素といった活性酸素種による酸化攻撃よってダメージを受け、色素をつくれなくなります。そうなると、透明なまま生えてきてしまう=白髪になるのです。これは人間だけでなく、犬も猫も一緒なのです。

さらに、活性酸素種は体内のいろいろな細胞レベルの損傷を引き起こし、それが組織レベルの損傷へ、さらに組織機能の低下につながります。その結果、老化やがん、循環器障害、白内障、心筋梗塞などの原因となっているというわけです。つまり、皮膚・被毛の健康状態は、体全体の健康のバロメーターということです。ロイヤルカナンでは、すべてのペットフードにビタミンC、ビタミンE、ルテイン、タウリン、さらにポリフェノールやリコピン(成長期や高齢期)といった自然由来の抗酸化物質を含んでいます。

なお、原田氏によると、昔は栄養不足ぎみのペットフードが多かったそうですが、最近は栄養過多(タンパク質や脂肪が多い)のものが多く見受けられるとのことです。栄養過多のほうが、じつは皮膚・被毛にはよい影響を与えるのですが、腎臓や肝臓など内臓には負担がかかります。それはすぐに影響が出るのではなく、年齢を重ねると出てくる可能性があります。なので、皮膚や被毛の状態に問題がなくても、健康診断を定期的に受けることも大切だと強調しました。

では、ロイヤルカナンではどのようにフードを設計しているのでしょうか。「まずは、当該犬種、猫種がどういう特徴を持っているのかを、学術文献だけでなくブリーダーにもヒアリングしながら徹底的に調べる」のだそうです。

たとえば、柴犬専用フードを開発する際には、フランスの開発スタッフが実際に日本に来てブリーダーにインタビューを行いました。その結果、「皮膚・被毛がデリケート」「太りやすい」「胃腸がデリケート」という特徴を得ることができたとのことです。

その結果をうけて、開発された柴犬専用フードは、消化のよいタンパク質を選び、少ない量でもしっかり消化吸収されるようにしつつも、メチオニンやシスチンを多めに配合しました。さらに、脂肪の絶対量は少なめにしながら、オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸は増量しました。タンパク質や脂肪の量ではなく、アミノ酸、脂肪酸レベルで栄養素を調整することによって、「皮膚・被毛に配慮しながらも消化がよく太りにくい」という柴犬に最適なフードをつくることに成功したのだそうです。

現在では、世界で250種類のドライフードと100種類のウェットフードをラインナップするに至っていますが、このようにきめ細かくつくり分けるには、精度の高い原材料が必要となります。ロイヤルカナンの原材料の考え方は、犬や猫にとって必要な栄養素を、犬や猫の体の中に運ぶための手段というものです。原材料そのものが、たとえば肉でなければいけないとうのではなく、必要としているのは肉そのものではなく、肉に含まれるタンパク質やアミノ酸などの栄養素こそが大切だと考えているのです。そのうえで、安全性、消化率、栄養バランスを最優先し一切の妥協をしていないとのことです。

つまり、「何(どんなもの)でつくるか」よりも「何(どんなもの)をつくるか」を優先しているのです。その結果として、「飼い主のためにペットフードをつくっているのではなく、犬と猫のためにつくっている」ということになるのだそうです。

また、品質管理においても独自の厳しい基準を設定しています。原材料の受け取り時には、安全性や栄養成分などが基準を満たしているか検査をして、基準を満たさない原材料は受け取りを拒否するそうです。また、原材料納入業者の選定、生産から流通までの一貫した品質管理、トレーサビリティを徹底しているといいます。

さらに、品質を維持するために、パッケージにも酸素などを通さないガスバリア性の高い素材を使用し、窒素ガスを封入することで酸素量を減らして酸化を防いでいます。

このようにして、ロイヤルカナンは、「つねに最新の栄養学に基づき1頭でも多くの犬と猫を最善の栄養状態にするために、個々の犬、猫の栄養要求に合わせた安全で高い精度の原材料を組み合わせることで最適な栄養バランスのフードをつくり続けていく」ということを約束しています。

今回、メディアセミナーに参加して印象に残ったのは、誰のためのフードなのかということです。ロイヤルカナンは、「飼い主のためではなく、犬と猫のためにつくっている」と明確に言っています。昨今、ペットフードにおいて、プレミアムやナチュラル、さらにオーガニックやらヒューマングレードなど、いままでのペットフードでは聞き慣れないキーワードが氾濫しています。それらは犬・猫ではなく、飼い主対してアピールしているように見えます。そんな中で、飼い主の感情やイメージに訴えるだけでなく、エビデンスに基づいて犬・猫にとって最適なフードを提供しているという取り組みには、潔さを感じました。

[編集部]