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腸内細菌の野望〜知らなかった驚異的な酵素パワー(前編)

[2022/06/30 6:01 am | 獣医学博士 川野浩志]

腸内細菌の主な働きとは? わかりやすくざっくり解説すると以下のとおりです。

1.人間が生成できないビタミンやミネラルをドバッとつくる
2.人間が消化できない栄養成分をバラバラに分解する
3.免疫細胞を刺激して免疫力をバリバリ上げる


グルコース同士が化学的にプチュってくっついて「EXILE」の『Choo Choo TRAIN』みたいに繋がった状態がグルカンです。イケメンが集まったダンスユニットに「EXILE」と「三代目J SOUL BROTHERS」があるように、グルコース同士が繋がったユニットには、「α-グルカン」と「β-グルカン」があります。

α-グルカンの代表選手がデンプンやグルコーゲンで、ヒトの消化酵素(アミラーゼなど)でα-グルカンを最終的にグルコース(ブドウ糖)やマルトース(麦芽糖)などに分解してエネルギーとして利用する。ブドウ糖は、脳の唯一のエネルギー源で脳を活性化させて集中力や記憶力を高める効果があるため、ある程度には必要なのです。

一方で、ヒトの消化酵素はβ-グルカンを分解できず、ヒトはβ-グルカンをグルコースの供給源としては利用できません。β-グルカンの代表格は食物繊維(セルロース)です。

なので、同じグルコースから生まれたデンプンや砂糖などの糖質と食物繊維でも、糖質は分解してエネルギーに変換できるのに対して、食物繊維は体内で分解できないために、そのままうんちとして体外に排出されるだけと考えられていました。実際に食物繊維は「ヒトの消化酵素で消化されない食品成分」と定義されています。ただし、ヒトが消化することができないβ-グルカンを分解することができるスーパーヒーローが「腸内細菌」なのです。

後編では、スーパーヒーロー・腸内細菌の具体的な活動を紹介しましょう。

[獣医学博士 川野浩志]