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皮膚バリアを制する者はアトピーを制する!「Outside-Inside-Outside理論」

[2021/09/21 6:01 am | 獣医学博士 川野浩志]

皮膚表面は、健康であれば皮脂バリアでがっちりガードされているため、外界からの異物(花粉やダニのうんちなど)や刺激(紫外線など)から守られています。つまり、皮膚は弱酸性バリア(皮脂膜)で保護されていて、その下の角質細胞や角質細胞間脂質がラグビーのスクラムのように力を合わせてタッグを組み“皮膚バリア”として、異物の侵入を防ぎながら、逆に水分が出て行って皮膚が乾燥するのをバッチリ防いでいるわけです。

でも、アトピー性皮膚炎の皮膚では、これらの皮膚バリア機能が低下しているため、外界からの異物が余裕でスカスカ侵入しやすく、水分もバンバン出て行きがちなので、カピカピ状態になってることがすべてのスタート。

健康な人の皮膚pHは弱酸性に保たれています。皮膚pHが弱酸性だとブドウ球菌やマラセチアが増えにくいですが、中性に近づくにつれ黄色ブドウ球菌は非常に増えてしまいます。その結果、アトピーが重症化します。つまり、皮膚を持続的に弱酸性に保つことによって、角層のターンオーバーが正常化し、ブドウ球菌もコントロールできるのです。

なぜ皮膚pHが上がるのかというと、皮膚バリアが壊れたとき、赤ちゃん、おじいちゃんやおばあちゃんの皮膚、乾燥したヒトの皮膚、アトピーや乾癬の患者さんなど。そうなると、皮膚バリアが壊れてアレルギーが起こりやすくなります。そして、水分が出て行きやすくて皮膚がカピカピに乾燥します。

犬や猫の皮膚pHはどうなっているのでしょう。犬の皮膚pHは6.0〜7.0で、猫の皮膚のpHは6.4〜6.9。アトピーの犬や猫のpHはだいたい8.0〜9.0に上昇しています。私たちと同じように、皮膚pHが高くなれば細菌が増えやすいのです。

ではmどうしたらいいのか? ズバリやることはふたつ。皮膚バリアをなんとかしろ!=皮膚pHを弱酸性に保ちながら保湿。Th2の暴走を食い止めろ!=薬ではなく乳酸菌とオリゴ糖で暴走を食い止める。

最後に「Outside-inside-outside理論」についての説明です。これまでにもご説明したように、アトピー性皮膚炎の痒みは皮膚バリアの異常が非常に強く関わっていることがわかっていて、炎症が外(outside)から体のなか(inside)に連鎖していきます。さらに、この体のなか(inside)の問題が外(outside)に影響して皮膚バリアがさらに壊れてアトピーがガンガン悪化するという考え方を「Outside-inside-outside理論」といいます。

[獣医学博士 川野浩志]