夏の暑い日、私たちは飲み物に氷をいれて涼をとります。同じように、犬に氷を与えることで涼しさを提供したいと考える飼い主は多いでしょう。
しかし、氷は犬にとって安全なのでしょうか? 今回は、犬に氷を与える際の注意点について考えます。
犬にとって氷はよくない?
過去には、愛犬に氷水を与えたところ、犬が急性胃拡張(胃拡張胃捻転とも呼ばれます)になったとブログで発信した飼い主がいました。
この投稿はネットで拡散し、世界中のペットの飼い主を心配させました。しかし、この主張を裏付ける根拠はありません。
急性胃拡張は、胃のなかにガスがたまって膨張し捻れてしまい、胃や周囲の血流が遮断されてしまう状態です。急激なショック状態に陥るため命にかかわる症状で、胸の深い大型犬種に最もよく見られます。
胃拡張の正確な原因は明らかになっていませんが、氷の有無にかかわらず大量の水を素早く飲むことが危険因子であるという説もあります。つまり、氷を食べても犬が死ぬことはないということです。氷をかじるのが好きな犬にとって、より現実的な危険はそれほど高くはありません。むしろ、氷が犬の歯のエナメル質を傷めることのようが重大です。
飼い主の誤解
私たちは飲み物に氷を入れて楽しむので、愛犬も同じように水に氷を入れると喜ぶだろうと思っている飼い主も多いと思います。しかし、いくら家族といっても、犬と人間は同じではないことを肝に銘じなければなりません。
長い散歩や激しい運動後は、ホースや蛇口から直接水を飲ませるのがよいでしょう。冷水や氷を与えても、何のメリットもありません。また、食事に氷を加えたり、おやつに氷を与えるのもオススメしません。
クラッシュアイスとキューブアイスの違い
あなたが氷入りの飲み物を飲むたびに、愛犬にねだられるのなら、少しの氷を与えるのはいいでしょう。しかし、愛犬に氷を与えるときは、キューブアイスよりもクラッシュアイスをオススメします。
繰り返しになりますが、キューブアイスを噛むと犬の歯が折れることがあります。また、砕けて尖った部分が口腔内を傷つける場合もあります。すぐに飲み込む癖がある犬は、食道を傷つける危険もあります。
犬用に加工された冷凍のおやつであれば、そうした問題を避けることができますが、もし、自宅でつくる場合は、シャーベット状にして与えるとよいでしょう。
子犬に氷を与えてもよい?
子犬は生後2週間ころに乳歯が生えだします。そして生後4~6カ月で永久歯が生え揃います。この時期に氷を与えることは避けるのが無難です。
いろいろなものに興味を持つ時期なので、氷にも興味津々なることでしょう。しかし、歯の健康を考え、柔らかくて柔軟性のある噛むおもちゃを与えることをオススメします。
犬は氷で涼しくなる?
犬は人間のように汗をかきません。厚くてふわふわした被毛に覆われている北欧の犬種や短頭種の場合、暑い気候は深刻な問題になることがあります。こうした犬種は、熱中症になりやすいです。
また、どの犬種であっても、暑い夏の日には、すべての犬が日陰、水を利用できる必要があります。また、過度のパンティング、濃い唾液、異常に赤い歯茎など熱中症の徴候を示し始めたら、犬を冷やすことです。その際には、氷を与えるのではなく、お腹や脇を水や濡らしたタオルなどで冷やし、動物病院に連れて行くのが一番です。
まとめ
犬に氷を与えることには、一見メリットがあるように思えますが、実際には特に健康上のメリットはなく、逆に歯を痛める危険があります。
愛犬の夏の暑さ対策には、氷よりも新鮮な水を常に用意し、日陰を確保することが重要です。愛犬が快適に過ごせる環境を整えることで、夏の暑さから守ってあげましょう。
正しい知識と対策で、愛犬の健康を第一に考えた行動を心がけてください。