犬との暮らしで知っておきたいこと Vol.181

【犬飼いTIPS】暑い時期に気をつけたい犬の水中毒とは? 命を守るために知っておきたいこと

[2024/07/02 6:01 am | 編集部]

水分補給を怠らないというのは、現代の常識です。それは愛犬も同じで、特に暑い季節には清潔で新鮮な水を十分に与えることが大切です。

しかし、犬が水を飲みすぎることがあるのをご存じですか? 脱水症状を防ぐこは重要ですが、過剰な水分摂取も問題です。

多くの飼い主や一部の獣医師でさえ、体内の水分が過剰になると、危険な症状が現れ、死に至ることさえあることに気づいていません。今回は犬の水中毒について考えます。

犬の水中毒とは

水分過剰や多飲症などとも呼ばれる水中毒は、突然起こり、致命的な結果をもたらす可能性があります。体内の水分が過剰になると、血液のナトリウム濃度が低くなり、低ナトリウム血症と呼ばれる状態になります。

体はバランスを取ろうとして、細胞内に水分を取り込むことで低血中ナトリウムに反応します。肝臓など一部の臓器は、膨張した細胞の体積増加に対応できますが、骨で覆われている脳は対応できません。

人間の場合、水中毒は激しい運動後に水を飲みすぎることで起こります。犬の場合は、水辺で遊んだり水泳する際によく起こります。

塩水中毒、または高ナトリウム血症も水中毒といえます。犬が過剰に塩水を摂取することによって引き起こされます。

海で泳いだり一緒にビーチレジャー楽しむと、犬はしばしば塩水を飲んでしまいがちですが、これは人間同様、犬にとっても有害です。特に海水を含んだテニスボールや吸収性の高いおもちゃで遊ぶと、塩分過多になる危険があります。

塩水の摂取は、腸内の過剰な塩分が血液から水分を引き寄せるため、下痢が発生します。下痢には血液が含まれることもあります。大量の塩水を飲んでしまうと、嘔吐や脱水症状、発作などの症状が現れ、緊急治療が必要となります。

重要なナトリウムバランス

体内の水分バランスは、腎臓や内分泌系、脳を含むいくつかの異なる物理的メカニズムによって調整されています。これは、血流中のナトリウム濃度に大きく依存しています。

血流中のナトリウムが少なすぎる場合は低ナトリウム血症と呼ばれ、血流中のナトリウムが多すぎると高ナトリウム血症と呼ばれます。どちらの状態も好ましい状態ではなく、重度になると死に至ることもあります。

脳細胞はナトリウムの不均衡に特に敏感なので、犬の低ナトリウム血症と高ナトリウム血症の典型的な症状がいずれも神経症状であることは驚くべきことではありません。

低ナトリウム血症では、水分が細胞内にに流入し、脳浮腫と脳細胞の腫脹(腫れ)を引き起こします。また、高ナトリウム血症では、水分が細胞から血液中に流出し、神経細胞の脱水と脳細胞の萎縮を引き起こします。

水中毒の症状

低ナトリウム血症は、体内の過剰な水分摂取または過剰なナトリウム喪失によって起こり、高ナトリウム血症は、体内の水分の大幅な損失またはナトリウムの大幅な増加によって起こります。水中毒の症状には以下のようなものがあります。

 嗜眠
 見当識障害
 筋肉の痙攣
 過度な流涎
 嘔吐
 下痢
 発作
 衰弱
 昏睡
 死亡


水中毒の治療

愛犬が水中毒になった疑いがある場合は、すぐにかかりつけの動物病院やか救急病院へ行きましょう。

低ナトリウム血症ではナトリウムが不足するため、慎重に補給することが重要です。通常は、電解質の投与が含まれます。また、利尿を促進させる利尿薬や、脳圧を下げるために下浸透圧利尿薬を投与する場合もあります。

犬の高ナトリウム血症では、迅速な対応が求められます。治療は通常、点滴によって水分補給を行い、体内の塩分濃度を調整します。場合によっては、制吐薬や抗けいれん薬を投与する場合もあります。

軽症の場合、よろめきながら歩きますが、やがて体内バランスを取り戻し正常に戻ります。しかし、重症の場合、脳の損傷が進行して元に戻らず死に至ります。

まとめ

犬の水中毒は、獣医学での研究が進んでいる分野のひとつですが、文献があまり多くないのも現実です。低体温症や過労症と誤診されることがあります。

愛犬が水中毒の徴候を示し始めたら、緊急事態とみなしてすぐに獣医師の診察を受けてましょう。対応が送れると重症化し、場合によっては死に至ることもあります。生命を脅かす状態を避けるためにできることは次のとおりです。

・常に清潔で新鮮な水を用意しておく
・塩分の高いおやつは避ける
・屋内ではエアコンなどで室温を快適な状態にする
・屋外の場合は日陰で休憩をとる
・プールや海で遊ぶときには15分に1度は休憩する


これからの季節、水遊びは犬にとって素晴らしいもので、運動効果はリスクをはるかに上回りますが、犬が大好きな水にはリスクが潜んでいることを認識することが重要です。

[編集部]