犬との暮らしで知っておきたいこと Vol.89

【犬飼いTIPS】これからの夏シーズンに気をつけたい犬にとっての「毒」

[2022/07/01 6:01 am | 編集部]

観測史上最も早い梅雨明けとなり、連日猛暑となっています。夏は、海水浴やキャンプなどアウトドアでの楽しいイベントが目白押しです。そして庭の手入れをする季節でもあります。しかし夏は、ペットが有害な物質にさらされる季節であることも忘れてはいけません。ペットが外に出るときは、つねに見守る必要があるのです。

ガーデニング用品(肥料・殺虫剤・除草剤など)、植物やキノコなどの中毒も含め、早期発見と汚染除去が重要です。今回は、これらの危険に対処すべき基本的な情報を紹介します。

塩水

海水は危険な毒物です。特に、愛犬を海に連れて行く場合は注意が必要です。海辺で遊ぶのが大好きな愛犬は要注意です。犬は塩水が危険であることを認識しておらず、過剰に摂取すると重度の高ナトリウム血症、すなわち食塩中毒を引き起こす可能性があります。

高ナトリウム血症の初期症状は嘔吐や下痢ですが、すぐに進行し、ふらふらしたり、発作、進行性のうつ病などの症状が見られるようになり、そして最終的には重度の脳腫脹に至ることがあります。新鮮な水道水を持ち歩き、ビーチで遊んでいるときにもこまめに飲ませるなどして、食塩中毒にならないように注意しましょう。

ナメクジの駆除剤

ナメクジの駆除剤は、ガーデニングではよく使われます。有効成分はメタアルデヒドであり、犬には有害です。メタルアルデヒドを摂取すると1~2時間以内に、流涎(よだれをダラダラ流す)、嘔吐、運動障害などの症状が見られ、その後、痙攣、てんかん、高熱へと進行します。一般的に、迅速かつ積極的な治療が行われれば、予後は良好です。

殺鼠剤

ほとんどの獣医は、殺鼠剤にあまり精通していません。有効成分に、リン化亜鉛やブロメタリンが含まれている場合があります。これらの有効成分はどちらも解毒剤がなく、摂取すると急速に悪化し、生命を脅かす症状を引き起こす可能性があります。

リン化亜鉛は、胃酸との相互作用により非常に毒性の高いホスフィン(PH3)ガスを放出します。この毒素は胃のなかの食物によって悪化するので、急性中毒のペットには何も与えないようにしてください。このガスは、重度の胃腸炎、腹部膨満感、心血管不全を引き起こします。また、肺のうっ血や浮腫が起こることもあります。15分から数時間以内に急速に進行し、流涎、嘔吐、呼吸困難、痙攣などが起こります。迅速かつ積極的な治療が行われる必要があります。

なお、米国ではホスフィンガスの二次曝露による獣医療関係者の健康被害が注意喚起されています。もし、ホスフィンガスのニオイ(腐った魚やニンニクのようなニオイ)に気づいた際には、必ず換気の場所で獣医師の指示を仰ぐようにしましょう。

キノコ

日本には数千種類のキノコが存在していると言われています。このうち食用とされているのは約100種類、毒キノコは約40種類が知られています。ただし、無害なものでも胃刺激性や幻覚性、肝毒性(シクロペプチド、ヒドラジン、イソオキサゾール、シロシビン)のあるキノコも存在します。

摂取したキノコの種類、そのキノコに含まれる特定の毒素によって症状は異なります。初期段階としては、嘔吐、下痢、腹痛、痙攣などの臨床症状があり、その後、肝障害や腎障害が発生します。治療には、何を食べてしまったから重要な手がかりとなりますので、キノコの破片をビニール袋などに入れて持参しましょう。

花火

花火の音に怖がるペットは多いのですが、なかには花火の音を楽しんだり、花火を追いかけたり、かじったりしてしまう犬もいます。製品によっては、前足、口、顔、消化管などに火傷を負ったり、骨髄抑制や腎不全などの障害を引き起こす可能性があります。また、保管にも十分に注意する必要もあります。

植物

トマトはナス科の植物で、トマチンを含んでいます。トマチンは茎や葉に含まれる毒性のある糖アルカロイドです。未熟な青いトマトにも最大5%の濃度で含まれますが、トマトが赤く熟すと濃度は急速に減少します。茎、つる、青い果実を摂取した場合、胃腸の炎症、運動失調、衰弱が見られます。摂取してしまったら、動物病院で吐かせる処置をしてもらいましょう。

日本では主に長野県や北海道などで栽培され、ジャムなどにも使われるルバーブ。この葉にはシュウ酸、シュウ酸カルシウムおよびシュウ酸カリウムが含まれており、口腔および胃腸の炎症により嘔吐や下痢を引き起こす可能性があります。

観葉植物も注意が必要です。ポインセチアの茎や葉を摂取すると、軽度の胃腸刺激や嘔吐を引き起こす可能性があります。テッポウユリを摂取すると、猫に抑うつ、嘔吐、下痢を引き起こします。放置すると、ほとんどの猫が腎不全を発症し死に至ります。

チューリップ(球根)、スズラン、キョウチクトウ、カランコエ、ツツジは、春から夏にかけての植物です。大量に摂取すると致命的な影響を与える可能性があるので、これらの植物の育てている場合は注意が必要がです。

ブドウ(レーズン)

ブドウやレーズンは、犬が摂取すると重大な問題を引き起こす可能性があります。現時点では作用メカニズムは不明ですが、食欲不振、嘔吐、下痢、急性腎不全を引き起こす可能性があります。この毒性は必ずしも用量に関係なく、少量の摂取でも症状が出ることがあります。

除草剤

除草剤は、説明書のとおりに使用・散布した場合、完全に乾くまでペットが散布した場所に近づかないようにすれば、ほとんど心配はありません。しかし、除草剤を舐めたり、製品の容器を噛んだりした場合、毒性が大幅に高まります。

藍藻(アオコ)・藍色細菌(シアノバクテリア)

世界中の海や湖、川、池などで有毒な藻類が繁殖していることが確認されています。蒸し暑い夏に、水面が緑色になっているのを見たことがあるでしょう。アオコは、種類によっては、肝毒性物質や神経毒性物質を含んでいることがあります。

犬がシアノバクテリアを含む水を飲んだり、泳いだりすると、嘔吐、下痢、衰弱、昏睡状態、黄疸などの肝毒素の症状が現れます。24時間から数日で死に至ることもります。神経毒の摂取では、震え、昏睡状態、発作、呼吸困難の症状が1時間以内に死亡してします。

まとめ

春から夏にかけてては活動的になる時期であり、さまざまなアクティビティを愛犬と楽しめる絶好の季節です。ただし、この季節は愛犬にとって危険な面があります。今回は、「毒」についていくつかの要因と、対処法方法をご紹介しました。

回避できるものは事前に対策をしておきましょう。万が一のときには応急処置を行うことができますが、速やかに動物病院で診察・処置をしてもらうことで命を救うことができます。これからやってくる楽しい夏を愛犬と健康に過ごしましょう!

[編集部]