猫との暮らしで知っておきたいこと Vol.189

愛猫の毛づくろいと受動喫煙~知られざるリスクと安全対策

[2024/09/05 6:01 am | 編集部]

厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、喫煙する人の割合は約17%で、減少傾向が見られます。

タバコが人間に有害であることは広く知られていますが、特に猫を飼っている家庭では、受動喫煙が健康に与える影響が深刻であることが懸念されています。

今回は、受動喫煙が猫に与える影響とその予防策についてのお話です。

喫煙が猫に与える総合的な健康リスク

猫は直接タバコを吸うことはありませんが、受動喫煙や三次喫煙を通じて深刻な健康リスクにさらされる可能性があります。

受動喫煙とは、喫煙者が吐き出す煙(呼出煙)やタバコから直接放出される煙(副流煙)を吸い込むことを指します。さらに、三次喫煙は、家具や衣類などに残留した有害物質が、体内に取り込まれることを意味します。

直接喫煙

直接喫煙とは、喫煙者が直接吸い込む煙(主流煙)を指します。タバコ、葉巻、パイプを吸うと、その煙が肺に吸い込まれ、高濃度の有毒化学物質にさらされます。

この直接的な曝露が、喫煙に関連する多くの病気や健康問題の主な原因です。

受動喫煙

受動喫煙とは、呼出煙や副流煙を非喫煙者や猫が吸い込むことを指します。副流煙には呼出煙よりも多くの有害物質が含まれており、深刻な健康リスクをもたらします。

受動喫煙は特に閉鎖された空間で発生しやすく、室内で過ごすことが多い猫にとっては特に影響が大きいと言えます。タバコの煙は空気よりも重いため、床に近い場所に滞留しやすく、猫は長時間有害物質にさらされることになります。

さらに、猫は人間よりも体が小さいため、吸い込んだ有害物質が体に与える影響がより大きくなります。

三次喫煙

三次喫煙は、タバコの煙が消えたあとに残る有害物質にさらされることを指します。タバコの煙は家具やカーペット、壁、衣服などに付着し、長時間残留します。

この残留物には発がん性物質や毒性物質が含まれており、時間が経つにつれて空気中に再放出されることがあります。そのため、長期間にわたって有害物質にさらされるリスクが生じます。

特に猫は家のなかで多くの時間を過ごし、毛づくろいをすることでこれらの有害物質を口にすることがあります。これが健康に悪影響を及ぼすリスクを高めます。

三次喫煙は、呼吸器系の病気、皮膚炎、さらにはがんなどの病気を引き起こす可能性があり、無意識のうちに愛猫に深刻な害を与えることがあります。

受動喫煙が猫に与える影響

猫は人間よりも小さく、さらに有害物質が滞留する床の近くにいる時間が長いので、空気中の有害物質を吸収する割合が高くなります。

そのため、受動喫煙が猫に与える影響は深刻です。主な影響として、以下のような健康リスクが挙げられます。

呼吸器疾患

受動喫煙によって猫がもっとも影響を受けやすいのは、呼吸器系です。タバコの煙に含まれる有害物質は、猫の気道や肺に炎症を引き起こし、喘息や慢性気管支炎を発症させるリスクを高めます。

また、長期間にわたって受動喫煙にさらされることで、肺機能が低下し、呼吸困難を引き起こすことがあります。猫は人間に比べて肺が小さく、呼吸器系が繊細であるため、これらの影響がより深刻になりやすいです。

がん

受動喫煙は、猫のがんリスクを著しく高めることが知られています。特に、肺がんや口腔内がん、リンパ腫の発症リスクが増加します。

猫は毛づくろいをする際に、タバコの煙に含まれる有害物質が付着した毛を舐めてしまうため、これが体内に蓄積されることで、がんの発症に繋がる可能性があります。

また、タバコの煙に含まれる発がん性物質は、DNAにダメージを与え、がんの進行を促進することもあります。

心血管疾患

受動喫煙は、猫の心血管系にも悪影響を与えます。有害物質が血管に入り込むことで、血液の流れが悪くなり、高血圧や動脈硬化のリスクが高まります。

これにより、心臓に負担がかかり、心筋梗塞や心不全などの重篤な心血管疾患を引き起こす可能性があります。猫の心臓は人間よりも小さく、これらの影響が命に関わる場合もあります。

そのほかにも、受動喫煙は猫の健康に対して他にもさまざまな悪影響を与えます。例えば、皮膚炎やアレルギー反応が現れることがあり、これにより猫が頻繁にかゆみを感じたり、皮膚に炎症を起こすことがあります。

また、タバコの煙に含まれる有害物質は、猫の免疫システムを弱体化させ、感染症に対する抵抗力が低下することもあります。さらに、食欲不振や体重減少など、全体的な健康状態が悪化するリスクもあります。

猫への影響を防ぐ方法

受動喫煙のリスクをなくす最善の方法は、飼い主および家族が禁煙することです。しかし、どうしても禁煙できない場合は、副流煙から猫を守るための効果的な対策を講じる必要があります。

【禁煙エリアをつくる】
特にリビングルームや寝室など、猫が長い時間を過ごす場所は禁煙にしましょう。

【喫煙は屋外で】
屋外で喫煙することを心がけましょう。また、喫煙後は衣服を着替え、手や顔を洗うことで、猫が有害物質に触れるのを防ぐことができます。

【換気と清掃】
窓を開けて家の換気をよくしてください。そのうえで空気清浄機を使用して室内の空気中の有害物質を除去します。
また、床の残留物を取り除くためこまめに掃除します。さらに、猫の寝具やおもちゃなどもこまめに洗いましょう。


まとめ

受動喫煙は、猫の健康に深刻な影響を与えるリスクがあることを忘れてはなりません。猫を飼っている家庭では、可能な限り受動喫煙を防ぐ対策を講じることが求められます。

猫にとっても、人間にとっても、タバコの害を減らすことが大切です。愛猫と長く健康に過ごすために、今すぐに受動喫煙対策を始めましょう。

[編集部]