猫との暮らしで知っておきたいこと Vol.69

【猫飼いTIPS】猫との上手な交流の仕方は、彼らの“境界線”を尊重することから

[2022/02/07 6:01 am | 編集部]

おとなしく撫でられていいた猫が、急に猫パンチしたり、噛みついたりしてくるという経験は、多くの人が持っていることでしょう。これを、猫の機嫌のせいだと思うかもしれませんが、おそらくそれは私たちの接し方が間違っているのです。今回は猫との上手な交流の仕方についてのお話です。

猫は直接的な交流が苦手?

その原因を探るには、まず猫の祖先を知る必要があります。家猫の祖先リビアヤマネコは害虫駆除という使役目的があったようですが、現代の猫は私たちの大切な家族として扱われることが多いのです。

このような人間と猫の関係の変化は、“人間の最良の友”である犬より少し遅れて、約4000年前に起こったと考えられています。つまり、彼らの脳にはまだヤマネコのような思考回路が残っているということです。ヤマネコは単独で生活し、鉢合わせしないように、視覚だけでなくニオイなどによる間接的なコミュニケーションをしています。

一方、人間は本質的に社会的な生き物であり、接近したり触れたりするといった愛情表現を好みます。また、丸い顔、大きな目や額、小さな鼻など、赤ちゃんのような顔立ちに惹かれます。だから、猫や子猫を見たときに、撫でたり抱いたりしたくなるのは当然なのです。しかし、多くの猫はこのようなコミュニケーションに少し圧倒されてしまうことでしょう。

感受性期の交流が人懐っこい猫になる鍵

多くの猫は撫でられることを好みます。食べることよりも飼い主に撫でられることを優先する猫もいます。しかし、人との触れ合いは、生後2週間から7週間という比較的短い「感受性期」の間に学ぶことが重要とされています。

また、猫とのコミュニケーションには人間の特性も重要です。私たちの性格や性別、猫の扱い方、猫の体を触る部位などが、猫の反応に重要な影響を与えることがあります。スキンシップに攻撃的になる猫もいれば、おいしい食事やくつろげる場所と引き換えに、私たちの要求に対応する猫もいます。

とはいえ、寛容な猫が必ずしも幸せな猫とは限りません。撫でられることを積極的に嫌がるのではなく、むしろ我慢しているように見受けられる猫のほうが、よりストレスレベルが高いということが報告されています。

猫との上手な交流の仕方

成功の鍵は、猫とのコミュニケーションにおいて、できるだけ多くの選択肢と程度を理解することです。例えば、撫でられたいかどうかという意思表示の注視したり、触る場所や時間を調節することです。

私たちは触れたり、かわいいものが大好きなので、このようなアプローチを本能的にするのは難しいかもしれません。しかし、猫との交流は人間ではなく猫が始めたほうが長続きするという研究結果もあるほどなので、少し自制心を持つことで、彼らとの関係が良好になります。

また、猫が快適に過ごせるように、猫の行動や体勢に細心の注意を払うことも大切です。触ることに関しては、少ないほうがいいことが多いのです。これは家で飼い主とリラックスして接するときだけでなく、動物病院で診察を受けるにも同じことがいえます。

一般的な目安として、人懐っこい猫の多くは、耳の付け根やあごの下、頬の周りなどを触られると喜びます。お腹や背中、尻尾の付け根などよりも、これらの場所のほうが好まれることが多いようです。

【猫が喜んでいるサイン】
・しっぽを立てて、自分からスリスリしてくる
・前足であなたをフミフミしたり、ゴロゴロ喉を鳴らす
・しっぽを左右にゆっくり振る
・リラックスした姿勢と表情で、耳が前方に向いている
・撫でているの止めると催促する

【猫が嫌がっているサイン】
・顔をそむけたり体をずらしたりする
・頻繁なまばたきや、頭や体を振ったり鼻を舐める
・急に毛づくろいをしはじめる
・背中の皮膚が波打つように震える
・しっぽを左右に素早く振ったり床を叩いたりする
・耳を水平に伏せていたり、少し後ろに引いた「イカ耳」の状態
・前足であなたを押し返したり猫パンチしたりする


まとめ

猫があなたの思いどおりのパートナーになるかといえば、そう簡単にはいきません。撫でられるのが好きな猫もたくさんいますが、そうでない猫もたくさんいるでしょうし、せいぜい我慢しているだけの猫もいます。そんな彼らと良好な関係でいるためには、“猫の境界線”を尊重することが重要です。

もうひとつ重要なことは、前述のとおり「感受性期」にどれだけのことを学んだかということです。健全なブリーダーはそのことを理解しているので、生まれたばかりの子猫と毎日いろいろなコミュニケーションをします。例えば、いろいろな場所を触ったり、仰向けにしたり、話しかけたりして、人懐っこい子猫になるように育てます。

親猫や兄弟猫と過ごすことで猫社会の理解はできます。しかし、人間との絆を深めるためには「感受性期」にどれだけ人間と接して愛情をかけられたかによって決まります。新しい家族に迎えられても、すぐに仲良くなれるのは、こうした日々の労力があるからこそなのです。

[編集部]