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飼い主に寄り添う診療がモットーの心やさしき獣医師

[2016/06/16 6:00 am | 編集部]

近年の飼育環境の変化でペットの高齢化が進行し、飼い主が望む獣医療が変化しつつある。従来は大学病院で行われていた二次医療は、民間の獣医師の専門化により、ホームドクター的な一次医療を超えて可能になってきている。さらに大学病院やほかの専門病院との連携により、より高度な獣医療を提供している獣医師も増えてきた。

多様化・細分化する獣医療。飼い主は「どんな病院を」「どんな獣医師を」選ぶべきか。知識・技術は当然だが、ペットとともに飼い主も思いやる心も望まれる。多くの飼い主たちが信頼を寄せて全国から集まる病院、ペット業界のプロたちが推薦する病院、そして獣医師が信頼して紹介する病院にこそ、その答えがあるのだ。ここでは、そんな「選ばれし獣医師」を紹介していく。

インフォームドコンセントを重視した治療

2013年7月に兵庫県・神戸市に開院した「ひらやま動物病院」。JR新神戸駅にほど近い場所にある一次診療の病院で、「飼い主と一緒に最善の治療方法を考えていきたい」とインフォームドコンセントを重視し、飼い主から大きな信頼を得ているのが平山院長である。

一次診療に加えて、得意分野として血液疾患と皮膚疾患に力を入れている。大学病院で研究生として勤務し、その後、一・五次診療の病院で勤務した経験により、自らの目指す獣医の姿を見出し、専門的な知識や技術を生かしながら、レベルの高い診療を行っている。

日々の会話を大切に、飼い主に寄り添うホームドクターとして、広く深く動物たちの健康をサポートしている平山健太郎院長に話をうかがった。

平山 健太郎 院長
2005年:日本大学生物資源科学部獣医学科 卒業
     東京大学動物医療センター内科系診療科にて研究生として勤務
2007年:東京・兵庫・大阪の動物病院にて勤務
     ひらやま動物病院 開院
<所属学会>
日本獣医皮膚科学会

・獣医師を目指したきっかけ

「子どものころの猫の飼育経験が獣医へと導いた」

もともと動物は好きでしたが、小学校を卒業するまでは、なかなか飼う機会には恵まれませんでした。中学生のときに子猫を保護して、初めて動物を飼育する機会を得ました。

その猫は家の中と外を自由に出入りさせる飼い方で、ほかの猫とよく喧嘩をして傷だらけで帰ってきました。そのたびに動物病院へ連れて行き、そこで獣医の仕事を見ていました。その当時は「こういう仕事もあるのかぁ」と、ただ漠然とした思いだけでした。

その後、猫は血液の病気を患い、闘病生活ののちに、貧血で亡くなりました。動物にも人間と同じような病気があるのだと知り、とても驚きました。

もともと大学は農学部を希望していましたが、高校の進路相談で農学部のどの分野に進むのかと考えたとき、ふと亡くなった猫のことや治療をしてくれた獣医のことを思い出しました。それが、獣医を目指してみようと決めた瞬間でした。

「あのときの猫の血液の病気が、今なら治せるかもしれない」とそんな思いがふつふつと湧いてきたのを覚えています。それからは迷うことなく、獣医の道を進みました。

・二次診療の勤務医ではなく開院することを選んだ理由

「飼い主にいつも寄り添う獣医でありたい」

大学卒業後は、東京大学動物医療センターに研究生として勤務しました。2年後には東京の一・五次診療の病院にも勤務して、専門的な病気や難病を多く見る機会を得て、自分の知識や技術のレベルをある程度まで引き上げることができたと思っています。

ただ、一・五次診療の病院で診療する中で、すべての飼い主が高度医療を望むわけではないということを知りました。飼い主が望む治療は獣医が考える治療ではない場合があり、そこをどう調整していくかが難しいところでもあり、興味深いところでもありました。

飼い主が高度医療の二次診療にいらっしゃる場合、一次診療の病院からの紹介がほとんどです。診断により安定した治療ができるようになれば、その後のケアは一次診療で行うことが多いので、それほど飼い主と接する機会がありません。

自分が理想とする獣医の姿を思い描いたとき、「よいときも悪いときも飼い主にいつも寄り添う獣医でありたい。臨床の現場にいたい」と思ったのです。その後は兵庫や大阪の一次診療の病院で勤務し、経験を積みました。そして、高度医療の現場で得た知識と技術を生かせる一次診療の病院を開院しました。

・得意としている診療分野

「大学病院で経験を積んだ皮膚疾患と血液疾患の診療に力を入れている」

東京大学動物医療センターでは、内科系診療科で研究生として勤務していました。その中で注力したのが血液疾患と皮膚疾患です。もともと東京大学は血液疾患が非常に強い病院ですので、血液の腫瘍などに関しても高度な知識と技術が蓄積されています。

血液疾患は自分の猫が亡くなる原因の疾患だったこともあり、自然と力も入りました。皮膚疾患についても「痒い」という症状にも多くの原因があり、奥が深い疾患です。簡単に治るものもあれば、どんな治療をしても治らないものもあり、単純ではないのが皮膚疾患の特徴でもあります。

多くの症例を診るうちに、いずれはこの分野にも強い獣医になれたらと思う気持ちが強くなり、深く取り組むようになりました。現在は血液疾患と皮膚疾患を得意分野としています。論文を読んだり、勉強会に参加しながら、つねに新しい知識や技術を取り入れ、医学的根拠に基づいた診断をしています。

・治療時に大切にしていること

「飼い主が安心できる診察を提供する」

病気の動物を連れてくる飼い主は、とても不安に思いながら病院に来ています。動物は言葉を発しませんので、飼い主の話す内容をきちんと聞く必要があります。その会話の中に病気のヒントがあるからです。

飼い主と時間をかけてコミュニケーションをすることで、的確な検査方法や確実な診断結果をいち早く導き出すことができます。その後の治療方針なども、わかりやすく説明をすることで、安心してもらうことができます。

私はこのような「インフォームドコンセント」を重視しています。これはアメリカで生まれた考え方なのですが、「医師が病状や診療内容などをわかりやすく説明し、同意を得たうえで治療方法を選択していただく」というものです。

治療の内容、期待される結果、代替治療、副作用、費用、予後など多枝にわたる正確な情報をわかりやすく説明することが望まれています。もちろん、それは私からの一方的なものではなく、飼い主の考えをじっくりと聞きながら進めていきます。飼い主の不安を少しでも取り除き、私に安心して任せてもらうためには、大切なプロセスだと思っています。

・今後の展望

「血液疾患・皮膚疾患の検査設備を整えた病院を設立する」

血液疾患と皮膚疾患において、しっかりとした検査設備を備えた病院を設立することを目標としています。それを専門とする一・五次診療の病院です。

現在、当院でもこれらの疾患で診察に来られる飼い主が多く、皮膚疾患については原因が特定できず、病院を転々としていたという患者もいます。「血液疾患と皮膚疾患ならひらやま動物病院へ」と信頼されるよう経験を積んで、できるだけ早い時期に実現したいと思っています。

また、専門分野を強化しつつ、飼い主が気軽に立ち寄れる病院の構想もしています。当院ではフィラリアの薬はできるだけ毎月お渡しするようにしています。身体検査と問診を行っていますが、フィラリアの薬代のみいただいています。

毎月、身体検査をすることには、病気の早期発見というメリットがあります。散歩の途中に立ち寄っていただけるような、そんな雰囲気づくりをして、しっかりと動物たちの健康管理をしていきたいです。

専門分野も診ますが、基本は街のホームドクターとして頼れる存在でありたいと思っています。「一緒に遊びにきてください」という感覚です。

・先生にとって「動物」とは?

「かけがえのない家族」

動物はいつでも癒しを与えてくれる存在です。昔飼っていた猫は、まだ自分が子どもでしたので兄弟という感覚でいましたが、現在飼っている2歳の猫は、自分の娘という感覚でいますね。大切な存在で、かけがえのない家族です。

【ひらやま動物病院】
住所:兵庫県神戸市中央区坂口通4-2-21
TEL:078-221-3711
最寄り駅:阪神神戸線王子公園駅 徒歩10分/神戸市営地下鉄新神戸駅 徒歩15分
URL:http://hirayama-ah.com/

[編集部]