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腸内細菌と人間の条約

[2021/11/23 6:01 am | 獣医学博士 川野浩志]

腸内細菌と人間の条約(ルール)があるとするなら、以下のようにまとめられます。

●腸管内に張り付いているネバネバ(粘液層)が有害な細菌をブロックしている
●通常はヒトが食べた食物繊維が与えられるから餌に困らない
●食物繊維がたくさんあると、それを発酵する細菌(Fiber-degrading microbiota)が増える
●食物繊維が足りないと、“条約違反”としてネバネバ(粘液層)を食べる
●細菌がネバネバを食べ尽くすと、腸管をガードしてくれているバリアがなくなり、病原体が侵入したり潰瘍ができたりする


ルクセンブルグ大学とミシガン大学の共同研究による論文「A dietary fiber-deprived gut microbiota degrades the colonic mucus barrier and enhances pathogen susceptibility(食物繊維が欠乏すると腸内細菌が大腸粘膜バリアを分解し病原菌に対する感受性をあげる)」は、マウスに食物繊維の含まれない餌を与えるとどうなるか?」という疑問について調べたものです。

研究でわかったことは、食物繊維が足りないと食物繊維を分解して栄養にする細菌の比率はガクンと下がり、ネバネバ(粘膜層)を分解してしまう菌(mucus-degrading bacteria)が増えるということ。その結果、腸管のネバネバがなくなってしまうので腸管バリアが破壊され、腸管内にいる病原性の高い“極悪の細菌”が腸管上皮から体内に侵入する可能性が高くなるということでした。

さらに、ネバネバを減らす原因としてあげられたのが、抗生物質、食品添加物・人工甘味料、高脂肪食(西洋食)、ストレスなど。人間の場合、腸内細菌にもっとも大きく影響するのが「前日に食べた食物繊維の量」で、15%の細菌種の勢力争いに影響するといわれています。

彼氏にデートに誘われ、「何が食べたい?」と聞かれたら、「腸内細菌的に日本料理(和食)か地中海料理がいいわ」と答えるのがよいでしょう。

[獣医学博士 川野浩志]