犬との暮らしで知っておきたいこと Vol.94

【犬飼いTIPS】夏は虫の多い季節。犬は虫を食べても大丈夫なの?

[2022/08/05 6:01 am | 編集部]

散歩の途中などに、愛犬がパクッと飛んでいる虫や葉や草に付いている虫を食べてしまったという経験はありませんか? アリ、セミ、コガネムシ、クモなどを食べる姿を目撃した際には「大丈夫なの?」と心配になることでしょう。今回は犬と虫のお話です。

食べるのは犬の本能

じつは、犬が虫などを食べるのはよくあることで、それは犬の本能によるものです。古くから人間の使役目的のために改良され狩猟に役立ってきた犬は、狩りをすることが本能として備わっています。そのため、自分の目の前に虫が飛んでいたり、足元にチョロチョロと動いているものを見つけたら、追いかけ、捕らえ、口にするという一連の行動を咄嗟にしてしまうのです。

また、虫にはたんぱく質などの栄養もあり、それを必要としている場合には、欲して食べているとされています。野生の犬の場合には、自然にあるもので栄養を補わなければならないので、そのタンパク質などが必要ですが、犬が食べるドッグフードには必要な栄養素がしっかりと入っています。そのため、虫などで栄養素を補う必要はありません。頭で考えて、また必要な栄養を欲して虫を捕らえているわけではないのです。

犬が虫を食べてしまったらどうする?

基本的に、愛犬が虫を食べてしまっても慌てる必要はありません。また、虫を食べることでその虫に寄生していた寄生虫に感染したという報告もほとんどなく、大きな心配はいらないでしょう。毎年投薬する愛犬のフィラリア予防薬にも駆虫成分が配合されているものが多いので、感染しても駆虫されるのが一般的です。

しかし、まれに虫に付着していた殺虫剤などで中毒症状を起こすことがあるので、異変が見られた場合にはできるだけ早く動物病院を受診しましょう。

ただ、愛犬が虫を食べているところを見てしまった場合には、口内や口周りが気になるところ……。その場合には口周りを洗ったり、濡れタオルやウエットティシュなどで拭き取ることをオススメします。また、口内はペット用のマウスウォッシュなどを吹きかけて対応するとよいでしょう。

食べたら危険な虫は?

食べても問題のない虫が多いのですが、以下のように「食べると危険」な虫も存在します。

ハチ

刺される危険があることから、ハチは食べないほうがよい虫のひとつです。特にスズメバチなど獰猛なハチは毒針で刺してきます。刺されれば炎症を起こしたりしたり化膿したりします。最悪の場合にはアナフィラキシーショックを起こし、死に至ることもあります。山や草木が生い茂る場所にはハチが巣をつくっていることも多いので、十分な注意が必要です。

ヒアリ

危険な外来生物であるヒアリは「殺人アリ」として知られ、日本でも発見されています。アルカロイド系の毒をもっているため、刺された場合にはアナフィラキシーショック、蕁麻疹、痛み、痒みなどが起こります。犬が口にした際には、口周りなどを中心に毒針で刺される危険性があります。周りには数多くのヒアリが存在しているため、手足なども複数個所を刺される可能性があります。最悪の場合には、アナフィラキシーショックにより死に至ることもありますので、十分な注意が必要です。

ゴキブリ

ゴキブリは犬が食べても健康を害することはありませんが、室内や家の周りにゴキブリ用の殺虫剤やホウ酸団子などを置いている場合には、ゴキブリの体内に殺虫成分が付着している場合があります。特にホウ酸団子に含まれるホウ酸は、ゴキブリだけでなく犬にとっても有害です。犬の場合は1.8g/㎏が致死量となり、体の小さな超小型犬や子犬にとっては命に関わる事態になりかねません。充分な注意が必要です。

ガ(蛾)

ひらひらと目の前を飛び回る蛾は、犬にとってまさに獲物です。犬が食べても健康を害することはありませんが、蛾の種類によっては食べるとまずい蛾もいます。捕食をされないように蛾が自ら進化したものだとされています。口にすると犬は吐く、咳をするなどすることがあります。種類によっては注意が必要です。

ハエ

ハエも蛾と同様に目の前を飛び回るので、犬には追いかけるのが楽しい獲物です。しかし、ハエはゴミや排泄物などに集まり接触することが多く、不衛生な虫ともいえます。犬が食べることでその雑菌を体内に入れてしまうことになります。体調を崩す可能性がありますので、注意が必要です。

カエル・トカゲ・ヘビは食べても大丈夫?

虫だけでなく、この時期にはカエルなどの両生類、トカゲやヘビなどの爬虫類が多く見られます。それぞれ小型の場合には目の前をピョンピョン、チョロチョロと動き回るので、犬は追いかけてパクッと食べてしまいがちです。しかし、種類によっては毒性物質を持っているので注意が必要です。特にヒキガエルは「ブフォトキシン」という毒性物質を持っていて、その毒素が体内に入ると、嘔吐や下痢、呼吸困難などを引き起こします。最悪の場合には死に至ることもありますので、十分な注意が必要です。

また、カエルやヘビには「マンソン裂頭条虫」という寄生虫が寄生していることが多いとされています。マンソン裂頭条虫症は人獣共通感染症のひとつで、人にも犬にも寄生します。万が一、愛犬への寄生が疑われる際には、動物病院を受診しましょう。駆虫薬の投与で治療します。

そして、犬が散歩をしている最中にヘビを見つけ捕獲したところ、マムシだったという報告もあります。マムシは猛毒を持っているので、犬が咬まれれば人間と同様に重篤な状態に陥ります。もし、咬まれた場合には、1秒でも早く動物病院へ連れて行き治療を受けさせる必要があります。最悪の場合には死に至ることもありますので、十分な注意が必要です。

まとめ

殺虫成分が付着しているかもしれない虫、毒性を持つ虫やカエルやヘビなど、自然には食べると危険な虫や爬虫類がたくさん存在しています。また、食べてはみたもののその虫がまずくて吐いたり、咳をしたりすることもあります。

犬は虫のチョロチョロする動きに気を取られ、思わずパクッと食べてしまうことが多いのです。そのような危険な虫や両生類、爬虫類を愛犬が食べないように、飼い主はできるだけ注意してあげましょう。

[編集部]