猫との暮らしで知っておきたいこと Vol.92

【猫飼いTIPS】放っておくと重症化するおそれも。猫の口内炎の正体と治療法について知ろう

[2022/08/08 6:01 am | 編集部]

猫の口内炎(別名:難治性口内炎)は、口のなかの粘膜に起こる重度の炎症です。口内炎は、成猫の口のなかに多く存在する軽い炎症ではなく、歯肉炎や歯周炎をも遥かに超える痛みを伴います。

過度なよだれや食欲不振、体重減少、攻撃性、そしてなにより痛々しい姿につながる大きな問題です。今回は、猫の口内炎についてのお話です。

口内炎の原因

口内炎の原因は完全には解明されていませんが、多因子疾患であると考えられています。ウイルス性疾患だったり、慢性的な免疫刺激が原因であることもあります。また、歯に付着した歯垢がアレルギー反応を起こす事例も報告されています。

どんな猫でも口内炎を発症する可能性がありますが、特にサイアミーズやペルシャ、アビシニアンなどの純血種は、ほかの猫種よりも発症しやすくなっています。また、腎臓病や糖尿病を患っている猫も口内炎ができやすくなります。

口内炎の症状

歯ぐきの感染により、口臭が強くなります。歯ぐきはチェリーレッド(ピンクがかっている赤色)で、出血していることもあります。すでに歯が抜けている場合もあります。

多くの場合は毛並みが悪くなり、体重が減少していきますが、これらはすべて口腔内の痛みや不快感によるものと考えられます。ただし、猫の口内炎は、猫同士やほかの動物に感染することはありません。

口内炎の治療方法

猫の口内炎は、私たちと同じように特効薬はありません。口内炎は歯垢に対するアレルギー反応が強いため、獣医師による歯茎の上下のクリーニングから始めることが多いようです。また、抜歯を推奨される場合もあります。口腔内の感染症を抑えるために、抗生物質が有効なケースもあります。

自宅での口腔ケアは必要です。しかし、毎日ブラッシングしても歯垢は溜まってしまうため、口腔衛生を完璧に保つことは不可能です。多くの場合は、副腎皮質ステロイド(糖質コルチコイド)などの抗炎症薬が有効です。パルス療法と呼ばれる断続的な抗生剤治療が有効な猫もいます。また、低アレルゲン食が有効な場合もあります。

持続性のある症例では、小臼歯や大臼歯の抜歯が必要になることがあります。炎症、歯周病、吸収病巣(歯に穴が開く)の影響を受けている歯をすべて抜くことが、現在もっとも高い成功率を示しています。また、歯槽骨も除去することが望ましいとされています。抜歯後は痛みを和らげ、炎症を抑えるために特に注意が必要です。

外科的治療を行っても改善されない場合は、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)治療を行うこともあります。ただし、この治療は歯垢を除去するために、毎月繰り返す必要があります。

もし、すべての試みが失敗した場合は、最終的な医療ステップとして免疫抑制剤を使用して、痛みを抑制することになります。

口内炎の予防

残念ながら、口内炎を予防する方法は今のところありません。軽症であれば、歯磨きで発症を抑止できるかもしれませんが、歯垢に対する過剰な免疫反応を防ぐことはできません。

口内炎は口腔がんと混同されることがあるので、疑いがある場合はできるだけ早く動物病院で診断してもらいましょう。治療せずに放置しておくと、痛みを制御するのに時間がかかります。

まとめ

口内炎の原因はまだ分からないことが多いため、画期的な治療法や特効薬はありません。ただし、定期的な口腔ケアをすることにより、猫のQOLを向上させることは可能です。また、早期発見により治療の幅が広がります。よだれを垂らしていたり、食欲がない、明らかに体重が減っているような症状が見られた場合は、すみやかに診察してもらいましょう。

重度の猫では治療に数カ月かかる場合もあります。すべての歯を抜いたあとでも、術後2カ月以内に顕著な改善を見ることができ、ドライフードなど硬いものを好んで食べるという研究結果もあります。

しかし、あらゆる治療法を尽くしても、ごく一部の猫には改善が見られず痛みに苦しみ続け、衰弱していく場合があります。欧米では、人道的な観点から安楽死を選択する飼い主もいるようです。

[編集部]