猫との暮らしで知っておきたいこと Vol.87

【猫飼いTIPS】猫は臭いモノが好きなの!? 

[2022/07/04 6:01 am | 編集部]

先日、「うちの愛猫が足のニオイが好きなんですけど変ですよね?」という相談を受けました。暖かくなり、裸足で生活するようになって気になりだしたようです。気づけば足の指の間をクンクンしているのだそう。

確かに、調べてみると脱いだ靴下や汗をかいた服の上で寝転んだり、靴をおもちゃにしていたりする猫が多いことがわかりました。いつも自分でグルーミングするキレイ好きな猫には、意外な行動ですよね。今回は、なぜ猫がちょっと微妙なニオイが好きなのかというお話です。

みんな臭いモノが大好き

臭いものに惹かれる動物は、猫だけではありません。動物にとって嗅覚は、餌を探したり、ほかの動物とのコミュニケーションや、周辺の環境を知るために非常に重要なものです。

私たちが視覚に頼っているのと同じように、動物たちも嗅覚に頼っているのです。人間は視覚野が優位ですが、嗅覚の強い動物は嗅覚野が優位なのです。

猫の嗅覚

鼻腔内の嗅覚受容体の数が、嗅覚の強さと比例していることが研究により明らかになっています。人間の嗅覚受容体が500万個であるのに対し、猫の嗅覚受容体は正確には分かっていませんが1億個近くあると言われています。そのことから、猫の嗅覚は私たちよりも約20倍も強いということになります。

さらに、頬や口の周り、あごの下、耳のすぐ下の額などにも嗅ぎ分けのための分泌腺があります。猫は薄暗い光のなかでも見ることができますが、視力は人間の1/10程度しかありません。人間は嗅覚の弱さを視力で補い、猫は視力の弱さを嗅覚で補っているといえます。

猫はニオイで識別する

猫は、鼻腔内に「鋤鼻器(じょびき)」という嗅覚器官を持っています。別名ヤコブソン器官とも呼ばれています。

鋤鼻器は、猫がニオイを嗅ぎ分けるための超感覚的嗅覚器官ともいえます。虫眼鏡が私たちの視力を補うためにあるように、鋤鼻器は猫の嗅覚を補うものであると考えるとわかりやすいかもしれません。猫は鋤鼻器を使って、ニオイをより正確に識別しているのです。

鋤鼻器を刺激すると、舌を出したり、口を大きく開けたり、マズルにシワを寄せたりすることがあります。これはギャッピングやフレーメン反応とも呼ばれます。大型種の猫や犬、馬も同じような動作が見られます。

猫は嗅覚でモノを識別しています。猫同士では鼻を触れ合って挨拶します。また、相手のニオイを嗅いだり、自分のニオイをこすりつけたりして、安全のための目印にすることもするそうです。

ときどき、猫がほかの猫のお尻のニオイを嗅いていることにお気づきでしょうか。これは、肛門腺(嚢)から発せられるニオイが個体ごとに異なるためで、これも相手の身元を確認するためのひとつの方法なのです。

安らぎの香り

猫は大好きな人のニオイに癒されます。仕事などで外出するときは、着用した衣類を出しておきましょう。分離不安のある猫は、あなたのニオイに癒されて、帰宅したらその上で寝ているかもしれません。

靴のなかには、あなたの汗やニオイが多く含まれています。また、臭い靴のなかには、暖かく湿った環境に引き寄せられた細菌がいます。靴の底は、好奇心旺盛な猫にとって、格好のターゲットです。草や土、床の香り、そしてほかの人や動物の香りを感じ取るのです。

また、汗をかいた衣服も好奇心旺盛な猫にとっては魅力的なものです。特に、腋の下やデリケートゾーンにあるアポクリン汗腺からは、中性脂肪や脂肪酸といった脂肪やタンパク質、尿素やアンモニアなどが分泌され、強力なニオイを発生します。

猫が衣服に異常な興味を示すのは、このニオイとあなたのニオイが高濃度であることが理由かもしれません。きっと、愛猫は大好きな私たちのニオイに包まれて幸福感に浸っているのでしょう。

まとめ

犬ほどではないにせよ、猫も鋭い嗅覚をつかってモノを識別したりコミュニケーションをしています。猫同士、猫と人、猫とモノ。ニオイは猫にとっても重要な要素なのでしょう。編集部の猫も、甘える前にまずニオイを確かめます。それは、新しいニオイの中に自分が安心できるニオイを探しているのかもしれません。

最近は、衣類の柔軟剤や猫砂などにも、香りの強いものがあります。私たちとってはいい香りかもしれませんが、猫たちにとっては強すぎるかもしれません。愛猫が甘えてくれなくなった、トイレ以外で排泄をするようになったなど変化が見られる場合は、見直してみるのもいいでしょう。

[編集部]