猫との暮らしで知っておきたいこと Vol.44

【猫飼いTIPS】猫の「ルーズスキン」っていったい何?

[2021/07/02 6:01 am | 編集部]

猫のお腹の肉がタプタプしているのを見たことがありますか? 太っているようには見えないけど、何故かお腹の肉だけがたるんでいる……。お腹から後ろ足の付け根にかけて皮膚が伸びていて、歩くたびに左右にそれが揺れています。じつはこのお腹のたるみは「ルーズスキン」と呼ばれるもので、猫の特徴のひとつなのです。今回は猫のルーズスキンについてのお話です。

野生の猫種にも見られるルーズスキン

ルーズスキンの「ルーズ(Loose)」とは「しまりがない」「ゆとりがある」という意味です。「スキン(Skin)」は皮膚を表します。その言葉のとおり、「たるんでいる皮膚」ということです。

しかし、これはあくまでも日本での呼び名であり、英語では「プライモーディアル ポーチ(Primordial Pouch)」と呼ばれています。その意味は「原始的な袋」です。このルーズスキンは猫だけでなく、猫科のトラやライオン、チーター、ヒョウ等にも見られ、野生に近いほどよく見られるとされています。原始の猫科の動物から脈々と受け継がれ、袋のように見えることからそう呼ばれているようです。

また、猫の種類によってできやすいといわれる猫種もいます。もちろん、個体差はありますが、アメリカンショートヘアやエジプシャンマウ、ベンガル、ピクシーボブなどに多く見られるそうです。これらの猫種はルーズスキンを持っていることが標準と考えている猫団体もあるので、キャットショーなどの評価の基準に入れられて、大きなルーズスキンであるほど高評価を得られることがあるようです。

ルーズスキンは脂肪なの?

猫がルーズスキンを揺らしながら歩いている様子を見ると、肥満だと勘違いしてしまいますが、ルーズスキンは肥満とは関係なく、また脂肪とは異なるものです。その名前のとおり、皮が余っている皮膚のことを指します。肥満かどうかは関係ありません。また、猫の年齢や種類、性別に関わらず見られるものです。大きさもさまざまで、健康になんら問題があるわけではなく、猫の成長とともに徐々にできてきます。1歳以上の猫に多く見られるものです。

もし、触って皮だけでなく脂肪が触れた場合には、ルーズスキンではなく肥満の可能性があります。ほかにも何か触れる場合には病気の可能性があります。それが腹部膨張やしこりであれば、腹水や癌などの可能性もあります。そのような場合には早期に獣医師の診断を受けるようにしましょう。

ルーズスキンの役割は?

猫のルーズスキンには以下のとおり、いくつかの大切な役割があります。

【腹部の臓器を守るため】
猫は寝るときにはお腹を中心に丸まって寝ることが多いと思います。腹部には心臓や内臓など生きるために必要な臓器が詰まっています。それを守るために丸まって寝ることが多いといわれています。ルーズスキンはたるんだ皮膚であるため、ほかの動物からの攻撃から大切な腹部を守るのに最適なのです。牙や爪が内蔵に届くことを防げるのです。室内で飼われている猫は外敵から襲われることはほとんどないので、ルーズスキンを持つ子が比較的少ないといわれています。もし、持っていたとしたら、より野生に近いのだと考えられます。

【足や体の動きを良くするため】
猫は瞬発力が高く、ジャンプをしたり、アクロバティックな動きをすることが多いため、体も柔軟性がある構造になっています。それらの動作には皮膚が引っ張られて突っ張ることがないように、皮膚に余裕が必要です。また、足の関節も大きく動かす必要があり、そのためにも皮膚の余裕は必要です。特に後ろ足はもともと関節の可動域が広いので、足を容易に動かせるようにルーズスキンが発達したと考えられているのです。

【食料を貯蔵するため】
ネコ科のトラやライオン、チーター、ヒョウ等の野生動物は、日々狩りをして生活しています。しかし、その狩りは毎日成功するわけではありません。生き延びるためには狩りに成功したときに、できるだけ多く食べておく必要があります。そのため、ルーズスキンが発達したとも考えられています。皮膚に余裕があれば、お腹が膨らんでも大丈夫というわけです。


まとめ

ルーズスキンは猫の大切なお腹の臓器を守り、猫の活動を助けている大切なたるみです。ルーズスキンを持った猫は多少外見がかっこ悪いかもしれませんが、じつはより野生に近い頼もしい猫なのです。そう考えるとルーズスキンを持った猫の見方が大きく変わることでしょう。

しかし、もし愛猫にお腹のたるみがある場合には、ルーズスキンなのか、肥満なのかを見極めることが大切です。肥満であれば健康にはよくありません。しっかりと見極めて、肥満であればダイエットを考えてあげましょう。

[編集部]