猫との暮らしで知っておきたいこと Vol.172

【猫飼いTIPS】猫が首をかしげる仕草はかわいいだけじゃない。疾患の可能性と治療法とは

[2024/04/12 6:01 am | 編集部]

ふと愛猫に目をやると、首をかしげた愛らしいポーズであなたをを見つめていることがあります。確かに、その仕草は本当にかわいらしく感じますが、何か深刻な症状の可能性もあります。

猫が音や動作に注意を向けているだけなのか、それとも何か問題の徴候なのか気になるでしょう。幸いなことに、首をかしげるのが正常なのか、それとも心配すべきことなのかを判断する手がかりがいくつかあります。

なぜ猫は首をかしげるのか

猫が首をかしげるのは、何かをじっくりと観察しているときや、物音に耳を傾けているときです。猫の脳は、左右の耳に音が届く時間差に基づいて距離を三角測定します。つまり、頭をかしげることで片方の耳を音に近づけ、距離を正確に把握するのです。

猫が耳を傾けているのか、何か問題を抱えているのかを見分ける簡単な方法は、名前を呼んだり、注意を引くことです。通常であれば、あなたの声を聞くとすぐに姿勢を正すでしょう。

一方、何か問題を抱えている場合は、バランスを崩したり、歩行しようとしてつまづいたり転倒したりすることがあります。このような場合は、ずっと首をかしげたままだったり、頭が静止していても目が動いているなどの異常が見えることがあります。

首をかしげる原因

猫が何かの物音に耳を傾けていたり観察しているとき以外で、獣医学的な問題を抱えている場合に考えられる原因は次のとおりです。

内耳炎

首をかしげるもっとも一般的な原因は、内耳の感染症です。猫がバランスを保つのに役立つ神経に炎症を起こし、食事がうまくできなかったり、食事中に痛がったりすることがあります。ときには、顔が片方に垂れ下がっているように見えることもあります。多くの場合、片方の目の「第三のまぶた」が盛り上がってきます。

このような内耳炎に対して、数カ月にわたる抗生物質の投与や手術が必要となる場合もあります。ただし、ほとんどの場合、回復します。

特発性前庭疾患

首のかしげは、特発性前庭疾患によって引き起こされることもあります。原因が不明で平衡感覚を失うことがあり、頭が静止していても目が動いているなどの異常が見えることがあります。

通常は数日で治癒することがありますが、症状はより重篤な疾患と同じであるため、これらの徴候を示した場合は、すぐに検査を受ける必要があります。

薬物反応

一部の猫では、特に点耳薬の薬物有害反応(ADR)や薬物毒性によって、首がかしげることがあります。症状が現れる直前に新しい薬を使い始めた場合は、獣医師に連絡して副作用の可能性があるかどうかを確認する必要があります。

腫瘍

耳内の腫瘍やポリープは、猫が首をかしげる原因として非常に一般的です。これらの腫瘍は、良性であろうとなかろうと成長すると神経を圧迫します。

その結果、炎症や平衡覚に障害が起こります。これらの腫瘍は炎症、感染症、慢性刺激から生じることがあり、前がん性またはがん性であることもあります。多くの場合、これらの腫瘍が摘出されると状態が改善されます。

首かしげの診断

首をかしげている原因を診断するのは難しいことです。外耳道は骨に囲まれているため、特別な検査を行わないと問題を確認することができません。

診断は、獣医師が外耳道の奥にある鼓膜を観察する徹底的な身体検査から始まるでしょう。鼓膜に異常や破裂が見られる場合は、追加の検査が必要になることもあります。

次のステップでは鎮静剤を使用した検査が行われます。鎮静剤を使用することで、外耳道や喉の奥を観察しやすくなります。ほとんどの場合、猫に鎮静剤を投与した状態でX線(レントゲン)撮影も行われます。感染が疑われる場合は、中耳や内耳からサンプルを採取することもあります。

特に診察が困難なケースでは、CTやMRIなどの画像診断が推奨されます。また、外耳道だけでなく脳に懸念がある場合は、CSFタップテスト(脳脊髄液排除試験)が行われることもあります。

首かしげの治療

治療方法は、猫がかしげる原因によって異なります。内耳感染症の場合は抗生物質の長期投与が必要となります。また、ウイルス感染や免疫疾患のように炎症のみを伴う場合は、抗炎症薬処方されます。

特発性前庭疾患は治療を行わなくても自然に治る可能性がありますが、方向感覚を失ったり平衡感覚を崩したりしている場合は、吐き気止めやその他の治療薬が有効なこともあります。

嚢胞、ポリープ、腫瘍など何らかの腫瘤がある場合は、外科的手術により摘出する必要があります。

まとめ

首のかしげは、治療しなくても治る症状もありますが、できるだけ早く獣医師の診察を受けることをオススメします。感染症や腫瘍などの病変は時間とともに悪化する可能性が高く、診断が遅れると長期的なダメージを引き起こす可能性があります。

[編集部]