犬は、いろいろな方法で飼い主の注意を引きます。そのなかでも、前足はとても有効な手段です。子犬は、前足で母犬の乳首をふみふみすると母乳が出ることを本能で知っています。
成長するにつれて、ほかの場面でも前足がよい結果をもたらすことを学習します。今回は、この前足を使った動作「Pawing(パウイング)のお話です。
犬があなたに前足で何かを伝える理由
プードル、シベリアンハスキー、サモエド、秋田犬など、特に前足を器用に使う犬種がいますが、どの犬もコミュニケーションのために前足を使うことがあります。
それは何かを要求したり、宥和的なジェスチャーで脅威ではないことを示したりするものです。また、恐怖や不安のサインだったり、あるいは警告の意味の場合もあります。ここでは、犬が前足をつかってあなたにじゃれつく一般的な動機をいくつか挙げてみましょう。
トイレに行きたがっている
朝、愛犬に起こされることはありませんか? トイレに行きたいのかもしれません。もし、前足であなたに起きることを促すことでトイレに行けると学習すると、朝でなくてもトイレに行きたくなったらいつでもこの動作をするでしょう。また、同じ状況で、抱っこしたりしていませんか? そうなると、抱っこされたい時は、いつも前足を使って要求し続けるでしょう。
このように愛犬の要求に対してあなたが何をしようと、それはおそらく彼らが望んでいた反応です。あなたの反応は、その状況で前足が有効であるという認識を強化したことになるのです。
食事の催促
お腹が空いたのに、あなたは食事の時間を過ぎていることに気づいていないかもしれません。愛犬はあなたをじっと見つめることで、食事の時間であることをアピールするでしょう。それでもダメなら、さらに行動を起こします。前足であなたをつっついたり、それでもダメなら前足でフードボウルを移動させたりするかもしれません。
愛情表現
愛犬を撫でているときに、前足をあなたの足や膝のうえに置いているのなら、それはリラックスしていたり、あなたへの愛情を示している可能性が高いです。それを確かめるには、撫でるのをやめたときに愛犬がどのような行動をとるのかでわかります。鼻を鳴らしたり、前足であなたをつっついて催促したりしたとしたら、あなたにもっと撫でてほしいという意思表示をしているのです。
退屈している
私たちと同じように、犬にも身体的な活動(運動)と精神的な刺激が必要です。退屈している犬は、前足で「ねえ、何かしようよ」催促するでしょう。これは、彼らの欲求を満たすために破壊的な活動、たとえば家具をかじったり、ゴミ箱をひっくり返したりするよりもずっといいことです。あなたの犬は、あなたに撫でてほしい、一緒に遊びたい、散歩に行きたいと要求しているのです。
パーソナルディスタンスを主張している
あなたの顔や体を前足で押し返す(押し出す)のは、おそらく犬がその行為を止めてほしいというサインです。たとえば、顔を近づけすぎていたり、キスしようとしていませんか? 愛犬にとって近すぎるのかもしれません。また、抱っこしているときであれば、抱っこされるのが嫌だと伝えているのです。
犬があなた以外にも前足を使う理由
犬が前足であなたに要求や意思表示をするだけでなく、自分自身やほかの動物や物体にも前足を使うのは普通のことです。その動作を読み取る方法は次のとおりです。
不快感や疾患
愛犬が頻繁に耳や口を掻くようなら、それは不快感や痛みを示している可能性が高いです。耳が汚れていたり、歯に何か詰まっているのかもしれませんが、感染症やアレルギーの可能性もあります。そういった場合は、動物病院で診察してもらうのがよいでしょう。
親愛のサイン
ほかの犬や動物に前足をかけるのは、犬が遊びたがっている証拠です。犬は幼いうちから、前足を使って優しくじゃれ合うことが「遊ぼう!」という意思表示であることを学びます。ただし、相手には十分に注意が必要です。対象が明らかに小さい(例えば大型犬と小型犬、猫など)場合は、意図せず怪我をする可能性があります。
学習
犬は遊びのなかで、前足を使っておもちゃやいろいろな物をはじいたりひっくり返したりします。対象物を動かすことで、追いかけたり、掴んだり、制圧するなどより楽しくインタラクティブになります。これは、森で暮らしていたころに小さな生き物を捕獲した名残なのかもしれません。
必要以上のパウイングを止めさせる方法
犬はボディランゲージでコミュニケーションをとります。愛犬が自分の欲求を表現するのに前足を使うのは一般的なものです。
しかし、それが過度で手に負えなくなっることもあります。その場合は、ポジティブトレーニングを使って、愛犬に別の方法で注意を引くように仕向けることができます。
たとえば、愛犬が自分に注意を向けてほしいときに、あなたの手をソフトタッチするように教えることができます。その方法は次のとおりです。
【STEP1】
愛犬が前足であなたに触れてきたら、無視して数秒待ちます
【STEP2】
次に「タッチ」と言い、開いた手のひらを差し出します
【STEP3】
愛犬があなたの手の匂いを嗅いだらすぐにクリッカー(カチッと音を鳴らす器具)でその行動をマークし、褒めながら撫でます。おやつを与えるのも効果的です。
もうひとつの方法は、都合の悪い時間帯に愛犬がパウイングするのをコントールすることです。たとえば、在宅勤務でオンラインミーティングしているときに愛犬の要求は避けたいものです。あなたが対応しないと、泣いたり破壊行為したら大変です。
まとめ
愛犬があなたにパウイングするのは、自分の感情や要求を表現する自然な方法です。彼らのボディランゲージを読み解く方法を学ぶことで、イライラを避け、円滑なコミュニケーションが可能となります。
また、ポジティブトレーニングを使って、愛犬に正しい要求のしかたを教えるともできます。ぜひ、さらに絆を深めてください。