犬との暮らしで知っておきたいこと Vol.44

【犬飼いTIPS】飼い主必見! マイクロチップを正しく理解しよう

[2021/05/28 6:01 am | 編集部]

2019年改正動物愛護法で「マイクロチップの装着等の義務化」が定められました。公布から3年以内に施行されるものとして、登録機関などの整備等が行われています。その内容は、犬猫等販売業者のマイクロチップ装着・情報登録の義務化、マイクロチップを装着した犬猫を譲り受けた者の変更登録の義務化などで、一般の飼い主へのマイクロチップの装着、情報登録は努力義務とされています。

これは動物愛護管理法の「動物の所有者は動物が自己の所有に係るものであることを明示する措置をとる」という観点からの提言です。しかし、このマイクロチップを巡っては、その機能において勘違いをしている人が多く見受けられます。今回はマイクロチップを正しく理解するためのお話です。

そもそもマイクロチップってなに?

マイクロチップは個体識別器具のことで、固有の番号を記憶した電子タグを動物の体内に埋め込んで使用します。犬や猫の場合は背側頸部(首の後ろ)の皮下深部に埋め込みます。装着は瞬時に行われ、動物への負担も少なく、耐久性に優れ、安全で確実な個体識別法といわれています。

個体番号の読み取りはマイクロチップリーダーという専用の読み取り機で行います。リーダーは動物病院、地方自治体の動物愛護相談センター、環境省地方環境事務所などが保有しています。マイクロチップは犬や猫はもちろん、ウサギ、ハムスターなどの小動物にも装着可能です。

欧米では当たり前のようにペットに装着されていて、世界中の動物園などでは哺乳類や鳥類、爬虫類に両生類、魚類など、ほとんどの動物の個体識別に使用されています(EU全域では約2500万頭、アメリカでは約1000万頭、オセアニアやアジアの一部でも埋め込みの義務化が急速に進んでいる)。

動物用のマイクロチップは、長さ8~12㎜、直径2㎜程度の円筒形をしています。内部にはICやコンデンサ、コイルアンテナが内蔵されています。電池式ではなく、30年程度の耐久性があります。表面は動物に副作用がないように生体適合ガラス、あるいはポリマーで密封されています。

埋め込みが獣医師により適切に行われている限り、動物の身体に負担をかけることはないとされています。装着した動物が病気や怪我をした際にレントゲンやCT、MRIに影響があるのではないかとの懸念がありますが、1.5ステラ以上のMRI画像が多少乱れるほかは、問題がないと報告されています。

日本で流通されているマイクロチップは、国際標準化機構(ISO)の規格で統一されています。起動周波数は134.2㎑で、15桁の数字で個体管理しています。この規格はヨーロッパやオセアニア、多くのアジア地域で使用されています。アメリカや香港では違う規格のものも流通しています。

出典:環境省「マイクロチップによる動物の個体識別の概要」

マイクロチップの義務化の目的は?どんな時に役立つの?

マイクロチップの義務化にはいくつかの目的があります。動物の所有者が誰であるかを明確にすることで、社会問題となっている動物の遺棄や危害防止、盗難や取り違えの防止、迷子時などの飼育者特定の容易化、さらには災害発生時などにおける動物救助・管理をスムーズにすること。また、「命ある動物に対する責任」「地域社会に対する責任」など動物の所有者としての責任を明確にするという目的も持ち合わせています。具体的には下記のような効果があります。

【動物愛護としての効果】
・迷子、逸走動物の所有者の発見
・事故に遭遇した動物の所有者の発見
・災害時の迅速な対応
・動物の盗難時の対応(所有者の証明)
・遺棄の防止(心理的抑制効果と罰則適用)


【動物の適性管理としての効果】
・迷惑防止(地域との共生)
・危害の防止
・動物の健康管理(病歴等の効率的管理)
・トレーサビリティの確保(感染症対策、産業動物の履歴情報等)
・動物輸出入時の個体管理
・血統の登録管理
・外来種対策

マイクロチップにGPS機能はありません

マイクロチップは、内部にアンテナ(コイルアンテナ)が内蔵されているということで、GPS機能があると間違った認識をしている人が多くいます。しかし、マイクロチップにはGPS機能はなく、装着しているペットが迷子になった、逃げ出してしまったからといって位置情報から見つけ出せるわけではありません。

前述した「迷子になって保護されたときに、身元がすぐに確認できる」というのは、保護した動物のマイクロチップをリーダーで読み取り、15桁の数字が確認された時点で、管理・運営している公益財団法人日本獣医師会のデータベースと照合して、飼い主を特定するというものなのです。

マイクロチップ装着から登録までの流れは以下のとおりです。

【ステップ1】
動物病院の獣医師によるマイクロチップの装着(医療行為なので獣医師が行う)
【ステップ2】
動物の所有者は動物病院等で受け取った15桁の数字のバーコードシールが貼られた申込用紙の必要項目を記入し、登録料1050円の振り込みをしたうえで、公益財団法人日本獣医師会へ郵送(後日、登録完了のハガキが届く)。
【注意事項】
住所や連絡先の変更、所有者の変更、動物の死亡による削除の手続きは、動物の所有者が所定の方法で行う必要がある。


マイクロチップの装着の費用は、数千円から1万円くらいまでが一般的です。犬の5種混合ワクチンと同じくらいの価格設定にしている動物病院が多いようです。しかし、せっかく装着しても飼い主がきちんと所定の方法で登録料の支払いと登録を行わなければ、ペットが迷子になっても誰が飼い主なのか特定することはできません。必ず登録(データ登録)手続きをする必要があります。また、登録した情報が変更になったり、飼い主が変わった場合などにも手続きが必要です。忘れずに行うようにしましょう。

年に1度は読み取りテストをしよう

マイクロチップは脱落(マイクロチップが抜けてしまうこと)することがあります。脱落のほとんどは埋め込み時に起こるといわれています。そのため、獣医師はマイクロチップの装着後に確実に装着できたかをリーダーで読み取って確認をします。しかし、装着時以外にも稀ではありますが、何らかの拍子に抜け落ちてしまうことがあるようです(装着位置がずれている場合もあります)。定期健診やワクチン接種時などで動物病院へ出向いたときには、マイクロチップの読み取りテストをしてもらいましょう。確実に番号が読めるかどうか確認しましょう。

まとめ

近年の日本では大きな自然災害が増えています。過去の災害では、家族の一員であるペットとはぐれてしまうケースが数多く報告されています。万が一のときにペットと再会するためには、その確率が上がるマイクロチップの装着は不可欠だと考えます。マイクロチップは動物たちの「戸籍」です。ぜひ、前向きに検討してはいかがでしょうか。

[編集部]