猫との暮らしで知っておきたいこと Vol.150

【猫飼いTIPS】愛猫に口内炎ができた!? ~その症状と治療・ケアについて知ろう

[2023/10/27 6:01 am | 編集部]

愛猫におやつをあげると、たいていは喜んで食べるでしょう。しかし、食べづらそうにしたり、前足で口を拭くような動作をする場合は、口腔内の健康に問題があるのかもしれません。

猫の口内炎は「猫慢性歯肉口内炎(FCGS)」とも呼ばれる、痛みを伴う炎症性疾患です。原因は解明されておらず、予防は難しいとされていますが、早期発見と治療で猫のQOLを維持することは可能です。

猫の口内炎とは?

口内炎は“複雑な状態”であり、根本的な原因は不明です。一説によると、病因は多因子性であり、猫の免疫システムが歯垢や口腔内の細菌やウイルスに有害反応(過剰反応)して発症すると考えられています。

猫の口内炎は歯茎や頬の内側など、口のなかのあらゆる粘膜にできる痛みを伴う腫れです。放置しておくと悪化して歯周炎になり、歯が抜けてしまうこともあります。

最近の研究では、猫カリシウイルス(FCV)が一因である可能性が示唆されています。また、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)など免疫系に影響を及ぼす可能性のあるレトロウイルスは、直接の関連性はありませんが、何らかの役割を果たしている可能性はあると考えられています。

猫の口内炎に伝染性はありません。個々の猫における免疫系の異常な過剰反応であるため、一緒に暮らすほかの猫や犬、人間には感染しません。

猫の口内炎の症状

猫の口内炎は死に至るものではありませんが、非常に強い痛みを伴い、猫のQOLを著しく低下させます。口内炎の症状には次のようなものがあります。

・口臭の悪化(もっとも気づきやすい)
・多量のよだれ(血が混じることもある)
・つねに口を気にする(パクパクしたり触ったり)
・極端に食事量が減る(体重の減少)


これらはシニア猫にも見られるものですが、若い猫に見られる場合は口内炎の可能性が高いので、すみやかに動物病院で診察を受けることをオススメします。

口内炎は、口腔組織の重度の炎症に起因する慢性疾患です。一般的に口腔内の粘膜が、真っ赤で、出血しやすく、敷石像(粘膜がもり上がり丸い石を敷き詰めたように見える状態)を呈することがあります。

炎症部位によってふたつの病型があります。まずは歯茎と歯周組織に炎症が起こるものです。ふたつ目は歯肉や口腔粘膜が赤く腫れたり、爛れる「尾側口内炎」です。口蓋や口峡と呼ばれる口腔のもっとも奥の部分に炎症が起こります。尾側口内炎は治療がより困難です。

猫の口内炎治療

猫の口のなかの細菌をできるだけ減らす必要があります。しかし、重度の口内炎を患っている猫は、少量の細菌や歯垢でも炎症が悪化したり、再発することがあります。

家庭での歯磨きなどデンタルケアが効果的と考える飼い主さんも多いのですが、口内炎対しての効果は限定的です。歯磨きは定期的に行う必要があり、猫にとっては苦痛です。むしろ、愛猫との絆を壊しかねません。

口内炎の初期治療には、抗炎症剤や抗生物質、抗ウイルス剤などが処方されますが、投薬による治療効果は一定ではありません。

現在推奨されている治療法は、一部または全部を抜歯する外科的手術です。ただし、その場合でも一般の獣医ではなく、歯科専門獣医の診断が必要となります。

抜歯は荒治療に思えるかもしれませんが、痛みを取り除き、愛猫の生活の質を向上させるのには役立ちます。ただ、抜歯後すぐに元のようになるのは難しく、炎症の程度や個体差(免疫力)によって回復の時間はまちまちです。数日で元気を取り戻すこともあれば、数カ月かかることもあります。ただ、元気だったころほどではないにしても、ちゃんと食べられるようにはなります。

まとめ

猫の口内炎(FCGS)は、10%程度の猫が罹患しているといわれています。免疫系の異常反応であることはわかっていますが、正確な原因は依然として謎のままです。

初期段階では投薬による治療が行われますが、症状が進行すると抜歯を提案されることになります。聞いただけでショックを受けるかもしれません。しかし、研究によると抜歯を受けた猫のうち90%が治癒したことが示されています。

口内炎で命を落とすことはありませんが、絶え間ない痛みから食べなくなり急激な体重減少を引き起こしたり、性格が変わってしまうこともあります。まずは口腔内の以上を見逃さないこと。そして早期診断と包括的なケアが、よりよい生活を送る鍵になります。

[編集部]