猫との暮らしで知っておきたいこと Vol.109

【猫飼いTIPS】猫に生の鶏肉はOK? 与える前に知っておきたいこと

[2022/11/28 6:01 am | 編集部]

猫は完全な肉食動物であり、生きるためには動物性食品を食べなければなりません。脂肪酸やタウリン、そのほかの必須ビタミンなど、肉に含まれる栄養素を含む高タンパク質の食事が必要です。

野生の猫は、生の肉や骨、内臓を食べているので、猫にも生食のほうがよいという意見もあります。では、愛猫にも生肉を与えてもいいのでしょうか。今回は「生食」についてのお話です。

猫は鶏肉を生で食べてもいい?

猫は生の鶏肉を食べることができます。また、調理することで肉に含まれる栄養素が変化してしまうため、生食は理想とされる面もあります。しかし、生食にはリスクが伴うため、必ずしもオススメできません。

2012年には、米国動物病院協会(AAHA)が、全米猫獣医協会(AAFP)や全米州公衆衛生獣医師協会(NASPHV)の賛同のもと、猫の生食に反対する声明を発表しました。声明文には以下のように書かれています。

自家製の生食は安全ではありません。なぜなら人間用の小売肉は病原菌に汚染されている可能性があるからです。また、病原菌のなかには、複数の抗菌剤に耐性を持つものも少なくありません。生肉に含まれる病原菌の多くは、食品そのものやペット、環境を介して人間に感染する可能性があります。

猫に鶏肉を生で与えることの危険性とは?

猫に生の鶏肉を与える際の具体的な危険性は以下のとおりです。

細菌や寄生虫

猫は人間よりも生肉をより効率的に消化できますが、サルモネラ菌や大腸菌、リステリア菌、カンピロバクター菌などの細菌や、寄生虫にさらされる可能性があります。これらすべてが胃腸障害や潜在的な全身疾患を引き起こす可能性があります。

骨片

生の鶏肉にとともに摂取された骨片が食道や胃、または腸管に詰まり、窒息の危険を引き起こす可能性があります。場合によっては、鋭尖な骨片が腸管に突き刺さり、生命を脅かす敗血症を引き起こす危険性もあります。

栄養不足

生の鶏肉自体では栄養バランスがとれないため、唯一の食品として与えるべきではありません。猫には十分なレベルのタウリンが必要です。タウリンは子猫の心臓の健康に不可欠です。獣医師が承認したキャットフードは、健康的でバランスの取れた食事に必要な必須栄養素を猫に提供する最良の方法といえます。

猫が生の鶏肉を誤って食べてしまったら?

猫が適切に処理や調理されていない生の鶏肉を食べた場合は、猫の様子を見守ることが大切です。次の症状のいずれかが見られた際には、動物病院で診察を受けましょう。

・食欲不振
・嘔吐
・下痢
・丸まって動かない


猫用生鶏肉の安全な調理法

野生の猫は生肉を食べますが、飼い慣らされた家猫は加工された調理済みの食べ物に慣れています。それでも生の鶏肉を与えたい場合、安全に対してヒントがあります。

鶏肉が新鮮であることを確認する

まず、信頼できる店や加工工場で新鮮な生の鶏肉を購入することが大切です。鶏肉は時間が経つほど細菌が繁殖する可能性が高いので、猫に与えるまでのリードタイムは短ければ短いほどよいでしょう。有害な細菌を殺す急速冷凍または高圧殺菌処理(HPP)をした生肉を購入しましょう。

与える前に丁寧に下処理をする

生の鶏肉を下処理するときは、清潔な面(例えば食品衛生法に対応したラップやクッキングシートなど)で清潔な包丁で肉を切り、骨は取り除きます。猫には一度に食べきれる量だけを与え、残った肉は保存せず捨てる必要があります。

まとめ

現代の家庭で飼われている猫は、野生の猫と同じように肉を処理する能力が備わっていません。それは、腸管が野生の祖先のそれとは違うからです。

猫の生食には賛否両論があります。ただし安全を考えるのであれば、自宅での生食は避け、グリルや茹でたりして調理するほうがよいでしょう。もちろん、その際には塩やにんにく、玉ねぎなどの一般的な調味料は猫にとって有毒なので、避ける必要があります。

[編集部]