Lecture 03

【みんなで防災:第3回】住まいや飼育場所の防災対策

[2021/09/02 6:01 am | 編集部]

災害時にペットを守るためには、飼い主が無事でいることが前提となります。住まいの耐震強度の確認や補強、家具の固定など、まずは飼い主の身の安全のために備える必要があります。住まいを災害に強くしておくことが、飼い主とその家族、ペットの安全に繋がるからです。そのうえで、飼育場所の安全確保の備えが大切です。今回は日ごろからの災害への備えのお話です。

住まいの耐震強度の確認をする

大きな災害が増えるにつれて、家づくり・家選びにおける条件として、地震への強さを重要視する人が増えているそうです。そのひとつの目安として表示されているのが、「耐震等級」という基準です。これは地震で建物が倒壊しないよう、地震に対する構造躯体の倒壊・崩壊等のしにくさを表示したものです。耐震等級について一定の理解があれば、より安全・安心な選択ができるようになります。耐震等級を知っておくことで、自宅が地震に対してどのくらい耐えられるのかを判断することができます。耐震等級は下記の3つに区分されています。

■耐震等級1
建築基準法で定められており、建物に備わっているべき最低限の耐震性能を満たしていることを示すもので、震度6~7に相当する大地震に耐えられる強度を持つように構造計算されています。しかし、耐震等級1は数十年に1度の頻度で発生する震度5程度の地震について、建物の損傷防止に効果があるとされています。「震度」に幅があるのは、地震の被害状況から「震度」という値が定められるからです。実際の地震の性質等によっても震度は変わるので、あくまでもひとつの目安となります。

■耐震等級2
耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の倍率の耐震強度があることを示しています。「長期優良住宅」として認定されるには、この耐震等級2以上の強度が必要です。例えば、災害時の避難場所として指定される学校や病院・警察などの公共施設は、必ず耐震等級2以上の強度を持つことが定められています。

■耐震等級3
耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の耐震強度があることを示しています。住宅性能表示制度で定められた耐震性のなかでもっとも高いレベルであり、災害時の救護活動・災害復興の拠点となる消防署・警察署などは、その多くが耐震等級3で建設されています。


上記の指標「住宅性能表示制度」は2000年に制定されました。そのため、それ以前に建てられた建物に関しては、耐震等級の評価書がない場合があります。また、この制度自体が任意のため、耐震等級が明らかでない建物も多くあります。そのような場合には、築年数などをもとに耐震性を調査します。新耐震基準が定められた1981年以降に建築されている建物は、その新基準を満たしているので、耐震等級1以上の強度があるとみなすことができます。また、マンションなどの場合は、木造住宅などと比較して耐震等級をクリアするハードルが高く設けられています。

耐震等級を調べる方法としては「耐震診断」があります。耐震診断では自宅の構造的強度を調べ、想定される地震に対する安全性(耐震性)、受ける被害の程度を診断します。専門機関がありますので、診断したい場合には相談をするとよいでしょう。もし安全性が低い場合には、予算をかけて耐震強度をあげるか、地盤などの強さから耐震等級を考えてみるなど、さまざまな選択肢から備えをすることができます。

家具の固定や転倒・落下・移動防止対策を

近年の地震による負傷者の30~50%は、家具の転倒・落下・移動が原因となっています。まずは、なるべく部屋に物を置かないことが対策となります。納戸やクローゼット、押し入れ、据え付け収納家具に収納するなど、できるだけ生活空間に家具類を置かないようにします。

また、避難経路が確保できるレイアウトにすることも大切です。部屋の出入り口や廊下など避難経路には家具を置かないように家具配置のレイアウトを工夫しましょう。また、引き出しが飛び出さないように、置く方向を考えましょう。

家具のレイアウトを工夫したら、家具類の転倒・落下・移動防止対策を行います。もっとも強固で確実な方法は、L字金具で壁にネジ止めすることです。その方法が難しい場合には、突っ張り棒とストッパー、突っ張り棒と滑り止めマットを組み合わせて使用し、効果を高めましょう。また、キャスター付き家具の場合は、動かす頻度で対策を考えます。日常的に動かす場合には、移動時以外はキャスターをロック、定位置で固定の場合は、下皿をはめたり粘着シートを敷いたりして固定します。テーブル・椅子については、脚の部分の先端にゴムのカバーを装着するなどして滑らないようにします。

大きくゆっくりとした揺れが続く長周期地震動の場合には、吊り下げ式照明の揺れ、観賞用水槽やウォーターサーバーなどの水の揺れに対策が必要です。破損や水がこぼれるなどしないように、適切な器具で固定するようにしましょう。

飼育場所の対策を

住まいの対策ができたら、次は飼育場所の対策を行います。ペットが普段いる場所やケージなどは災害の時にペットが安全でいられるように、定期的に点検し、固定するなどの対策をしましょう。

【室内で飼っている場合】
 ペットが普段いる場所は、できるだけ家具などがないことが好ましいです。もし、家具などが周りにある場合には、地震時に倒れたりしないように日ごろからしっかりと固定しておきましょう。また、キャットタワーなども倒れる可能性が高いため、チェーンとフックなどを利用して、壁に固定するなど対策をしておくことが大切です。

 ケージを利用している場合には、そのケージの強度を確認しておきましょう。強度がない場合には、その上に物が落下したり、家具などが倒れたりした場合には、ケージがつぶれてペットが怪我をしてしまいます。最悪の場合には命を落とす可能性もありますので、注意が必要です。

【屋外で飼っている場合】
 飼育場所は、地震時に倒壊しやすいブロック塀やガラスの窓の下、物置などのそばは避けましょう。災害時にはペットが驚いて逃げ出す場合があります。首輪や鎖は外れたり、切れたりしていないか、ケージや囲いに破損個所や隙間はないかなど、定期的に点検をしておくことが大切です。

【ペットの避難場所(隠れる場所)の確保】
 普段は室内で自由に過ごしているペットも、災害時にはケージなど一時的に避難する場所が必要です。地震などで家の一部が倒壊する、ガラス窓が割れた場合には、そこからペットが逃げ出してしまうこともあります。そんな際に一時的に避難ができるように、ケージなどペットの避難場所(隠れる場所)を考えておきましょう。

まとめ

日ごろからの災害の備えがあるかないかで、その被害状況は大きく変わります。住まいや飼育場所の防災対策をしておくことが、飼い主とその家族、ペットの安全に繋がります。住まいの耐震強度を確認したり、家具の転倒・落下・移動対策をしたり、飼育場所の対策をしておくことで、高い安全性を確保することができます。災害は突然に起こります。今すぐ行動して、住まいや飼育場所をチェックしてみましょう。

第4回は、「ペットのしつけと健康管理」をテーマに話を進めます。

[編集部]