愛犬トラベラーのHappy紀行Vol.15

伊勢志摩にある総檜造りの隠れ宿で海を満喫する旅

[2020/08/07 6:01 am | ペットジャーナリスト 阪根美果]

三重県志摩市阿児町鵜方に位置する「檜扇荘(ひおうぎそう)」は、6000坪の敷地を誇る宿です。点在する客室棟やお風呂棟、英虞湾(あごわん)に突き出した桟橋には、いかだやクルーザーが浮かんでいます。そこでは、釣りをしたり、クルージングで英虞湾巡りをしたり、ブランコや卓球台があるくつろぎ広場で家族団欒をしたりと思い思いの時間を過ごすことができます。

今回もわが家の愛犬であるウイペットの「ジギーベイ&リーティラ」と1泊2日の旅に出かけました。天候が悪い日が続いているので心配していましたが、雲は多いもののこの日は晴れ。晴れ女(私)と晴れ男(犬)が揃っているようです(笑)。

車酔いを克服したか!?

千葉県在住の私は、自宅最寄りのインターチェンジから高速道路に乗ります。朝6時30分に出発。日曜日ということもあり渋滞はありませんでした。前回の旅では、リーティラは慣れてきたものの、クルマ酔いをしていました。ということで、今回もリーティラ用に後部座席に大きなクレートを用意し、そのなかに入ってもらっての移動です。港北PAで1回目の休憩。ケージをのぞくと、「あれ、クルマ酔いしてない!」。今までならこの時点で1回は吐いていたのですが、とてもよい傾向です。トイレを済ませて出発です。

その後は、初めて立ち寄る藤枝PAで休憩。クルマ酔いを克服したと思いましたが、この時点では少し吐いていました。でも、今までと比べれば吐く量も少ないし、よだれもなくなりました。やはり慣れるものですね。クルマから降りればリーティラは、何事もなかったかのように元気です。次回の旅では「克服」と期待したいと思います。ジギーベイは相変わらずで、助手席でおとなしく座っています。ときどき、景色を見たりしながら、のんびりとドライブを満喫です。

岐阜羽島で用事を済ませ、今夜の宿「檜扇荘」へ向かいます。桑名東ICで東名阪自動車道に乗り、亀山JCで伊勢湾岸道に入ります。そして、伊勢西ICで高速を降り、一般道を40分くらい走ります。檜扇荘の敷地へ入る道は、クルマ1台が通れるくらいの細い道です。運転が苦手な人は、「対向車が来たらどうしよう」とドキドキするかもしれません。しばらく走ると宿が見えてきます。駐車場にクルマを停めて、フロントがある建物に向かいました。

1日1組だけ「愛犬と泊まれるワンダフルな和室」

フロントで必要事項を記入して、チエックインします。宿泊できるのは基本的なしつけができている室内犬で、小型犬・中型犬・大型犬が宿泊可能。その宿泊料金は1頭につき2000円(税込)で、予約時に知らせる必要があります。1年以内の狂犬病予防接種・ワクチンを必ず行っていることが条件ですが、提示は求められませんでした。私は念のためコピー用意しておきました。一応、持参されたほうがよいかもしれません。

愛犬と一緒に泊まれる部屋は、2階にある約20畳の和室です。ほかの客室棟からは独立しているので、鳴き声もほとんど気にせず過ごすことができます。室内はとても清潔で、気になるニオイはまったくありません。お部屋は広いし、清潔だし、「快適に過ごせそう!!」と嬉しくなりました。

部屋にはトイレ、洗面所、食器洗い場、ミニ冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、換気扇、テレビなどが完備されています。すでに清潔なシーツに包まれた布団が敷いてありました。愛犬用に用意されているのは、大型犬も入れるくらいのケージひとつ(屋根なし)、トイレ(ワイド)、フードボール小ひとつ、ペットシーツ(ワイド)、瞬間消臭剤、ウエットティッシュ、新聞紙等です。それ以外の用意はありませんので、タオル、ビニール袋など必要なものは持参しました。ケージはひとつしかありませんので、多頭の場合には持参する必要があります。ジギーベイとリーティラは屋根のないケージだと、簡単によじ登って出てしまうので、大きなクレートと折り畳み式のケージを持参しました。また、室内は基本的にドッグフリーですが、布団の上に愛犬が乗ってしまうようなら、大きなカバーなどを持参すると安心だと思います。

荷物が多いと部屋まで運ぶのが大変なのですが、駐車場がすぐ横にあり、外階段の横にクルマをつければ、2Fまで荷物を運ぶのもラクです。必要なものは、気兼ねなくたくさんお持ちください。

まずは、玄関前のドッグランで大はしゃぎ

玄関前にはかなり広いスペース(20畳くらい)があります。外階段の上にも扉が付けられているので、ドッグランとして愛犬をフリーにして遊ばせることができます。全面レンガ調のタイルで、万が一、排泄をしてしまっても水で流せば問題ありません。しかも景色がとてもよく、そこから風光明媚な英虞湾の美しい海を眺めることができます。海が目の前ですが、潮風もベタつくことがなく清々しい。ジギーベイとリーティラが楽しんでいるのはもちろんのこと、私もとても癒されました。

宿の目の前の桟橋で釣りをする

檜扇荘は海に面していて、宿の目の前に桟橋があります。釣りを楽しんだり、その桟橋に係留してあるクルーザーに乗って、英虞湾巡りのクルージングも楽しむことができるのです。海の透明度も高いので、泳ぐ魚をそのまま見ることもできます。釣りをしたい場合には、自分の釣り竿を持参してもよいのですが、レンタルも可能。釣り竿500円、エサ500円をフロントで支払えば、時間制限なしで楽しめます。

私も子どもの頃を思い出して、釣りをすることにしました。もちろん、ジギーベイとリーティラも一緒で、桟橋まで行き、「ママ、お魚とって!」と応援です。そんなプレッシャーを感じながら、頑張ります。エサが苦手という人も多いと思いますが、ここのエサはエビなので大丈夫。頑張ること1時間。成果は3匹。ふぐ1匹とアジの仲間2匹でした。久々の釣りをとても楽しむことができました。ジギーベイとリーティラもバケツのなかにいる釣れた魚を眺めてみたり、海風に当たりながら昼寝をしたりといつもとは違う時間を過ごしました。

新鮮な食材を使用した自慢の食事を堪能

夕食は檜の香る西館のお食事処でいただきます。ここには愛犬は連れていくことができませんので、ジギーベイとリーティラは先に部屋で食事を済ませてお留守番です。今回予約したプランは「気軽に志摩の味を楽しむ♪朝獲れ新鮮!海鮮会席プラン♪」というものです。私はお刺身が苦手なので、船盛りなどが付いたプランではないものを予約しました。そのぶん、とてもリーズナブルになったのですが、新鮮でとてもおいしい料理が次々に出てきます。味も量も大満足のお食事でした。

途中、昼間に釣りでゲットしたお魚3匹も調理(有料)してもらいましたが、小さいお魚でしたので、驚くくらいに小さな唐揚げが出てきました(笑) でも、小さくても自分で釣り上げたお魚です。釣ったときの嬉しさを思いながら、それはおいしくいただきました。食べながら、「次回はもっと大きな魚を釣ろう」と心に誓いました。

この宿は、新鮮な地魚を使用しているので、その日により多少食事のメニューが変わります。毎朝、トラックにいけすを積んで魚市場に出かけ、ご主人が自分の目でセリ落とした活きのよい地魚を調理しているそうです。「お客様に間違いのないものを食べていただきたい」というこだわりで提供しています。配膳をするスタッフの皆さんもとても優しく、気が利いています。「お・も・て・な・し」の心をたくさんいただきました。

8年の歳月をかけて造られた総檜風呂に癒される

食事の後はお部屋で休憩。ジギーベイとリーティラと遊びながら、のんびりしました。しばらくしてから、宿の自慢のお風呂に入るために風呂棟を訪れました。樹齢千年の檜(ひのき)にこだわり、材料を集めるのに4年、造るのに4年。合計8年の歳月をかけて建造されました。浴槽、洗い場、床、梁、壁など、全てが檜(ひのき)づくしのお風呂です。

浴場入口を入ると、趣のある暖炉が目につきます。この暖炉で薪を炊き、空気を乾燥させ、檜(ひのき)を磨いているそうです。宿泊者に楽しんでもらおうという、地道な努力を感じます。

男湯・女湯の暖簾がまた雰囲気を盛り上げています。暖簾をくぐり、扉を開けるとさらに檜(ひのき)のよい香りが広がっていました。その香りや雰囲気に癒されました。内湯と露天風呂があるのですが、この時間に入っていたのは私だけ。「ひとり占めは贅沢すぎる」と思いながら、何度も行き来しながら満喫です。お風呂もちょうどよい温度で、目を閉じると虫の声と鳥の声だけが聞こえてきて、何ともいえない穏やかな時間を過ごしました。ここは温泉ではありません。ですが、檜(ひのき)の香りは鎮静効果、リラックス効果があるといわれ、ストレス解消・疲労回復に役立ちます。心も体も本当に癒されました。

朝は桟橋で散歩を楽しむ

翌朝は早めに起床して、ホテルの敷地内を散策。広い駐車場や敷地内の道路などを歩きました。天気はくもりでしたので、暑すぎず快適でした。特に桟橋での海を覗き込みながらの散歩は、時折、泳ぐ魚を見ることができて、ジギーベイもリーティラもキョロキョロしながら楽しんでいました。魚は小さなものから大きなものまで、すぐ近くで泳いでいます。また、遠くで漁船が通ると、しばらくしてその波動で桟橋がかすかに揺れます。それがまた、ゆりかごのような心地よい揺れなのです。少々怖がりのリーティラですが、この揺れには心地よさを感じたのか、怖がることはありませんでした。この桟橋から見える景色はどれも美しく、まさに「癒される場所」だと思いました。

散歩中にほかのお客さんや宿の方に声をかけていただきました。みなさん、「その犬は何という犬種ですか?」という質問です。ウイペットは初めての犬種だったらしく、珍しいと話題になっていたそうです。声をかけてもらって、ジギーベイもリーティラもしっぽをブンブン振って、嬉しい気持ちを表現していました。

部屋に戻って、ジギーベイとリーティラは朝食を済ませました。その後、ケージに入ってもらって、私は西館のお食事処に向かいました。朝食は8種類のおかずとご飯とお味噌汁です。朝食もおいしい。料理は色とりどりで、まるでお花を見ているようです。英虞湾の美しい景色が堪能できるテラス席で、美しい朝食をゆっくりといただきました。

チェックアウトまでは癒しの時間

朝食後は10時のチェックアウトまで、ゆっくりと過ごします。お腹が落ち着いてから、お風呂棟に向かいました。景色を見ながらの朝風呂を堪能するためです。朝は男湯と女湯が交換されます。また、明るいので景色も見えます。昨夜も入りましたが、また違った雰囲気を楽しむことができるのです。またまた、幸せな時間を過ごしました。

お風呂に入らない場合でも、別の楽しみ方もできます。お食事処の横にはブランコや卓球台が用意されています。じつは、それらも檜(ひのき)でつくられています。子どもを連れたファミリーも充分に楽しめる空間です。椅子やベンチもあるので、そこで読書などをしてもよいと思います。また、桟橋の手前にも海に浮かぶ「いかだレストラン(季節限定)」があり、そこでも寛ぐことができます。素晴らしいのは、それらの施設からも英虞湾の美しい景色が角度を変えながら堪能できることです。次回、訪れた際には、ぜひ利用したいと思います。

宿の看板犬は柴犬の「マドレーヌ」ちゃん

部屋に戻り、ジギーベイとリーティラはドッグランでひと遊び。その後、荷物をまとめてチェックアウトです。雨が降ってきたので、クルマを外階段の下まで移動させてから荷物を積み込みました。本館のフロントまで鍵を返しに行くと、この宿の看板犬の「マドレーヌちゃん」がお出迎え。保護犬として飼い主を募集していた3年前にご主人と巡り合い、檜扇荘にやってきたそうです。

じつは、昨日から敷地内で何度も出会っていました。でも遠くから私たちを眺めていたり、外階段を上がってきてドッグランの隅から覗いていたりと消極的な触れ合いだったのです。ときどき、フリーにしてもらって敷地内を自由に散策しているようでした。気になっているものの、一緒に遊ぶというほどの距離までは、縮めることはできませんでした。ご主人の話では「ちょっと人見知りですが、慣れると大丈夫」とのことだったので、声をかけると寄ってきて甘えてくれました。犬にはモテる私です(笑)。次回は、みんなで遊べるとよいなあ。

帰りは用事があったので、そこから滋賀県に向かいました。用事を済ませ、帰路につきました。途中、何度か休憩をしながら自宅へ向けてクルマを走らせます。今回もまた、ジギーベイとリーティラは爆睡。またまた、素敵な思い出たくさんの幸せな旅となりました。

まとめ

「檜扇荘」は素晴らしい宿でした。風光明媚な英虞湾の景色と檜を惜しみなく使った宿に心から感動しました。また、久しぶりに釣りをしたことで、すでに他界した父との思い出を蘇らせることができました。癒され、幸せを感じ、心からリフレッシュできた旅となりました。愛犬と泊まれる部屋が1日1組限定であるため、ほかの犬が苦手な子も気兼ねなく過ごせる宿です。訪れる人に自由に過ごしていただきたいと「かしこまったおもてなしはいたしません」というのがコンセプトです。志摩の自然を気まま満喫できる癒しの宿です。ぜひ、みなさんも訪ねてみてください。

[ペットジャーナリスト 阪根美果]