真の愛犬家として、犬が苦手な人の気持ちを理解しよう

世の中は犬好きばかりではない

[2017/11/27 6:00 am | ペットジャーナリスト 阪根美果]

私は幼いころから秋田犬やMIX犬を実家で飼っていました。社会人になってからもボルゾイ4頭を飼育した経験があり、現在は、1歳になったばかりのウイペットを飼っています。

現在飼っているウィペット

ですから、私は愛犬家ですし、「犬が好き」という気持ちがとてもよくわかります。飼い主に従順で、頭もよく、きちんとしつけることで、犬は素晴らしいパートナーになってくれます。はるか昔から使役目的で人間と共存してきたこともあり、馴染み深く、世の中には犬好きがあふれているように感じます。

しかしながら、「犬が嫌い」「犬が苦手」という人も多く存在するのです。犬を飼っていると、散歩に行ったり、ドッグランなどのレジャー施設を訪れたり、旅行に行ったりと一緒にアウトドアを楽しむことが多いので、実際に「犬が嫌い」「犬が苦手」という人と遭遇する機会が多々あります。

そうした場合、うまく対処する必要があります。飼い主が基本的なマナーを守ることはもちろんですが、「犬が嫌い」「犬が苦手」という人もいるということを念頭におき、さまざまな場面で配慮することも大切だと考えます。では「犬が嫌い」「犬が苦手」という人はどんなことを考えているのでしょうか?

「犬が嫌い」「犬が苦手」な人はこんなことを考えている

私の知人は犬が苦手です。犬を飼ったことがなく、どう接していいのかわからず、とくに大型犬などはその大きさから怖いと感じるそうです。犬が好きな人は「なんで?」と思ってしまいますが、その人が育った環境によっても苦手と感じる人がいるのです。では、「犬が嫌い」「犬が苦手」な人は、主にどんなことが理由で犬が苦手と感じているのでしょうか。

・鳴き声がうるさい

犬は基本的に吠えるものです。しかしながら、近所の犬が吠え続ける、知らない人に攻撃的に吠え続けるといったことを経験すると、「うるさい」「怖い」というマイナスイメージが頭に残り、犬が苦手となってしまいます。実際には飼い主に対してそのような行動はとらないのですが、イメージが残り、そうして犬が苦手なまま過ごすことになってしまうのです。

・噛む犬がいるので怖い

恐怖心から犬が嫌いになる人もいます。近所の犬にいつも吠えられる、うなる犬は噛まれそうで怖い、過去に噛まれた経験があるなど、トラウマになってしまうとなかなか恐怖心を取り去るのは難しいことです。子犬のころからきちんとしつけがされていない犬は、人に噛み付いてしまうことがあります。

また、極端に怖がりの犬も、怖さのあまり噛み付いてしまうことがあります。数年前、私の妹は散歩中の大型犬に襲われて、顔に30針を縫う大怪我をしました。もともと妹も私同様に犬が好きでしたが、そのときの恐怖は忘れられないと言います。愛犬家としては、すべての犬がそうではないと言いたいところですが、実際にそのような事故が起こることもあるのです。

吠えたりうなっている姿は恐怖心を与えます

・ニオイやよだれが苦手

犬にはニオイやよだれはつきものです。犬種によっては体臭が強い、よだれが多いこともありますが、飼い主は愛犬のニオイやよだれを不快に感じることはありません。しかしながら、犬が苦手な人にとっては、それらを不快に感じることが多いのです。

・飼い主のマナーが悪い

犬が苦手ということよりも、飼い主のマナーが悪いことで、犬に対して嫌悪感を持ってしまう人もいます。

とくに目立つのは、トイレの後始末をきちんとしないこと。散歩中に犬がトイレをしたのにそのままにしてしまう飼い主もいます。犬が苦手な人がそれを踏んでしまったときには、確実に嫌悪感を持つことでしょう。飼い主でも、ほかの犬の排泄物が放置されているのを見れば嫌悪感を持つので、犬が苦手な人にとっては、その気持ちはより大きくなります。

排泄物はきちんと片付けましょう

ほかにも、「犬を放して散歩する」「伸びるリードで人がきても伸ばしたままで散歩する」「多頭の犬を連れて歩道を独占して散歩する」など、飼い主のマナーに疑問を感じることもあります。もちろん、マナーをしっかり守っている飼い主もたくさんいます。しかしながら、飼い主が「犬が嫌い」「犬が苦手」を促進させてしまっているという現実もあるのです。

・家族が苦手なので自分も同じというイメージ

例えば、両親が犬を苦手な場合、子どもも同じように犬が苦手なままという人がいます。この場合は生理的に受けつけない人が多く、とくに明確な理由もないので、生涯にわたって変わらないようです。食べ物や動物の好き嫌いは親から受ける影響が強く、親の様子を見て好き嫌いを決める傾向があります。根強い「犬が苦手」です。

「犬が嫌い」「犬が苦手」な人を増やさないためには

このように「犬が嫌い」「犬が苦手」な理由はさまざまです。ただし、飼い主が、犬が苦手な人の気持ちを理解して、配慮した行動をとることで解消できることがありそうです。実際にどのような行動をしたらよいのか。毎日の日課である散歩を例に考えてみます。

・集合住宅のエレベーターで

エレベーターに乗るときには、リードは短く持ちます。先に乗っている人がいたら、「一緒に乗っても大丈夫ですか?」と確認をするか、「お先にどうぞ」と譲るようにします。途中で乗って来る人にも「降りたほうがよいですか?」と声をかけるとよいでしょう。

降りるときには外で待っている人がいる場合があるので、愛犬が飛び出さないように、しっかりとリードでコントロールします。万が一、愛犬がエレベーターの中で粗相をしてしまったら、ニオイや汚れが残らないようにきちんと清掃します。狭い空間なのでニオイは問題になります。消臭剤を噴霧するなどしましょう。
※集合住宅の規約によっては、共有エリアではペットはできる限りキャリーに入れて移動すること、もし無理な場合は抱きかかえるなどして、ほかの住人に迷惑がかからないように移動することをお願いしているところもあります。

・歩道で

歩道では、つねに周囲を確認しながら歩きます。リードを適度な長さにして、愛犬をコントロールします。自転車や人が来た場合には、リードを短く持ち、端に寄って通り過ぎるのを待ちます。犬が苦手な人にとっては、止まって犬の動きを制限してくれることは、とても安心なことなのです。

また、愛犬に歩道の道路側の縁を歩かせないようにしましょう。愛犬の頭などがはみ出ていると、クルマに跳ねられる可能性もあります。急に飛び出す可能性もないとはいえません。それは飼い主と犬だけの問題ではなく、道路を走っているドライバーも巻き込むことになります。飼い主は気が付いていないことが多いのですが、ドライバーはそのような犬を見ると、じつはハラハラしながら通り過ぎているのです。もし交通事故にでもなれば、お互いの命に関わる事態にもなりかねません。

散歩時はリードを適切な長さで持つのはもちろん、周囲も気をつけながら歩きましょう

そして、問題視されることが多いのは排泄物の処理です。そのままにすることはマナー違反です。もし、排尿をした場合は水をかけるなどしてニオイを消す、排便はビニール袋などでしっかり取り、必ず持ち帰りましょう。

・公園や空き地で

散歩コースに公園があり、そこを通ったり遊んだりする場合には、必ずペットが利用できるかどうかを確認しましょう。公園はたくさんの人が集まる場所です。子どもも多く、飼い主はよりマナーを守り、行動する必要があります。ペットが利用できる場合は、リードを短く持って、愛犬をコントロールすることはもちろんのこと、排泄物の処理をきちんとする必要があります。絶対に公園のゴミ箱に捨ててはいけません。

また、ベンチやテーブルに愛犬を乗せたり、ブラッシングなどをしたりしてはいけません。もちろん、花壇や池などにも入ってはいけません。ときどき、リードフリーで遊ばせているのを見ますが、公園や空き地では絶対にしてはいけません。

・お店では?

ときどき、スーパーやコンビニエンスストアの外の柵に犬が繋がれているのを見かけます。飼い主が買い物に行っているようで、犬は一人で待たされています。飼い主がいなくて不安で吠え続けていることもあります。

このような状況で愛犬を待たせることは、とても危険であるとともに、迷惑な行為です。もし、リードが外れてしまったら、人を噛んでしまったら、大きな事故に繋がる可能性があります。吠え続けることも迷惑なことです。また、それだけでなく愛犬が誰かに連れていかれる可能性もあるのです。絶対にやめましょう。

犬に吠え癖や噛み付き癖がある場合

まず、散歩のコースを選びましょう。できるだけ人通りが少なく、住宅が密集していない道を選びます。人や犬になるべく会わない道を選んで散歩コースを決めます。とくに、噛み癖がある場合は、人や犬に接近・接触しないように周囲に気を付けながら、十分な距離をとって散歩をしましょう。愛犬の攻撃性によっては、事故回避のためにマズルガード(口輪)を装着することも必要です。装着することで、噛み癖だけでなく、吠え癖も改善することができます。

まとめ ~真の愛犬家になる~

いかがでしたでしょうか? 今回は散歩を例に考えてみましたが、公共の場においては、同じような考え方での配慮をした行動が必要だと思います。犬が好きだからこそ、真の愛犬家として、犬が苦手な人の気持ちを理解した上で配慮した行動をとれば、「犬が嫌い」「犬が苦手」という人の嫌悪感は、少しずつ解消できるかもしれません。このように、お互いの理解を深めることが、人間と犬との幸せな共生に繋がると考えます。飼い主のみなさん、真の愛犬家になりましょう。

真の愛犬家が増えれば、犬との幸せな共生が実現するはずです
[ペットジャーナリスト 阪根美果]