太鼓判ブリーダー日記Vol.44

愛犬との幸せな生活のために

[2020/03/30 6:01 am | Cattery Amangroup/阪根美果]

太鼓判ブリーダーが猫たちとの暮らしをご紹介。ほのぼのした日常やブリーダーならではの話など、いろいろな日常をお届けします。今回は、メインクーンのブリーダーCattery Amangroupの阪根美果さんです。

3月21日に「飼い犬にかまれ乳児死亡、富山」というニュースが配信されました。富山市の50代男性宅で、生後11カ月のお孫さんを抱いて犬の餌皿を取りに柵内に入ったところ、2頭のグレートデーンに噛まれ、頭部骨折による出血性ショックで死亡したということでした。

とても悲しい出来事で、お孫さんのご冥福を祈らずにはいられません。飼い主はまさか飼い犬が孫を襲うとは夢にも思っていなかったのだと思いますが、絶対ということはありません。犬種により、また大型になればなるほど被害が大きくなるのは事実なので、飼い主は十分に気をつけて飼育管理をする必要があると思うのです。「わが家の子は噛まない」という思い込みは、なくしたほうがよいというのが私の考えです。

私は以前、3頭のボルゾイを飼育していましたが、1頭目を飼う前に「ボルゾイは神経質な子がいるので、親犬の性格を見てから飼ったほうがよいですよ。神経質な子はふとした瞬間に噛んでしまうことがあるので」というアドバイスをブリーダーさんから受けました。その後、そのアドバイスに従って男の子と女の子を迎えて、1回だけ繁殖をしたのですが、1頭残した男の子がその神経質な性格の持ち主でした。普段はとても穏やかなのですが、自分の気に入らないことには強気の行動をとることがありました。

ある日、近所の犬好きのおばさんがその子をぎゅっと抱きしめました。いつもと同じように抱きしめたのですが、その日は時間が長く、それが嫌だったようで、いきなりおばさんの腕に噛みつきました。私の声ですぐに離しましたが、おばさんの腕には歯型がしっかりつき流血することになりました。犬の本能が「これは危険」と判断してそういう行動をとったのだと思います。私はその子の性格をわかっていたのに「わが家の子は噛まない」という過信があったのだと思います。おばさんにもその子にも、本当に申し訳なかったと反省しました。

また、ある日は私の取り合いでパパ犬とその子が大喧嘩になりました。仲裁に入った私も怪我をしましたが、パパ犬は25針を縫う怪我をしました。これもある意味、犬の本能が働いたと思います。彼らの気持ちを考えて、私がそれなりの行動をすれば防げたと反省しました。

そして、私の家族は大型犬に襲われて、顔に30針を縫う大怪我をしました。近所の住人の飼い犬です。飼い主とともに大人しく座っているその犬を撫でて、立ち去ろうとした瞬間に襲われたのです。すぐには噛むのをやめなかったと聞きました。もともとは狩猟用に作出された犬種だったので、急に動いたことで驚いたのか、または、もともと持っている狩猟の本能が働いたのかはわかりませんが、そこには何か乗り越えることのできない「種の壁」があると感じさせられました。なぜなら、その犬は普段はとても穏やかな犬だったからです。

犬は人間とともに生活するなかで、使役目的として改良繁殖されてきました。しかし、どんな犬にも継承されている犬の本能と習性があります。警戒本能、防衛本能、堅守本能、闘争本能などもその一部です。そのときの状況によっては、どんな犬でもその本能を表に顕すことがあることを忘れてはならないと思うのです。

でも、それらは飼い主の行動や飼育管理でいかようにも防ぐことができます。「わが家の子は絶対に噛まない」「わが家の子は大丈夫」と思わずに、万が一のことを十分に考え、行動し、飼育管理をすることが大切だと思います。飼い主はもちろん、何かあれば辛い思いをするのは被害者だけでなく、愛犬も同じです。被害の程度によっては、二度と一緒に暮らせなくなる可能性もあります。「被害者を出さないこと=愛犬を守る」ことになると思うのです。

これは愛犬を信じるなということではありません。犬の本能を理解し、被害を出さないように万全を期すことが、飼い主としての責任であり、愛犬に対する飼い主の深い愛情だと私は思います。「種の壁」を意識しながら、私も愛犬2頭と幸せな毎日を過ごしていけるように努力したいと思っています。

[Cattery Amangroup/阪根美果]